色のついた溶液の層をつくる
概要
溶液の密度の差と極性を利用してカラフルな混ざらない液体の層を作るというものです。この実験の目的は眺めて愉しむことにあります。それだけです。
実験試薬
溶液 1・ジエチルエーテル C4H10O
溶液 2・蒸留水 H2O
溶液 3・1,2-ジクロロエタン C2H4Cl2
溶液 4・65%砂糖水 C12H22O11aq
溶液 5・クロロホルム CHCl3
程よい色の食紅 2 色、程よい色の油性マーカー3 色
使用器具
蓋つき試験管、50 ミリリットルビーカー、ガラス棒、薬さじ
食紅、油性マーカー
実験準備
溶液 1,3,5 は油性マーカーで、溶液 2,4 は食紅で色づけしておく。
実験手順
いたって簡単、試験管に溶液を溶液 5→4→3→2→1 の順番でゆっくりと注いでいくだけ。
原理説明
この実験は、①溶液同士の密度の差②溶液同士の混ざりにくさ を利用したものです。
①について
密度とは単位量当たりの重さである。これが大きいほど同量当たりの重さが重く、小さいほど軽くなる。
ここで、溶液 1~5 の比重を見てみると
溶液1(ジエチルエーテル) 0.708g/cm3
溶液2(蒸留水) 0.99997g/cm3
溶液3(1,2-ジクロロエタン)1.253g/cm3
溶液4(65%砂糖水 20℃)1.316g/cm3
溶液5(クロロホルム) 1.48g/cm3
密度が大きいものほど下に沈むため、キレイに層になる。
・②について
ここが最も気を使ったところ。溶液の混ざりにくさを決めるものです。
まず溶液には極性、無極性というものがあります。これは非金属同士の共有結合でのいわば原子のひきつけやすさ、結合の強さにばらつきがあることで生まれ、ひきつけあっている原子同士のひきつけやすさの偏りを極性といい、分子全体で偏っているものは極性がある、偏っていないものは無
極性であるといいます。極性のもの同士はお互いに結び付きよく混ざるのですが、極性と無極性のものは極性分子同士が結びついてしまい混ざりにくい性質があります。以上のことを頭に入れておいて、今回の実験のものを一層づつ見ていきましょう。
[注]
・ジエチルエーテルと水
エーテルは無極性溶媒なのに対し、水は極性溶媒、よって混ざりにくい。
・水とジクロロエタン
水は極性溶媒なのに対し、ジクロロエタンは無極性溶媒、よって混ざりにくい。
・ジクロロエタンと砂糖水
ジクロロエタンは無極性溶媒なのに対し、砂糖水は水に砂糖が溶けただけなので極性がある、よって混ざりにくい。
・砂糖水とクロロホルム砂糖水は極性があるのに対し、クロロホルムは無極性溶媒、よって混ざりにくい。このように極性溶媒、無極性溶媒を交互に入れることで、極めて混ざりにくいものを作ることができます。
補足説明
あまり聞きなれない薬品が多かったと思いますので説明をしたいと思います。
・ジエチルエーテル 甘い匂いのする無色透明の液体、特殊引火物、昔は手術の麻酔薬として使われていたが、今はもう 使われていない。
・蒸留水 純粋な水
・1,2-ジクロロエタン クロロホルムのような臭気がする無色透明の液体、よく使われる有機溶媒
・砂糖水 砂糖水
・クロロホルム 甘い芳香を持つ無色透明の液体、麻酔薬として使われていたが非常に毒性が強く使われなくなった
参考文献
wikipedia 『 ジ エ チ ル エ ー テ ル 』 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%A8%E3%83%81%E3%83%AB%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%8 3%86%E3%83%AB
(2022 年 9 月 15 日閲覧)
wikipedia 『 1,2- ジ ク ロ ロ エ タ ン 』
https://ja.wikipedia.org/wiki/1,2-%E3%82%B8%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%AD%E3%82%A8%E3%82%BF%E3%83%B3(2022 年 9 月 15 日閲覧)
wikipedia 『 ク ロ ロ ホ ル ム 』 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%AD%E3%83%9B%E3%83%AB%E3%83%A0 ( 2022 年 9 月 15 日閲覧)
HEISHIN 『 砂 糖 溶 液 の 比 重 表 』 https://www.engbook.com/pdfs/b9907ff8972f604601ce57f3989643eb.pdf(2022 年 9 月 15 日閲覧)
NHK 『分子の極性』 https://www.nhk.or.jp/kokokoza/library/2020/tv/kagakukiso/archive/kagakukiso_16.pdf(2022 年 9 月 15 日閲覧) 早稲田大学本庄高等学院実験開発班『魅了する 科学実験2』(すばる舎 2018)