介護現場から〜「ケアをするときに大切にしていること」〜
今月末のイベントの交流会テーマは
〜「ケアをするときに大切にしていることはなんですか?」〜
とても初心を思い出します。
20歳で飛び込んだ介護現場、最初の勤め先は有料老人ホームでした。
職員は自分より遥かに歳上の先輩方が多くいました。
介護職として知識や経験がないぶん、小さなことにもたくさんの違和感を感じる事がありました。
たとえば、ご利用者を「〜ちゃん」付けで呼んだり、余暇の時間にフロアでずっと傾眠するご利用者などです
ご利用者に「すみません、うんちが出たような気がするからオムツを見てくださいますか」と声をかけられ、先輩方は「ご飯終わったあとに見るから〜」という声かけなど。
そのときの自分には、ちょっとずつ介護のイメージとのギャップが生まれていきました。
わたしも仕事にも慣れてきて、ひとりだちでシフトもこなすようになりました。良くも悪くも時間も意識し動くようになりました。業務に追われているとき、ささいなご利用者からの声かけを気持ち良く受け取れない時もありました。
ご利用者対応を重ねるなかで、「すみません、うんちが出たような気がするからオムツを見てくださいますか」と職員に声をかけるご利用者は、必ずお食事前にオムツを気にされる事に気がつきました。ご本人が安心するならと、先輩たちに気づかれないように食事前にパット交換を行っていました。そのやりとりのなかで、お食事の時に、周りの方に不快な思いをさせたくないという強いお気持ちがある事がわかりました。
いつも便は出ていませんでしたが、確認させていただくことが、このご利用者の安心感に繋がるのだと思いました。
きちんとご利用者の気持ちを汲んだケアにあたりたい!そう少しずつやりがいが芽生え始めたのですが・・
たくさんの業務を行うなかで、まだまだ要領よくない自分は、洗濯を返してから午後のお風呂の準備をして〜と毎日の業務の流れに頭がいっぱいでした。
そんなある日、洗濯物を返しに居室へ伺った際、寝ているご利用者が小さな声で「お姉さん・・・」と言いました。ちょうど居室を出る扉の前、わたしには小さな声でもちゃんと聞こえていましたが、ハッと気がつくと扉の外にいました。
その時に自分自身にとても絶望したのを、いまでもよく覚えています。
自分のなかで大切にしたいと思うことがちゃんとあったはずなのに、見落としたくない大事な気持ちをちゃんとわかっていたはずなのに、
先々の業務に思いが走り、一番大事だと思っていた人の想いに見て見ぬふりをした自分自身にとてもショックを受けていました。
「疲れた、寝たい」というご利用者の声を聞いて、「寝かせてきます!」という私に「あと30分でおやつでしょ!」という先輩の声。わたしはその声を振り切ってまでご利用者主体には寄り添えず…
食事介助について教えてもらっていたとき、先輩から「ごはんだけじゃ味がないから、おかずと一緒に食べさせてあげたほうがいいよ」とアドバイスをもらった途端に、反対から違う先輩が「ごはんとおかずを一緒にするなんてダメよ」とアドバイス…
異様な空気に包まれたなか、わたしはどちらを実践すればいいのか分からず固まってしまったことがありました。
あぁ、介護って難しい
誰のために介護をやってるんだっけ
優しい気持ちだけじゃだめなんだ
業務との兼ね合いで諦めないといけない部分もあるんだ
大切にしたいと思うご利用者主体にも限界があるんだ
20歳なりにいろいろなことを考えました。
ご利用者さんのことを思うからこそ、一概に否定できない線引きが介護現場ではよくあり、多様な介護観に迷うことも多くあります。
もちろん介護者側の視点からではなく、ご利用者がどうしたいかの気持ちが最優先なのですが…
「ケアをするときに大切にしていること」とても本質をつくテーマだなと感じます。
わたしも自分なりに考えながら、イベントでの皆さんとの対話を楽しみにしています。