<旅日記 Sep.1995>ホーチミン番外編①(ベトナム)
1995年9月に訪れた旧サイゴン(ホーチミン・シティ)。ベトナムは開放経済(ドイモイ政策)の時代に入ったとはいえ、到着した空港の入管のピリッとした空気はまさに現役の社会主義のそれだった。指示されるままに持ち物は、フィルムの本数、雑誌名、新聞紙名に至るまで、一つ残らずドキュメントに記載。しんと静まり返ったイミグレーションのブースでは、顔写真の撮り直しを命じられる者、記載漏れの指摘を受ける者・・・そのすべてが無言で指示される。ぴりぴり感は尋常でなかった。
税関では農家の物置き小屋の荷台の上に荷物を置き、残らずオープン。わたしのカメラバッグから出てきた最新のキャノンは驚かせてしまった。
その後、ベトナムへは5年ごと2回訪れたが、一気に変わっていった。ものものしさが一転ソフトに、空港設備もとても新しくきれいなものに生まれ変わっていた。税関職員がニッコリと日本語で話したのにはたまげた。
もうこの15年は通っていないが、いまはどのようであろう。あのベトナム名物の、旅行代理店掛け持ちの安いツアーを斡旋してくれるカフェは、どんな感じなのだろう。道路にバイク、自転車、シクロがあふれかえり、それをかき分けるようにもう速度で走ったクルマは増えただろうな。いまのことはまったくわからない。
けれど、この国はすごく好きだった。
街は、1995年も、ひたすら明るく開放的でエネルギーにあふれかえっていた。
カフェも、うどんのようなフォー、カフェオーレにフランスパン。あの素朴な人々。