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介護施設のIT化・DX化が進まない理由を、ちょっと掘り下げてみる

■介護施設のIT化やDX化が進まないのは、人的スキル不足だけではなく、業界全体が抱えるいくつもの「見えない壁」が原因です。その壁を乗り越えるには、現場の声をもっと尊重しながら、リーダーシップとサポート体制を充実させる必要があります。つまり、単に「DX推進!」と叫ぶだけじゃダメで、現場と経営が一緒になって一歩ずつ進む姿勢が大切なのです。

■介護施設がIT化・DX化を進めるには、乗り越えなければならない課題がたくさんあります。

  • ITリテラシー不足
    現場スタッフの多くが「パソコン?苦手です……」という状態です。普段の業務に追われていて、新しいツールを学ぶ時間も余裕もないのが実情です。また、年齢層が高いスタッフほど「デジタルなんて難しい」という先入観を持ってしまいがちで、新しい技術への抵抗感が生まれやすいのも課題です。

  • 教育や研修の不足
    ITやDXに関する研修プログラムがあっても、現場が忙しくて参加できないことがよくあります。また、「そもそも何を教えれば良いのか」が施設側でも明確でないため、形だけの研修で終わってしまうこともあります。

  • リーダーシップの欠如
    DXを推進するには、現場を引っ張るリーダーや専門家が必要ですが、介護業界ではそのような人材が不足しています。経営陣がDXの必要性を理解していなかったり、投資を渋ったりするケースもあります。

  • 文化的な壁
    「紙の方が安心」「今までのやり方で十分」という考え方が、現場で根強く残っています。新しい仕組みを導入しても、それを使いこなす前に「慣れたやり方に戻りたい」という声が出てしまうのです。

■例えば、ある介護施設が電子記録システムを導入したケース。施設としては「業務効率化」のために大きな予算をかけましたが、現場ではこんなことが起きました。

スタッフの多くがシステムの使い方に慣れず、「時間がかかる」と不満が噴出。教育・研修の時間が十分に取れず、「やっぱり紙の方が早い」と感じるスタッフが続出。結果的に、システムがほとんど使われず、紙の記録に戻ってしまいました。

さらに、IT導入をサポートする補助金制度もありますが、申請手続きが複雑すぎて「そもそも申請を諦める」という施設も少なくありません。このような制度の「ハードルの高さ」も、DX化を阻む要因の一つです。

■介護施設のIT化やDX化を進めるには、ただ「技術を導入すれば良い」という話ではありません。現場スタッフが「これなら使えそう!」と思えるツールを選び、それを定着させるための研修やサポート体制を整える必要があります。さらに、現場の意見をしっかり聞きながら、経営陣と現場が一緒に取り組む姿勢が求められます。

「新しいことは難しい」と感じる気持ちは誰にでもあります。でも、少しずつでも良いので、「やってみる」姿勢を持つことが、介護施設全体の未来を切り開く第一歩です。やり方次第で、ITやDXは現場の負担を減らし、より良いケアにつながる大きな力になります。

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