王とはな、誰よりも強欲に誰よりも豪笑し誰よりも激怒する。清濁を含めて人の臨界を極めたるもの。そうあるからこそ臣下は王に羨望し、王に魅せられる。一人一人の民草の心に我もまた王足らんと憧憬の灯が燈る
「山の王よ、恨みや憎しみにかられて王が剣を取るのなら、怨嗟の渦に国は滅ぶぞ。王ならば、人を生かす道を拓くために剣を取るべきだ。」
「全国境の廃除!できないなら、力づくでやるまでだ。戦国の世らしくな。」
「人を生かす道とは、正反対では?」
「否。今まで五百年の騒乱が続いたならば、あと五百年続くやも知れん。俺が剣を取るのは、これから五百年の騒乱の犠牲をなくすためだ。」
「玉座は、俺の路の第一歩にすぎぬ。俺は、中華を統一する最初の王になる。その協力を得に、山の王に会いに来た。」
『キングダム』政(後の始皇帝)の言葉と山の王との対話です。
6月19日プーチン大統領(以下プーチン)が、北朝鮮を訪問し、金総書記と面談をしました。
両国が協力関係にある事は、承知の事実であり、プーチンの訪朝も予想の範疇でしたが、1つ世界が予想し得なかった事が起こりました。
今回の「露朝包括的戦略パートナーシップ条約」4条において、軍事支援が明記されたのです。
★どちらか一方が、武力侵攻を受け、戦争状態になった場合、遅滞なく、保有するすべての手段で軍事的およびその他の援助を提供する
プーチン:「何も新しいものではない。」
金:「同盟関係という高い水準に上がった。」
両者の軍事支援に関する見解には、大きな温度差が見られます。
北朝鮮はロシアからの軍事支援を是が非でも獲得したかったのに対し、ロシアは北朝鮮との軍事支援に出来れば合意したくなかったというのが、両国の正直な思惑でしょう。
…人間万事塞翁が馬…
中国の北端、国境の「塞(とりで)」の近くに、占いが得意な「翁(老人)」が住んでいました。あるとき、彼の飼っていた馬が逃げてしまったので、みんなが同情しましたが、彼は「これは幸運が訪れる印だよ」と言います。そして、そのとおり、逃げた馬は立派な馬を連れて帰ってきました。そこでみんなが祝福すると、今度は「これは不運の兆しだ」と言います。実際、しばらくすると彼の息子がその馬から落ち、足の骨を折ってしまったのです。またみんなが同情すると、彼の答えは、「これは幸運の前触れだ」。息子はその怪我のおかげで、戦争に行かずにすんだのでした。
将来のことは予測できないという意味で,幸せなことが不幸に,不幸なことが幸せにいつ転じるか分からないので物事に一喜一憂しない,右往左往しないというたとえです。
政治の動きを見ていると、否、私達の人生も、まさに「人間万事塞翁が馬」であると、つくづく感じてしまいます。
ロシアがウクライナ戦争を始めた事により、最も喜んだ、否、得をする国はどこでしょうか?
中国とアメリカとの関係が険悪となり、最も喜んだ、否、得をする国はどこでしょうか?
それは、数年前まで世界から孤立していた北朝鮮です。
1961「ソ朝友好協力相互援助条約」
これには、両国の軍事支援が含まれていましたが、ソ連崩壊やロシアが韓国に近づいた事により、1996年に失効しています。
2000「露朝有効協力条約」
これには、軍事支援は含まれていません。
2024「露朝包括的戦略パートナーシップ条約」
6月19日再び、両国に軍事支援が組み込まれました。
ロシアは、北朝鮮に、技術を提供しています。
北朝鮮は、ロシアに、武器を提供しています。
アメリカは、自国兵器を使う事を、地域を限定する事なく、許可する声明を発表しました。
これにより、これまでのロシアの核兵器を脅しとした戦略の効果が、弱まってきています。
ロシアは、次の一手を打つ必要がありました。
その一手が、アメリカが嫌がる北朝鮮との接近でした。
そして、この戦略は、ロシアと北朝鮮両国だけの問題ではありません。
ロシア・北朝鮮両国の本当の狙いは、さらに、アメリカが最も嫌がる事は、中国の両国に対する支援なのです。
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