悪心・嘔吐の予防と治療に役立つ鍼と指圧の効果
悪心・嘔吐に悩む方に向けた効果的な治療法を紹介します。特に、腫瘍学臨床実践ガイドラインで推奨される鍼や指圧の治療法について詳しく解説し、科学的な根拠に基づくアプローチを提供します。化学療法や妊娠時のつわり、胃の不調に対応した具体的な鍼刺激法や、生活習慣の改善方法についても取り上げています。
悪心と嘔吐の定義:
悪心: 嘔吐に先立って感じる不快感や差し迫った感覚。
嘔吐: 胃内容物を体外に排出する現象。
発症機転:
反射中枢: 嘔吐中枢(延髄網様体)と化学受容器引金帯(CTZ、第4脳室)が関与。
刺激経路: 咽頭や消化管からの迷走神経や脳皮質からの刺激による。
関連する中枢部位:
延髄(嘔吐中枢)
第4脳室(CTZ)
橋
中脳
大脳皮質
発症原因:
中枢性: 脳圧亢進、脳循環障害、上位中枢神経疾患、動揺病
化学的: 薬物、中毒
直接作用: 内分泌疾患、代謝異常
関連疾患:
中枢神経系疾患: 脳梗塞や脳内出血など
悪性腫瘍: 消化器系の癌(例:舌・口腔、胃、小腸、大腸、肝、胆・膵癌)
消化器疾患: GERD、食道裂孔ヘルニア、急性胃炎、急性腸炎、胃十二指腸潰瘍、胆石症、膵炎など
症状
意識障害、激しい頭痛、眼痛、めまい、眼振:脳、眼、内耳、心臓などの障害の可能性。
悪心・嘔吐、腹痛、胸痛、発熱、下痢、吐血、下血:消化器系の悪性腫瘍やその他の疾患を疑うべき。
女性の原因不明の嘔吐:妊娠時のつわりや妊娠高血圧症候群の可能性。
機能性ディスペプシア(FD):上部消化管の検査で器質的疾患がないにもかかわらず、上腹部の症状が続く疾患。ストレスや消化管運動異常などが原因とされる。
胃食道逆流症(GERD):胃酸が食道に逆流する疾患。
機能性ディスペプシアの定義と症状:
定義:上部消化管内視鏡検査で器質的疾患がないのに、胃や十二指腸由来の症状が続く疾患。
症状:心窩部痛、心窩部の灼熱感、食後の胃もたれ、早期飽満感などがあり、悪心や嘔吐を伴うことがある。症状は6ヶ月以上続き、週に数回程度の頻度である。
補足
ディスペプシアとはどんな意味?
ディスペプシア(Dyspepsia)は、消化不良や消化器系の不快感を指します。具体的には、上腹部の痛みや不快感、胸焼け、胃もたれ、早期飽満感(食事の量が少なくても満腹感を感じること)などが含まれます。ディスペプシアは一般的に、消化器系の疾患や問題が原因であり、胃潰瘍や胃癌などの器質的疾患がない場合もあります。この場合、機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia)と呼ばれま
語源は?
「ディスペプシア(Dyspepsia)」は、ギリシャ語の「dys-」(不良、困難)と「pepsis」(消化)から派生しています。したがって、「ディスペプシア」は「消化の困難」や「消化不良」を意味します
胃内視鏡検査:異常がないことを確認する。
医療面接での確認事項:
発症期間と持続期間、生活への影響
症状のつらさ
症状の確認:
心窩部痛、心窩部灼熱感、食後の胃もたれ、早期飽満感のいずれかがあるか。
これらの症状が6ヶ月以上前から週に数回程度続いているか。
生活に支障があるかどうか。
分類:
心窩部症候痛群:心窩部痛または心窩部灼熱感がある場合。胃の機能が亢進している。
食後愁訴症候群:食後の胃もたれまたは早期膨満感がある場合。胃の機能が低下している。
重複型:上記の両方の症状がある場合。
予測性悪心・嘔吐の予防・治療法:
適切な制吐剤療法、行動療法(リラクセーション、催眠、音楽療法)や鍼、指圧が推奨されている。
特定の薬物(アルプラゾラム、ロラゼパム)も使用される。
鍼治療の有効性:
米国や英国の研究で、術後、化学療法、妊娠に伴う悪心・嘔吐に鍼が有効とされている。
胃の蠕動運動を整える効果がある。
具体的な鍼治療:
悪心・嘔吐に対して「内関」への鍼刺激が効果的。
機能性ディスペプシアや胃食道逆流症の治療に、「中脘」「足三里」などの経穴が用いられる。
生活指導:
ストレス管理、バランスの取れた食事、暴飲暴食の回避、体重管理などが推奨される。
寝る前の食事を控え、右側を下にして寝ることで逆流を防止する。
これらの治療法は、総合的なアプローチで悪心・嘔吐の改善を目指している。
問題
問題1: 悪心とはどのような症状を指しますか?
胃の内容物を体外に排出する現象
嘔吐に先立つ不快感や差し迫った感覚
胃酸が食道に逆流する疾患
上腹部の痛みや不快感
正解: 2. 嘔吐に先立つ不快感や差し迫った感覚
解説: 悪心は嘔吐が発生する前に感じる不快感や差し迫った感覚を指し、嘔吐自体とは異なります。
問題2: 嘔吐中枢はどの部位にありますか?
橋
大脳皮質
延髄
中脳
正解: 3. 延髄
解説: 嘔吐中枢は延髄の網様体に位置しており、嘔吐反射を制御する役割を果たします。
問題3: 悪心・嘔吐の発症機転に関与する経路はどれですか?
消化管の平滑筋収縮
咽頭や消化管からの迷走神経刺激
交感神経系の過剰反応
肝臓の代謝異常
正解: 2. 咽頭や消化管からの迷走神経刺激
解説: 悪心・嘔吐の発症は、咽頭や消化管からの迷走神経や脳皮質からの刺激が関与しています。
問題4: 化学療法や妊娠時の悪心・嘔吐に対して推奨される鍼治療のポイントはどこですか?
足三里
内関
中脘
百会
正解: 2. 内関
解説: 悪心・嘔吐に対して、「内関」への鍼刺激が有効とされています。特に、化学療法や妊娠時のつわりに効果的です。
問題5: 機能性ディスペプシア(FD)の定義に合致しない症状はどれですか?
心窩部痛
食後の胃もたれ
吐血
早期飽満感
正解: 3. 吐血
解説: 吐血は器質的疾患が疑われる症状であり、機能性ディスペプシア(FD)の定義には含まれません。
問題6: 予測性悪心・嘔吐の治療法に含まれないのはどれですか?
制吐剤療法
リラクセーション
音楽療法
ステロイド治療
正解: 4. ステロイド治療
解説: 予測性悪心・嘔吐の治療法には制吐剤療法やリラクセーション、音楽療法が含まれますが、ステロイド治療は一般的に含まれません。