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介護保険外サービス市場の真の発展には何が必要か? 〜事業者視点の欠落と導入後の実態検証の不足〜

■近年、介護保険外サービス市場の拡大が強く推進されている。特に、国の施策としても注目され、多くの資料や報告書では市場の成長性や導入のメリットが強調されている。しかし、その議論の多くは、企業が在宅系や施設系の介護事業者に対してシステムや機器を販売する視点に偏り、介護事業者の実態や導入後の影響に関する深掘りが不足している。

■例えば、介護ロボティクスに関しては、国から膨大な補助金・助成金が投じられ、多くの介護事業者がその支援を受けて導入を進めている。しかし、これらの技術が現場でどのように活用され、施設の運営や職員の働き方、入居者の満足度にどのような影響を与えているのかについて、継続的に調査・検証されている資料はほとんど見当たらない。導入時には大々的に「祭り」のように盛り上がるが、その後、現場でどのように定着し、どのような課題が生じているのかが十分に議論されていないのが現状である。

また、システムや機器を導入する際、介護事業者は単に設備を整えるだけではなく、それを運用するための人材確保、必要なスキルや資質の育成、さらには継続的な運用モデルの構築といった課題に直面する。特に、人手不足が深刻な介護業界において、新たなテクノロジーの導入がかえって業務負担を増加させたり、導入後の運用が事業者ごとに属人的になったりするケースも少なくない。それにもかかわらず、こうした現場視点の課題について公的資料や政策の中で十分に言及されることは少ない。

■介護保険外サービス市場の真の発展には、単なる市場規模の拡大や技術導入の促進にとどまらず、導入後の定着プロセス、実際の効果検証、そして介護事業者が直面する運用上の課題に着目した議論が不可欠である。

導入時の一時的なインパクトだけでなく、中長期的にどのような運営改善が実現されるのか、どのような点で期待と異なる結果が生じているのかを明らかにし、フィードバックを政策や市場に反映させる仕組みを確立することが求められる。

■市場を成長させるだけではなく、実態に即したサポートと継続的な効果測定を通じて、本当に現場で役立つ介護保険外サービスを確立していくことが、今後の議論の焦点となるべきではないだろうか。

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