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【投資】「債券」のオーバーパー購入には注意が必要! ~福岡県福津市の事例より~

2月14日に執筆したnote記事「【投資】「債券」購入には注意が必要! ~福岡県福津市の事例より~」において、福岡県福津市において問題となっている地方自治体の債券運用の失敗のケースを取り上げました。

私が以前から愛読しているブログ「福津市のごみ収集はおかしくない?」においても、この件が取り上げられています。

ブログ中に、『国債は令和元年~令和2年にかけて集中して額面100円以上の高額で購入している。』と書かれています。
情報源の一つとして書かれている市議会における山本祐平議員の一般質問では、この件に関する答弁は見当たりませんでしたので、おそらくもう一つの情報源として書かれている「福津市会計課への聞き取り調査」に拠るものと推測されます。

市議会における答弁を聞いていると、『償還期限まで保有していれば、元本は受け取ることができる』や『償還期限まで保有していれば、投資金額は返ってくる』等の発言が散見されるのですが、額面100円以上の高額で購入しているとしたら、これらの答弁は、言葉の正確性を欠いていると言っても良いでしょう。

正確には、『償還期限まで保有していれば、額面金額は受け取ることができる』と言うべきでしょう。
債券の額面金額とは、債券の券面上に表示されている金額のことをいい、通常は100円になります。債券の単価は、原則として、額面100円に対する価格です。償還期限になると額面金額が払い戻されます。

新たに債券が発行される際の価格を発行価格といいます。発行価格は必ずしも額面金額と同一ではありません。その差額が利息に相当するものとして調整されるからです。

額面のことをパーといいます。債券の発行価格が、100円の場合をパー発行、100円より高い場合をオーバーパー発行、100円より安い場合をアンダーパー発行といいます。

償還まで保有すると、オーバーパーで発行された債券は、額面金額で償還されることから、その差額が損失となります。逆に、反対に、アンダーパーで発行された債券は、額面金額で償還されることから、その差額が利益となります。これを償還差益といいます。
図にすると、下記のようになります。

債券の償還

福津市の債権がオーバーパーで発行されていたとすると、30年や40年の満期時まで保有して償還しても額面金額でしか償還されないので償還差損(キャピタルロス)が発生することになります。元本投資金額がまるまる返ってくるわけではありません。

福津市資金管理運用方針」第3条第5項では「債券の取得単価」について下記のように定められています。

(9) 債券の取得単価
債券の取得単価は、原則として額面価格(パー)又は額面価格未満(アンダーパー)とする。
ただし、額面価格又は額面価格未満の債券の取得が困難な場合は、運用会議の審議の上、額面価格超過(オーバーパー)の債券であっても購入することができる。

福津市資金管理運用方針

原則として額面価格超過(オーバーパー)を購入することは出来ず、購入する場合は「運用会議の審議」が必要とされています。
が、2025年1月29日の朝日新聞記事では『この債券を購入する際、副市長らでつくる「資金管理運用会議」を開催しなかったという。』と報道されています。

上記の「福津市資金管理運用方針」は令和4年9月1日に改訂されていますので、債券購入時に当該条項があったかどうかは定かではありませんが、もし当時から条項が存在していて、運用会議での審議を行わずにオーバーパー債権を購入していたとすると、重大なコンプライアンス違反ということになります。



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