「リハビリケーション」という新たな取り組みが老健施設の未来を拓く戦略となる
◆公園や観光地など屋外や旅先におけるリハビリ(ここでは「リハビリケーション」と呼ぶことにします)は、従来の施設内リハビリを超えて、高齢者の意欲向上や健康維持に寄与し、老健施設が地域社会や企業とも連携しながら新たな価値を生み出す有意義な戦略となる。
◆高齢者の健康寿命延伸が社会課題とされる中、屋外や旅先で行う「リハビリケーション」は心理的なリフレッシュや運動継続の促進に大きく寄与する。さらに、この取り組みは企業にとっても社会貢献や新規事業展開の機会となり、老健施設と企業との連携によって新たなビジネスモデルが創出される可能性が高い。
◆たとえば
1. 企業の健康経営や福利厚生との連携
企業においては、従業員が仕事と介護の両立に苦慮しているケースが増加している。「リハビリケーション」を取り入れた老健施設と連携し、以下のような福利厚生プランを提供することで、企業は従業員の健康管理や介護支援を実現できる。
リハビリ付き家族旅行プラン
企業が従業員向けに、親や家族とともに参加できるリハビリ旅行を提案。家族が観光やリハビリを楽しみながら健康維持を図ることができ、従業員の介護負担の軽減につながる。企業の「家族ケア支援」として注目され、従業員満足度の向上や人材定着率向上が期待できる。企業向け「リハビリ観光」プロジェクト
企業研修や休暇制度と連携し、リハビリを含む「リハビリ観光プラン」を提供。高齢者社員やその家族向けのプランとしつつ、定年後のセカンドキャリア支援の一環としても活用できる。
2. 観光・地域振興企業とのコラボレーション
老健施設と地域観光業、旅行会社が連携し、高齢者やその家族をターゲットとした「リハビリ観光パッケージ」を開発することで、以下の効果が生まれる。
シニア向けツアーの提供
リハビリを取り入れたシニア向けの観光ツアーを企画。例えば、観光地での散策や自然環境を活かしたウォーキングをリハビリメニューに組み込み、楽しみながら健康を維持できるツアーを提供する。観光地としてもシニア層の取り込みが可能となり、観光需要の拡大が期待できる。地域経済の活性化
老健施設が地元の飲食店や宿泊施設と協力して「リハビリケーション」プランを導入することで、地域経済への貢献が可能になる。シニア層を中心とした長期滞在型のリハビリ観光が実現すれば、地域の新たな収益源としても注目される。
3. 健康関連産業との共同開発
「リハビリケーション」の実践には、健康機器やデジタル技術との連携も欠かせない。企業と老健施設が協働し、以下の取り組みが考えられる。
リハビリ支援機器・アプリの開発
屋外リハビリに特化したウェアラブルデバイスや健康管理アプリを共同開発し、リハビリの効果をデータとして可視化することで、企業は新しい市場の開拓が可能となる。老健施設もデータを活用することで科学的根拠に基づいたリハビリ提供が実現する。リハビリ専門ウェア・用品の開発
屋外活動を快適に行える機能性ウェアやシューズ、リハビリ用具を老健施設と連携しながら開発。高齢者のアクティブな生活を支援し、企業にとっては新規顧客層の開拓につながる。
4. CSR活動やSDGs目標との連動
企業にとって、社会貢献(CSR)やSDGsの目標達成は重要なテーマである。「リハビリケーション」を通じた高齢者支援活動は、以下のように企業価値向上にも寄与する。
地域の健康課題解決への貢献
企業が老健施設と協力し、高齢者の健康維持活動を支援することで、地域社会への貢献を果たし、企業のブランド力や信頼性が向上する。社会的インパクトの可視化
「リハビリケーション」の効果をデータ化し、企業の活動が高齢者の健康改善やQOL(生活の質)向上に貢献した実績を可視化。これにより、企業の取り組みがSDGsの「健康と福祉」分野(目標3)や「住み続けられるまちづくり」(目標11)に貢献することを示すことができる。
◆「リハビリケーション」は老健施設の新たな価値創出とともに、企業との連携によって地域振興、健康関連産業の発展、従業員の健康経営支援など、多面的なビジネス機会を生み出す有力な戦略である。
今後、老健施設が主体的に企業と連携し、リハビリケーションを推進することで、社会全体の健康長寿と経済の活性化に大きく寄与することが期待される。