始まる〜僕の同居人#1〜
6月上旬。
奴は日本に帰国した。
"奴"とは、
付き合いの長い地元の友人である。
奴が大学卒業後、
仕事のためバングラデシュに移住し、
日本には年1で帰国する。
その度、僕らは会って近況を報告しあう。
ただ、
今回は違う。
奴が住むバングラ(デシュ)では、
コロナの蔓延が凄まじいく、
一日で感染者が数千人という増え方で急増してるらしいのだ。
その影響により、
奴に会社から日本への帰国命令が出て、
暫くバングラには戻れないという。
そう。
無期限の日本滞在が決まったということだ。
と同時に、
僕は奴との同居生活が始まったのだ。
最初に言っておく。
奴と共同生活するということは、
グレートデーンとセントバーナードを2匹同時に飼うようなもんだ。
奴は、
ゴミは捨てない。
物は散らかしたまま。
床にタバコの灰を落とす。
デブだ。
不潔さと見苦しさと汚らしさを兼ね備えた、
篠原涼子もびっくりモンスターなのだ。
とは言えだ。
奴だってもう立派な社会人だ。
なんなら毎回僕の家に遊びに来る時は、
必ずバングラからお土産を持参する気が利く男だ。
そんなもんだから僕の家の玄関は
変な置物で埋め尽くされている。
けど良く見れば可愛い。
愛着も湧いてきた。
今回もお土産をバングラから持参してやってきた。
そうゆうことはちゃんとやる男だ。
待ち合わせ場所に奴がやってくる。
袋から取り出すは、
近所のパン屋で売ってる食パン1斤だ。
本当に気が利くよ。
「一人暮らしに1斤は多くない?」
「てか、俺パン食わんのだが」
「随分と近い所で買ったのね?」
「あ、さっき人から貰ったやつ?」
これが再会して初めての会話だ。
そんな奴と終わりの見えない共同生活が始まった。
奴との何気ない日常と、
止め処ない奴への愚痴を、
暫くここで綴っていこうと思う。
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