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<旅日記⑩ Sep.1995>高原の避暑地Dalat(2)(ベトナム・国内旅編)
「私にお金を預けろ?」
ベトナム中央部の高原Dalatに同行してくれた女性ツアーガイド、Mayさんが、ヘンなことを言い始めた。
「ものを買うときは私が通訳するので、あらかじめ、お金を預けてほしい」
信用して、うかつにも、何ドルかの紙幣を渡してしまった。
田舎のことで、ベトナム語しか通じないからというわけだが、水など、 わたしが希望の品を手にすると、彼女がベトナム語で「いくらか」と聞いて、わたしに英語に通訳して値段を教えてもらう。しかし、どうも値段が高すぎるような気がした。
だんだん不信が沸き、あるとき、彼女がわたしに値段を教えたすぐあとに、店員さんに「いくらだ」と英語で確認してみたところ、言葉が通じ、英語で 答えが返ってきた。
疑った通りだった。実際の値段より高い値段をわたしに伝え、差額をピンハネしていたのだった。店員も、Mayさんがわたしに伝えた金額を聞いていたので怒りの表情だった。
いままでずっと、この調子でピンハネしていたのかと問いつめた。
すると、「旅行代理店から自分にはほとんどお金が入らないし・・・」と、事実関係を認めた。大きな額ではなかったので返金は求めはしなかったが、後味は悪く、以後は、言葉が通じないのはお構いなしに店の人と直接やりとりをしたのは言うまでもない。
目的地のDalatに着くと、Mayさんの実家に立ち寄り、原付バイクの「HONDA」を受け取って、それに乗って、わたしをホテルに送り届ける段取りだ。
翌日はこのHONDAで観光地を巡るが、それでよいかと聞いてきた。
次は、「バイク代に30ドル?」
ただし、バイク代ほか30ドルを預けてくれないかと、言ってきた。やれやれ、だ。1泊2日で17ドルの格安ツアーだから参加したのに、30ドルも払ったら なんのことかわからなくなる。30ドルはわたしにとっても大金だ。これには、はっきり、「NO」と断った。
仕事で立ち寄った実家にお金を渡したいのはわかるが、これは過大な 見積もりだ。応じられるはずはない。バイクのレンタルということで数ドルだけ支払うことにした。
もう口も聞きたくなかったが、そのバイクでホテルまで送ってもらい、翌朝、迎えにきてもらうことになっている。HONDAの後部座席に乗せてもらい、朝霧に包まれた避暑地をぐるりと一回りすればバスの時間だ。さして面白くもない景色だった。
わずか17ドルのツアーだったので、たいした給料が支払われているわけではないことは察しがついている。2日間も同行してくれているMayさんには、初めからきちんとチップは差し上げるつもりでいた。ところが金銭のことでごたごたし、そんな気分にはなれない。
それでも、無事、ホーチミンに帰ったとき、お礼に夕食でもと思い、「どこか行きたいレストランはないか」と尋ねたところ、案内してくれたのは、お金持ちの若い人には人気のありそうなイタリアンの店だった。
彼女は、メニューを見ると、値段も確認しないまま、とんでもなく値の張る肉料理を注文。それでいて、ほとんど食べずに残した。わたしは注文したスパゲティーを平らげたが、お世辞にもうまいとは言えなかった。ベトナムではベトナムの料理を食べたほうがおいしいと思ったが、20ドル紙幣で二人分の代金13ドルを支払った。
Mayさんはこのとき初めて自分が注文しながらほとんど口にしなかった料理がいかに高かったに驚いた様子だった。20ドルから支払ったお釣りはMayさんへのチップとして渡すことにした。
その7ドルを手に、「最初からこんなにチップがもらえるとわかっていればあんなことはしなかった」と、感謝とお詫びの言葉を言ってくれた。
(1995年9月20日~21日)