銀鏡反応

概要

我々が普段使っている鏡を作る際に使われている原理と同じ方法で、鏡を作っていく。金属鏡の起源は古代エジプト、紀元前2800年まで遡り、銀鏡班はこれを継承していると言えよう。

実験試薬

硝酸銀 (AgNO3) 0.2mol/L、アンモニア水 (NH3) 適量、グルコース (R-CHO) 0.1mol/L、

水酸化ナトリウム (NaOH) 0.1mol/L 硝酸水溶液(HNO3)適量

使用器具

50mLビーカー×4、300mLビーカー×2

2mLピペット×4、5mLピペット×1

薬さじ、三脚、金網、ガスバーナー、時計皿、ピペット立て

実験準備

1. 時計皿をクレンザーで洗う。

2. 300mLビーカーの1つに水を入れバーナーで加熱し、70℃ほどで保つ。この際、沸騰石を入れておくとより安全。

3. ビーカーの上に時計皿のへこんでいる部分が上になるように置く。


実験手順

1. 硝酸銀水溶液5mLを、50mLビーカーにとる。

2. 硝酸銀水溶液にアンモニア水を加えると褐色の沈殿ができる。その後、沈殿がなくなるまで適度にビーカーを振りながら、アンモニア水を加える。

3. 水酸化ナトリウムとグルコースをそれぞれ2mLずつ、手順2で作った溶液に入れる。

4. 作った溶液を素早く時計皿の上に注ぐ。

5. 数分間待って反応が適度に進行した後、残った溶液を廃液として捨て、時計皿の外側を見る。

6. 時計皿にできた銀を硝酸水溶液を用いて溶かす。


原理説明

 まず、手順2で褐色の沈殿ができたとき、塩基性を示すアンモニア(NH3)が水(H2O)と酸塩基平衡反応を起こして生じた水酸化物イオン(OH-)と銀イオン(Ag+)が結びつき、酸化銀 (Ag2O)が生成されている。この酸化銀は水に溶けないため、褐色の沈殿となっている。

             NH3+H2O⇄NH4++OH-

           2Ag++2OH-→Ag2O(褐色の沈殿) +H2O

 この酸化銀を含む水にアンモニア水をさらに加えることで酸化銀とアンモニアが反応して水溶性のジアンミン銀(Ⅰ)イオン([Ag(NH3)2]+) ができる。

Ag2O+4NH3+H2O→2[Ag(NH3)2]++2OH-

 銀が単体でも存在するためには銀イオンの電荷が0でなければいけないため、ここに電子を加えて電荷を0にする必要がある。

 そこで、手順3でグルコースに含まれるアルデヒド基(R-CHO)と水酸化ナトリウム(NaOH)を反応させて電子 (e-)を発生させる。この電子がジアンミン銀(Ⅰ)イオン内の銀イオンと反応して、銀イオンの電荷が0になることによって銀が単体でも析出するようになる。つまり鏡ができる。

R-CHO+2OH-→R-COOH+H2O+2e-…①

[Ag(NH3)2]++e-→Ag(鏡) +2NH3…②

上記の2式を組み合わせて式が成り立つようにすると(①+②×2)、

2[Ag(NH3)2]++R-CHO+2OH-→2Ag+R-COOH+H2O+4NH3

となる。また、①の反応で出てきた水酸化物イオンは水酸化ナトリウムから供給されている。

この反応の実用例としては、ガラス製魔法瓶や鏡の銀メッキなどが挙げられる。

参考文献

卜部吉庸 『化学の新研究 理系大学受験』 三省堂

海城学園化学部『白クマの化学』2019年


コラム ~硝酸銀リサイクル~

 銀鏡反応は、とても高価な硝酸銀を使用して、より安価な銀を析出する非経済的な実験である。特に硝酸銀の値段は桁違いで、それだけで部の予算が左右されてしまう。(気になった人は調べてみるのもよい)。そこで我々は(我々の先輩は)、硝酸銀リサイクルなるものを思いついた。実験の最終段階において析出する銀を処理する際に、硝酸も用いて溶かすという作業を行う。そこで発生する硝酸銀をまた実験の最初の段階で使おうというアイデアだ。現状課題として、最後に発生する硝酸銀が少なすぎるため反応しないという点があり、これからも班として実験していきたいと考えている。

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