無許可の路上ライブがなくならない原因と、解決する方法
こんにちは。海保けんたろー(株式会社ワールドスケープ代表/ドラマー)です。
インディーズ音楽業界界隈で度々議論されるテーマというのはいくつかありますが、そのうちの一つが路上ライブ問題です。
駆け出しのアーティストは、最初のファンをつけていくために新しい人に聞いてもらう必要があります。
しかし、ネット上でもライブハウスでもなかなか興味を持ってもらうのは難しい。
そこで出る
「人通りのある路上で演奏することで自分の音楽を聞いてもらおう」
「その中で気に入ってくれる人達と出会っていこう」
という発想はとても合理的です。
しかし残念ながら、その方法には問題があります。
無許可で路上でライブすることは、道路交通法で禁止されているからです。
交通の邪魔だと思われたり、騒音だと感じられたりして苦情が入ると警察官がストップしにきます。
抵抗しなければ、基本的にはその場で注意を受けて撤収して終わりになるので、また翌週に同じ場所でライブをする。
その繰り返しになっている様子がちょくちょく見受けられます。
路上ライブをやりたいアーティスト。
それを歓迎したい音楽ファン。
歓迎せず苦情を出す人。
それを受けて注意する警察。
そんな4者が平行線になっているのが路上ライブ問題です。
システムの歪みの原因
もちろん違法なことをしてはいけません。
そこでまっとうなアーティストは「合法的にやるにはどうしたらいいか」という発想になります。
警察に届け出て、事前に道路使用許可を貰っていれば、合法的に路上ライブができます。
しかしぼくの知る限り、どんなにちゃんと申請をしたとしても路上ライブに許可が下りることはありません。
だからアーティストは自分の夢を叶える為、仕方なく無許可で路上ライブをし続けるのです。
この問題、あなたは誰が最も悪いと思いますか?
A. 法律守らないアーティストが悪い
B. 神経質に苦情を入れすぎる人が悪い
C. 路上ライブを逮捕しない警察が悪い
D. 道路使用許可を出さない警察が悪い
この問題に正解はありませんが、ぼくの意見はDです。
警視庁のサイトにも書いてある通り、警察(署長)は道路交通法第77条第2項の規定に基づき下記のいずれかに該当する場合は許可をしなければなりません。
・現に交通の妨害となるおそれがないと認められるとき
・許可に付された条件に従って行われることにより交通の妨害となるおそれがなくなると認められるとき
・現に交通の妨害となるおそれはあるが公益上又は社会の慣習上やむを得ないものであると認められるとき
例えば、人通りはそこまで多くないが幅の広い歩道で、最小限の音量で無名アーティストが路上ライブをする、というのは「交通の妨害となるおそれ」がないと言えるでしょう。
そういった申請に対して警察は許可しなければならない、と規定されているのに許可していないのです。
本来は正しいステップを踏むことによって、路上ライブをすることができるはずなのです。
しかし警察は慣例的に、それを一律で却下しています。
実際はひとつひとつの申請に対して道路がどれぐらい占拠されるのか、どれぐらい交通の邪魔になる危険性があるのか、対策はどの程度立てられているのかというものを総合的に判断し、許可するものと却下するものを決めなくてはいけないのですが、警察はこれをサボっています。
そのためアーティストに元々担保されていたはずの路上ライブする権利が失われていて、結果システムが歪んでしまっているのです。
警察が法律通りにちゃんと運用していれば、
「ちゃんと手続きをした上で迷惑にならない場所であれば路上ライブをやることができるようになるし、邪魔な場所で無許可でやる悪質なアーティストは逮捕すればいい」
というあるべき形に着地します。
しかし現状はそうなっていない。これは残念すぎるし、なんとか変わってほしい。
でも「警察よ、許可しろ!」というデモ行進をしたところで、なんとなくそう簡単には変わらないような気がします。
そこでどうしたらいいかということを、次に考えます。
この状況を変える手
許可がおりないならどうしたらいいか。
ぼくは、警察の許可が下りなくても「路上ライブ的なことができる場所を作ってしまう」というのが早いのではないかと考えています。
既にショッピングモールなどでは中央広場的な場所でステージが設置されたりしていて、定期的に様々な規模のアーティストがライブを行ったりしています。
ある程度の集客力があるアーティストであればショッピングモールにとってもありがたいですし、アーティストとしてもその場で通りすがりの方々にライブを見てもらい、CDなどを売ることができるのは大きなメリットです。
もしショッピングモールを運営されている方の中で「いいアーティストがいれば、ライブして欲しいのにな〜」と思っている方がいたら是非ご連絡ください。
色々とご紹介できるかと思います。
しかし、広場でライブができるショッピングモールとなるとある程度の規模が必要です。数多くはありません。
また、ショッピングモールが喜ぶほどの集客力があるアーティストも多くはありません。
もう少し小規模な店舗でも、もう少し無名なアーティストでも、やれる方法はないのでしょうか。
ぼくが考えているのは百貨店やアパレルブランド系などによくある「ショーウィンドウ」でライブができないかなということです。
↑こういうのとか
↑こういうやつです
この中にアーティストが入って外(道路方向)に向かってライブを行います。
すると、路上を通りがかった人達がそれを目にすることになり、ほぼ路上ライブに近い状態を作ることができます。
小さなスピーカーを設置すれば、ガラスの向こう側での音を路上に流すことは可能ですし、そうすると道路使用許可も必要ありません。
いつも何気なく通り過ぎていたショーウィンドウの中で人が歌っている、というのはお店に注目を集めるきっかけになるでしょう。
気になって店内に入ってくる人も少なくないのではないでしょうか。
そしてもちろんアーティストは新しいファンを獲得するチャンスが得られます。
可能なら、店内でCDなどを売ることができればなお良しです。
ドラムがいるようなバンドじゃない限りは音量はある程度コントロールできますし、これはお店とアーティストの幸せな関係性なのではないでしょうか?
店舗のオーナーさん、店長さん
もし「うちの店ショーウィンドウあるな〜」という方がいたら是非Twitterやメールなどでご連絡ください。
お店の雰囲気やブランド性に合う、レベルの高いアーティストをご紹介することができると思います。
アーティストへのギャラもきっと不要です。
連絡お待ちしておりますね!
(というか、もはやそういうお店を作りたいぐらいです)
アーティストにとって、そして音楽ファンにとってより生きやすい社会でありますように。
海保けんたろーより。
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当記事は「海保けんたろーの思考集積場」の過去記事を加筆修正したものです。