新宿ゴールデン街に潜む子悪党【第29話】
〜告白〜
一連の犯行を終えた3人はジッポに戻った。
「大成功やったやんか。あいつの居場所も本名も分かったし」
「そうですね。収穫ありました」
「でもヒビちゃん、あいつにいじめられてたっていう過去は嘘やろ?」
「あはは。バレてましたか」
香は何も言わない。
「香なんか具合でもわるいんか?」
「いや…そんなことないけど」
ラブホテルであったことを言おうかどうか迷っていた。
妙なことをしたら家族も自分も殺されるかもしれない。
体が小刻みに震える。
「コンロで何かあったのか?」
響が聞く。
香は葛藤したあげく全てを打ち明けた。この仲間たちには言うべきだと思った。響ならどうにかしてくれるんじゃないかとうっすら期待をしていた。
「…そんなことされたんか。あいつほんまもんのヤクザやな。完全なる悪や」
「懲らしめましょう」
「懲らしめるゆーても今までと違ってこれはかなり危険やな。ほんでヒビちゃんなんであいつ恨んでんねや?ほんまの理由」
沈黙。
「母が殺されたんですよ。5年前あいつに。で、偶然にも吉田さんに情報をもらった。あいつはこの街にいると。それで俺はゴールデン街に店を持ってあいつの情報と協力者を待っていた」
「そーやったんか。尋常やない話やな。ほんで選ばれたんが探偵である俺とマスコミで人の心理読み取る香っちゅーわけか」
「そうですね。一人ではどうにもならない」
香がようやく口を開いた。
「あいつ、殺そうよ」
「…殺すに値するな」
響が頷く。
「そんな最悪なやつがこの街でのうのうと酒飲んでる思うと吐き気すらするわ」
「まあ俺も49回も罪を重ねてここで酒飲んでるわけですから人のこと言えないですけどね」
「ヒビちゃんと荻野は根本的に違う。とにかく香を守るためにもやらなあかんかもしれへんな」
「でも、どうやって?」
響はしばらく考える。
「少し手荒いことをするしかないかな。スマートに殺すことなんてできない。それに5年も警察から逃げてるかなり冷静な男だ。そう簡単にはいかないだろうな」
「そうだよね。拳銃持ってるし」
「この人の多い新宿で実際に発砲する可能性は低いけど、もしものことも考えておかないといけないな」
そこで香はにやりと笑った。
「実はいいのがあるんだ。これ使えない?」
ボイスレコーダーだった。
「ラブホで目が覚めた時からあいつが出ていくまで、全部録音してたんだよね」
「すばらしい!さすがマスコミだ。あいつを脅す材料になる」