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そして、誰もケアマネをやらなくなった

「よっしゃ!明日こそ、全部拾って、全部決める!」

 「全部はー」「来たな赤葦!俺は、考えたんだぜ!今日は、反論に反論出来る!!」

 「ムリではなく、ムズカシイである!!」

 「‥!そうですね。」

 「どんどん行くぜ。」

 『ハイキュー』木兎と赤葦の会話です。





 「明日台風ですけど、予定通り会場で研修をするのですか?」

 「はい。予定通りします。」

 「移動の危険性等も踏まえ、オンラインで開催して頂けると大変助かるのですが‥。」

 「オンラインで開催する予定はありません。予定通り会場でやります。」

 「台風の影響で移動時等に事故が起こってしまうリスクがあるにも関わらず、オンライン開催の準備は何もせずに、会場で開催されるのですか?」

 「そこは、自己判断です。今からオンラインの準備をする事は出来ません。」


 昨日の私と研修を主催する区役所の高齢福祉課の担当の方との会話です。

 考える事を放棄している人との会話は、疲弊します。



 4,04倍。

 この数字は、2022年12月におけるケアマネジャー(ケアマネ)の有効求人倍率です。


 私は、仕事の1つとして、ケアマネをやっています。

 主任ケアマネの資格も取得し、ケアマネとしての仕事歴は12年になります。



  ①仕事の多忙さ・求められる事に対して、給料が安い

  ②精神的に疲弊する

  ③資格の維持が大変


 ケアマネがケアマネを辞める要因を分析すると、上記の3つに分類する事が出来ます。




 ①過去10年間において、物価は1,5倍から2倍に上がっています。

 2012年において平均1,090,000円で購入出来ていた軽自動車は、2022年においては平均1,600,000万円を支払わないと購入出来なくなっています。

 現在においては、その値段は、さらに上昇しています。


 それにも関わらず、ケアマネの給料は、過去10年間で8,000円しか上昇していません。

 2024年に改正された「介護保険法」において、ケアマネの報酬が上昇する事が期待されましたが、1人あたり80円の上昇しか見られず「バカにしているのか」と怒りを覚えた人も多かったのではないでしょうか?

 そのような中で求められる事ばかりが増え「介護」「障害」「医療」等の分野は勿論「住宅」「生活保護」「成年後見」等、あらゆる機関からの相談があるのが実態です。

 答えられる専門性が増える事で、給料が上がるのであれば問題はないのですが、残念ながらケアマネは、そのような仕組みになっていません。


 「善意」だけで仕事を続ける事は、出来ません。

 「善意」に頼るこの業界は、もう破綻寸前です。




 ②2018年過去1年間において、利用者(高齢者)・家族からハラスメントを受けたというケアマネは、60%に及びました。

 私の会社は「介護を受ける人が幸せになる為に、まずは介護で働く人を幸せにする」という世界観を提唱しています。

 精神的に疲弊し、鬱病を発症し、辞めていくケアマネが後を絶ちません。

 責任の所在を全てケアマネに持っていくという利用者・家族・仕事関係者の世界観を、改善していかないと、誰もケアマネをやらなくなる時代がやってきます。




 ③資格の維持が大変。

 あまり言われていませんが、私は、早急に改善すべき点は、ここにあると考えています。

 ケアマネは、試験に合格し、登録をしたら、仕事が出来るわけではありません。

 そして、その後も各研修を受講していかないと、資格の維持が出来ません。


  a.実務研修(87時間)

  b.専門研修Ⅰ(56時間)

  c.専門研修Ⅱ(32時間)

  d.主任ケアマネ研修(70時間)

  e.主任ケアマネ更新研修(46時間)



 これだけの研修を受けないと、資格を維持する事が出来ない資格が他にあるでしょうか?

 これを、業務の傍ら、受講していかなければならないのです。


 そして、驚くべき事に、上記の研修を受講する為の条件として、区等が主催する研修を年4回以上受講しなければならないという「研修地獄」となっています。

 研修を受ける為に、研修を受ける。

 いかにも、日本人、否、公務員っぽい思考方法であり、最早呆れてしまいます。



 上記の私と区役所の方との会話も、区が開催する「研修を受ける為の研修」です。

 たとえば、14時~16時の研修を会場でやる場合、ケアマネは、半日仕事を空けなければなりません。

 会場までの移動時間等も、考慮する必要があるからです。

 つまり「研修の為の研修」を受講する為に、半日仕事が出来ない状態になるのです。


 その為、私は、研修をZOOM等のオンラインでやる事を区役所に依頼し続けています。

 オンラインの場合、事務所若しくは自宅から参加が可能である為、14時からの研修であっても、13時に訪問やオンライン面談等の仕事をする事が出来ます。

 また、今回のような台風・毎年のように続く猛暑等から、心と身体を守る事にも繋がります。



 しかし、私が仕事をしている北区においては、今年度開催する11の「研修の為の研修」全てが、会場における研修になっています。

 その理由を聞くと「実際に会って、隣の人と話す等の効果は会場でないと出来ない。」等という謎の返答が返ってきました。


 考えてみてください。

 たった2時間研修で隣になった人と、研修終了後も関係を継続した事がありますか?

 私自身、そのような経験はありませんし、そのような人に出逢った事もありません。



 百歩譲って、そのような効果があるのだとしても、全ての研修を会場における研修にする必要はありません。

 2024年「介護保険法改正」において、介護現場での生産性向上の取り組みを促す為、介護サービスの質の向上・職員の負担軽減の方策を検討する委員会の設置を、施設系サービスに義務付ける事になりました。


 私は、この委員会は、介護保険サービス事業所ではなく、区役所や東京都にこそ、設置すべきであると思います。

 会場研修を選択したい人は会場研修を選択出来るように、生産性向上の為にオンライン研修を選択したい人はオンライン研修に参加出来るようにすればいいのです。



 ケアマネの研修自体を変えていく事が、すぐに出来ない事は理解出来ます。

 しかし、区が主催する研修の半分をオンライン研修にする事は、今日から出来ます。

 実際、コロナ渦では、区が主催する研修も、殆どがオンラインとなっていました。


 私自身、講師やファシリテーター等として研修を主催した経験もありますが、オンラインにおいても、グループワークは出来ます。

 寧ろ、画面共有等の機能がある為、オンラインにおけるグループワークの方が、成果を出す事が期待出来ます。



 あなたがケアマネでなくても、是非、この現状を認識して、応援して頂きたいです。

 ケアマネが「介護保険」の鍵である事は、間違いありません。

 ケアマネがいないと、デイサービスを利用する事も、ヘルパーさんを利用する事も、ベッドを借りる事も、出来ません。


 最も避けるべき事態は、誰も、ケアマネをやらない時代が来る事です。


 どんな方面からでも良いので、この現状を理解して、応援して頂けると、幸いです。



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