筋トーヌス系
まずは筋トーヌスって何?
筋トーヌスとは、筋肉の緊張状態や緊張の度合いを指します。筋肉が常に一定の緊張を保つことで、姿勢を維持したり、動作に応じた力を発揮するために重要です。筋トーヌスは、運動神経系や筋肉の状態に影響を受け、過度の緊張(高トーヌス)や緊張が不足する状態(低トーヌス)が生じることがあります。これにより、運動能力や姿勢に影響を与えることがあります。
ならば
筋トーヌスの亢進
(筋緊張の増加)
痙直(けいちょく)
:錐体路障害に関連し、屈筋または伸筋の一方が障害されます。特徴的な現象として、最初は動かすのが困難で抵抗が強いが、ある地点を超えると急に抵抗がなくなる「折りたたみナイフ現象」があります。
固縮(こしゅく)
:錐体外路系障害(パーキンソン病など)に関連し、屈筋と伸筋の両方に障害があり、最初から最後まで一定の抵抗がある「鉛管現象」がみられます。
筋トーヌスの低下
(筋緊張の減少)
小脳疾患や片麻痺初期などで起こり、他動的な運動に対する抵抗がなく、筋肉が弛緩した状態です。筋肉が柔らかく、四肢を揺らすと「振り子様運動」という現象が見られます。
折りたたみナイフ現象、鉛管現象、振り子様運動など、筋トーヌスの異常に伴う特有の抵抗や動作パターンが説明されています。
これらは錐体路障害、錐体外路障害、または小脳疾患に関連する筋トーヌスの変化を特徴づけるものです。
いきなり問題!
問題 1: パーキンソン病でみられる筋トーヌスの異常はどれですか?
A. 折りたたみナイフ現象
B. 弛緩
C. 鉛管現象
D. 振り子様運動
正解: C. 鉛管現象
解説: パーキンソン病などの錐体外路系障害では、屈筋と伸筋の両方が障害され、最初から最後まで一定の抵抗がある「鉛管現象」がみられます。
問題 2: 小脳疾患でみられる筋トーヌスの異常はどれですか?
A. 折りたたみナイフ現象
B. 鉛管現象
C. 振り子様運動
D. 固縮
正解: C. 振り子様運動
解説: 小脳疾患や片麻痺初期では筋トーヌスが低下し、筋肉が弛緩して四肢を揺らすと「振り子様運動」が見られます。
問題 3: 筋トーヌス亢進時、錐体路障害に関連する現象はどれですか?
A. 振り子様運動
B. 鉛管現象
C. 折りたたみナイフ現象
D. 弛緩
正解: C. 折りたたみナイフ現象
解説: 錐体路障害では、痙直とともに「折りたたみナイフ現象」がみられ、動かしにくいが、ある点を超えると急に抵抗がなくなります。
問題 4: 他動的運動に対して最初から最後まで一定の抵抗を感じるのはどれですか?
A. 折りたたみナイフ現象
B. 振り子様運動
C. 鉛管現象
D. 弛緩
正解: C. 鉛管現象
解説: 錐体外路系障害では、他動的運動に対し、最初から最後まで一定の抵抗を感じる「鉛管現象」が特徴です。
問題 5: 筋トーヌスが低下しているときに見られる現象はどれですか?
A. 折りたたみナイフ現象
B. 鉛管現象
C. 固縮
D. 振り子様運動
正解: D. 振り子様運動
解説: 筋トーヌスが低下した場合、筋肉が弛緩し、四肢を揺らすと「振り子様運動」が見られます。
復習
**錐体路(すいたいろ)**とは、脳から脊髄へと信号を伝える神経経路の一つで、主に随意運動(自分の意志で行う運動)を制御します。この経路は、特に体の骨格筋に対する運動の指示を送る役割を担っており、次の2つの経路で構成されています:
外側皮質脊髄路(外側錐体路)
主に四肢の運動を制御し、微細な動きや複雑な運動を担当しています。
前皮質脊髄路(前錐体路)
主に体幹や大きな筋肉の動きを制御します。
錐体路は大脳皮質の運動野から始まり、脳幹を通って脊髄まで続き、最終的に筋肉へと指示を送ります。錐体路の障害があると、運動麻痺や痙直(筋肉の異常な緊張)が生じます。このため、錐体路障害では折りたたみナイフ現象のような特徴的な運動異常が見られることがあります。
簡単に言えば、錐体路は体の随意運動をスムーズに行うための重要な経路です。
錐体外路(すいたいがいろ)とは、運動制御に関与する神経系の一部で、錐体路(随意運動を制御する経路)とは異なり、無意識的な運動や姿勢の維持、筋緊張の調整を主に担当します。錐体外路は、大脳皮質以外の脳の部分(特に大脳基底核、視床、脳幹、脊髄など)から成る複数の経路によって構成されています。
主な役割は
筋肉の緊張の調整:適切な筋肉のトーヌス(緊張)を保つことで、運動をスムーズに行うことを助けます。
