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#13 いい匂いのするデイサービス

要支援2から要介護1になった母に対し、ケアマネジャーのオオサワさんの最初の提案は、週二回のデイサービスと週一回の訪問看護であった。デイサービスというと、お遊戯的なレクリエーションを想像してしまう人もいるかもしれない。しかし、そうしたデイサービスはいまや少数派かもしれない。少なくとも都内のデイサービスは様々な特色をもったものが存在している。スポーツクラブ系、趣味・娯楽系、仕事・ボランティア系など。サービスを提供する運営企業の強みによって、個性が色濃くでてくるのがデイサービスなのだ。見学をし、自分たちに合ったサービスを選ぶ過程は、大学のサークルの新勧によく似ている。
 
母が好んだサークル、いや、デイサービスはと言うと、スポーツクラブ系であった。オオサワさんがデイサービスの候補を見繕い、見学の予約を調整してくれた。私たちは予定された日に玄関の外でお迎えの車を待つだけだ。
最初に見学したのは比較的大規模な総合的なデイサービスだった。カラオケをする人、新聞を読む人、リハビリをする人、おやつをいただく人などたくさんのご高齢の方がいらっしゃったのだが、表情が乏しい感じが少し気になった。なるほど、なるほど、と一通り見学し、次のデイサービスの見学へ向かう。大事なのは母がどう感じるかだから答え合わせは後にしよう。
 
二つ目は、整形外科に併設された小規模のデイサービス。西陽があたる明るい室内はコンパクトなフィットネスクラブのような雰囲気だ。母はこちらのデイサービスが気に入ったようだった。私も圧倒的にこちらのデイサービスが良いと感じた。リハビリを受ける人もスタッフさんも自然体で表情もよかったからだ。見学すれば全体的な雰囲気がよくわかる。だから判断もつきやすい。
 
デイサービスの良いところはなんといっても送迎だ。
家の前まで送迎車が迎えに来てくれて、帰りも送り届けてくれるのだ。そのころの母は認知症があっても20分前に電話をいれてもらえれば準備をして待つことができた。その整形外科が運営するデイサービスには二年近くお世話になっただろうか、残念なことに途中で介護事業から撤退することが決まり他をあたることになった。デイサービス難民という言葉はまださほど認知されていないが、運営が厳しく撤退する事業者は増えているようだ。
 
一方で、デイサービスは常にアップデートしている。
二年が経過すると、また新しいタイプのデイサービスが登場していた。敏腕ケアマネの新しい提案の一つは、古民家のデイサービス。懐かしさ溢れる和みの空間で、自由に好きな活動に勤しめるというもの。二つ目は、仕事的な作業を行うデイサービスだ。明るく清潔なフロアは企業の会議室のような感じだ。お仕事やボランティアのような感覚なら通いたい人はいるだろう。ここも悪くないなあと思った。そして三つ目は、化粧品や健康食品を手掛ける大手企業、DHCさんによるデイサービスだった。母の住む自治体のみで数店舗テスト展開しはじめたばかりというので、どんなものか非常に興味が惹かれた。
 
母と私が見学を希望したのは、古民家以外の二つだった。「古民家」と聞くと私はよいイメージが先行するのだが、母は地方出身で、都会に強い憧れをもち田舎を飛び出してきた人。そんな母にとっては「古民家」はこう言っては元も子もないが、ちっとも魅力的ではないのだろう。いくつになっても都会的なハイカラなものがお好きな母なのだ。
 
見学して圧倒的に気に入ったのは、DHCさんが運営するデイサービスだった。マンションの一階にある自動ドアから中に入ると良い香りが歓迎してくれる。草花の爽やかな香りにふわっと心が和んだ。グリーンを基調とした空間はエステサロンのような設えでフレッシュな印象。足湯もあり、ヘッドスパや時々ネイルのお手入れなどもイベント的に行われていた。これは女性ウケするだろうと思った。母と私は迷いなくこちらのデイサービスに週二回お世話になることにした。

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