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アーニャがね、よく言うんですよ。危ない目に遭っても、ははが助けてくれるから大丈夫だって。あの子が笑顔ではしゃいでいられるのは、ヨルさんが安全基地になっているから11

…蜂楽廻は、サッカーが大好きです。寝ても覚めても、朝から晩まで、ずっとずっとボールを蹴って暮らしていました…
 「ばーちらー、サッカーやろーぜー。」
 「いいよ。」
 …もちろん、誰かとサッカーをやる時は、いつだって一番うまいのは、蜂楽廻。とりわけドリブルが大好きで、たまに感じるボールと自分が一心同体になるみたいな感覚が最高で、そんな瞬間は決まって、めちゃくちゃ速くて、強くてーこれ以上楽しいことなんて、この世界には存在しないって、蜂楽廻は信じていました…

 「もう一回。もう一回。」
 「えーばちら強すぎて、つまんない。」「帰ってゲームしよーぜー。」
 「なんで?なんで?みんなも、ボールと一緒になればいいのに!そしたら、凄いプレーできるじゃん!サッカーより楽しいコトなんてないじゃん!」
 「キモッ」「てか、なんか怖いよ‥眼ェイッてるし。」「オカッパだし!」
 「いこーぜー。サッカーで、頭いっぱいお花畑とか、変だろコイツ!」

 「ぶべ!」「うわぁばちらがキレたぁ!」
 「おれは、変じゃない。」
 「は!?キモいんだよ。」
 「おれは、変じゃない。」

 「廻は、変じゃないよ。ママは、そう思うんだ。」
 「だよね。ママ。絶対アイツらが間違ってる。」
 「んー間違ってはないよ。ケンカはダメだけど‥廻には感じられるコトが‥その子らには感じられないだけだ。」
 「じゃあどーすればいいの?おれは、一緒にサッカーやりたいだけだよ。ゲームより、ずっと楽しい。」

 「はは。偉いね。廻は!自分の信じたいモノがあるって素敵なコトだよ。それを信じて、生きればいい。大人になっていくとね、みんな‥信じたいのに、信じられなくなる。それで聞こえないフリをしてるうちに、自分の声は本当に聞こえなくなる。」
 「廻が信じようとしてるのは、そのくらい儚くて大事なモノー‥それは、自分の心の中にいる、かいぶつの声だ。ママもね、ずっとその声を信じてるの。」
 『ブルーロック』蜂楽廻の子ども時代の回想です。


 
 親が子どもに与える影響を理解しようとすれば、親子を研究対象にする事は明白です。 親子の研究は、これまでに数千以上も行われ、その研究の結果は、世界中にあまねく知れ渡る育児アドバイスの基礎となっています。

 子育ての研究では、研究者は、親に自分の子育ての実践内容を報告して貰い、子どもの発達具合を測定します。
 時には、子どもに自分の親と自分に関して報告して貰う事もあります。
 さらに、教師や他の養育者等、別の情報源に、協力をして貰う事もあります。

 子育ての研究では「子どもの状況」と「子どもの発達」との間に、一貫した相関関係が見出されます。
 この相関関係が、親の子育てが子どもの行動を決める事の証拠として取り上げられます。

 たとえば「親が穏やかに接し、積極的に関わる子育て」と、その子どもの「感情的・行動的な問題の少なさ」には相関関係がみられます。
 これに対し「厳しく一貫性のない子育て」と、その子どもの「問題行動の多さ」にも相関関係がみられます。
 これこそ、まさに「子育ての重要性」を証明するものだと思いませんか?

 しかし、上記の相関関係を、確固たる事実と考えるのは早計です。


 親が子どもに穏やかに接し、一貫性のある子育てを実践する事が良い理由は、山程あります。
 ただ、この研究の問題点は「親がどのような子育てをするかによって、子どもの行動や態度・品行が決まる」と解釈される事です。

 この論理には、欠陥があります。
 2つの物事が関連しているからといって、一方が他方を引き起こした事にはならないのです。
 つまり、相関関係=因果関係ではないのです。


 「自閉症(ASD)」の原因は、赤ちゃんに適切な社会性を与えない冷たい母親に原因があると考えられていました。
 「自閉症」と診断された子どもの母親は、笑顔であやす等、典型的な母親らしいやり方で、赤ちゃんと接する事が出来ないという研究結果を受けて、医療関係者は「自閉症」の原因を冷たい母親にあると結論付けました。

 母親が赤ちゃんと触れ合わない事と「自閉症」との間には、確かに相関関係があった為「冷たい母親が子どもを自閉症にする」という誤った結論に達したのです。
 しかし、後に「自閉症」の子どもを持つ家族を長期的に調査した結果「自閉症」と診断された子どもの母親も、多くの母親と同じように、赤ちゃんに積極的に関わり、笑顔で接する等というように、子育てを開始していた事がわかりました。
 ただ「自閉症」の子どもは、典型的な発達を示す赤ちゃんがするような反応を母親に示しません。

 うんともすんとも言わないし、目も合いませんし、楽しそうにしている姿を見る事も、中々出来ません。
 その為、母親も次第に赤ちゃんに接する回数が減っていったのです。
 つまり、母親の行動が子どもに影響を与えたのではなく、寧ろ逆で、子どもの行動が母親に影響を与えていたのです。

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