姿勢の維持:体の姿勢やバランスを調整し、無意識に安定させます。
協調運動の調整:随意運動を滑らかに行うために、不要な動きを抑制したり、協調的に動かす働きをします。
錐体外路の障害があると、次のような症状が現れることがあります:
固縮(こしゅく):筋肉の持続的な緊張で、他動的な運動に対して常に一定の抵抗がある状態(パーキンソン病などでみられる)。
震戦(しんせん):無意識的な震え。
不随意運動:自分の意志とは関係ない運動が現れる(例:舞踏病、アテトーシスなど)。
錐体外路系の代表的な疾患には、パーキンソン病やハンチントン病などがあり、これらは運動の滑らかさや協調性が損なわれることによって、日常生活に支障をきたします。
要するに、錐体外路は、無意識的な運動や姿勢、筋肉の緊張を調整して、体を安定させる役割を担っています。
**錐体路(すいたいろ)と錐体外路(すいたいがいろ)**は、どちらも体を動かすために使われる神経の道ですが、それぞれ違う役割を持っています。
錐体路は、たとえば「手を動かすぞ!」と自分で考えて体を動かすときに使う道です。自分でやりたい動きを正確にコントロールするための道なんです。たとえば、ピアノを弾いたり、絵を描いたりするときにこの道を使っています。
錐体外路は、みんなが歩いたり、立ったりしているときに、体のバランスを取ったり、姿勢を保つために使われる道です。この道は、無意識に働いていて、気をつけなくても自然に体を安定させてくれるんです。たとえば、歩いているときにフラフラしないようにするのが錐体外路の仕事です。
違いを簡単に言うと:
錐体路は、自分でやりたい動きを手伝ってくれる道。
錐体外路は、体のバランスや姿勢を無意識に支えてくれる道。
だから、錐体路は「意識して動くため」、錐体外路は「無意識に体を支えるため」と覚えるとわかりやすいですね!
もう一度確認
筋トーヌス亢進(筋緊張の増加)
現象:
🔴筋強剛(固縮)(rigidity):
・鉛管現象: 他動運動に対して常に一定の抵抗があり、最後まで一様に続く(大脳基底核障害 錐体外路障害)。
・歯車現象 抵抗が断続的に見られる
錐体外路障害: パーキンソン病、MSA-P(線条体黒変性症)、ウィルソン病、進行性核上性麻痺など。
🔴痙縮
折りたたみナイフ現象: 曲げたり伸ばしたりする途中で急に抵抗が減少する現象(錐体路障害に関連)。
原因:上位運動ニューロン障害
筋トーヌス低下(筋緊張の低下)
筋の弛緩: 他動運動に対する抵抗がなく、筋肉は柔らかく、運動時に筋の収縮が起こらず、ぐにゃぐにゃしている状態。
振り子様運動: 四肢を揺らすとブランブランする現象。
原因:小脳失調や上位/下位運動ニューロンの障害が関連。
運動速度と抵抗の関係
非依存性: 筋強剛では、動かす速度に関係なく抵抗が一定である(例: 錐体外路障害)鉛管、歯車現象
速度依存性: 筋トーヌス亢進では、速く動かすほど抵抗が強くなる(例: 錐体路障害)折りたたみナイフ
このように、筋トーヌスの異常は、その原因や症状によって異なる特徴を示します。
復習2
上位運動ニューロン (Upper Motor Neurons, UMNs) と下位運動ニューロン (Lower Motor Neurons, LMNs) は、運動制御に関与する神経系の異なる部分に属します。主な違いは以下の通りです:
位置と経路
上位運動ニューロン: 脳の大脳皮質(主に運動野)や脳幹にあり、脊髄や脳幹の下位運動ニューロンへ信号を送ります。脊髄の錐体路(皮質脊髄路)を通って運動命令を伝達します。
下位運動ニューロン: 脊髄の前角や脳幹の運動核にあり、そこから末梢神経を通って筋肉に直接接続し、実際の運動を引き起こします。役割
上位運動ニューロン: 運動の開始、調整、調整された動作の指示を担当。筋肉そのものに直接影響を与えるわけではなく、下位運動ニューロンを制御します。
下位運動ニューロン: 筋肉に直接信号を送り、収縮や動作を実行させます。損傷時の症状
上位運動ニューロンの損傷:
痙性麻痺(筋肉が硬直する)
バビンスキー反射(足の裏をこすると異常な反応が見られる)
筋肉の過緊張や動作のぎこちなさが生じます。
下位運動ニューロンの損傷:
弛緩性麻痺(筋肉が萎縮し、緊張がなくなる)
筋力低下、筋萎縮、筋線維束攣縮(筋肉が自発的にピクピク動く)。
このように、上位運動ニューロンは運動の全体的な制御と調整を行い、下位運動ニューロンは実際に筋肉に信号を送り、動作を実行する役割を持っています。
いや〜覚えられるたかな?