見出し画像

【映画】人間にとって「見ること」の難しさ。。。

映画「関心領域」(THE ZONE OF INTERREST)を”鑑賞”してきました。

ステレオタイプに”鑑賞”と書きましたが、『お前は、本当に”鑑賞”することが出来たのか!』という厳しい問いを突き付けられたような映画でした。

「鑑賞」という単語をデジタル大辞泉で調べてみると、
芸術作品などを見たり聞いたり読んだりして、それが表現しようとするところをつかみとり、そのよさを味わうこと。
とあります。

この映画の冒頭は、真っ暗闇の映像がかなり長い時間続きます。体感的には数分間も続いたように感じました。真っ暗闇の中で、工事らしき音のような、罵声のような、号令のような、銃声のような、悲鳴のような音が混じりあった、ひたすら気持ち悪くなる音が鳴り響いていく。。。。。これだけで、もう息が詰まり、逃げ出したくなってしまいました。

十年近く前に体験した、ジェームズ・タレル の「Backside of the Moon」を思い出しました。「Backside of the Moon」は、直島で安藤忠雄が設計した「南寺」内で体験できるインスタレーションです。

このインスタレーション作品は、「ホンモノの暗闇を体験する」ものです。建物に入ると完全な暗闇となっており、まったく何も見ることが出来ません。10分くらいすると、「暗順応」により、四角い窓らしきものがボンヤリと見えてくるのですが、そこに手を突っ込んでも何も無い「空間」です。
われわれ人間は、見ることが出来ていると思い込んでいるが、実は見えていないものが数多くあることを象徴的に体験できるインスタレーション作品となっています。

映画「関心領域」は、この暗闇を通して、「あなたたちは、『アウシュビッツ』を知っているつもりになっているようだけれども、本当に知っているのか? 見えているのか?」という厳しい問いを冒頭からいきなり突き付けてきます。

映画「関心領域」は、この後、下の写真のように、アウシュビッツ収容所とヘス家の邸宅を隔てる横一直線の塀が描かれる構図が多用され、われわれ観客は、アウシュビッツ収容所の映像を見ることは出来ません。

人類にとって見たくない真実を、正しく「見ること」「観ること」がいかに難しいかということを感じ続けた映画でした。

よろしければサポートお願いします!