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どちら様ですか?

このお話は高校生くらいの時の話しです。
 以前の投稿で少し触れましたが、僕の部屋は外から直接入れるようになっており、高校生くらいからは友達が勝手に部屋に上がってくるなんて事も珍しくありませんでした。その日は土曜日でしたので、また友達が来るかもしれないと思い、遅くまで起きていました。テレビを見ながらベッドに横たわっていました。すると部屋の扉がトンットンッとノックする音が聞こえました。あれっ外の扉の音はしなかったのになぁと思って「どうぞ」と言いましたが、一向に扉が開かないので、おかしいな?と思い、起き上がって扉の方に向かい、扉を開けて覗きました。踊り場は半畳ほどしか無く、直ぐに階段です。踊り場にも階段にも誰も居ません。テレビも点いていますので、テレビの音か、空耳かな?と思い再びベッドの方に振り向いた時でした!
白い着物を着た人が向こう向きで正座しているのです!「わっ」と声が出てしまいました。近寄ることもできず、ただその人を見ていることしかできません。こっち向かないで!と心の中で叫びながらどうしたら出て行ってもらえるかを必死に考えています。般若心経?早九字?そもそも般若心経など最初から最後まで覚えていません。今までも幽霊は見たことがありましたが、それは、昼間や外で人間と変わらない感じで見えていたのと、自分に関わりなく存在しているだけでしたので、あまり怖いと思ったことは無かったのですが、自分の部屋に出るとなると話しは別です。何度も言ってますが、僕は見えるのですが、話しをしたり、相手の声を聞いたり出来るわけでは無く、向こうが何の目的か分かりません。女性が座っているのはベッドのすぐ横で、仕方無いのでベッドの有る方とは反対側にゆっくり歩いて行きました。それでもまだ、こっちは向かないでください!と思っていました。
それから何分経ったでしょうか、その女性はゆっくりと立ち上がったのです、ワッこっちに来たらどうしよう?!と思っているとうつむき加減で、クルッと向きを変えて扉の方に向かい歩き出しました。すり足のような歩き方で二三歩歩くと、扉に手を掛けて押したように(僕の部屋の扉は内開きです)見えたと思うとスッと消えました。帰りはったわ〜とホッとしました。
ベッドに倒れ込み、誰ねやろ??と思っていました。和服は着ていましたが、髪の毛はショートボブのような髪型で昔の人(江戸時代とか)という感じはありませんでした。
 次の日も夜になると、昨日のことが思い出されて中々寝付けません。電気を消すのが怖いので点けっぱなしで、テレビも点けっぱなしでした。それでも睡魔には勝てずウトウトし、寝落ちしたようでした。すると、又トンットンッと扉をノックする音がしたのです!又来た!ッと思いました。今度はベッドに横になったまま上半身だけ起こし、弱々しい声で「はい」と答えると扉が開きました(そう見えているだけだと思います)、いよいよ顔を見ないといけないのか〜っと思っていると、扉が音も無く閉まっていました。アレッと思い顔を横に向けると、そこに昨日と同じように正座して座っていたのです。心の中で「何かこの部屋にご用ですか?それとも僕に?」と問いかけていました。もちろん何も答えてはくれません。上半身を起こしたままも辛いので、横になりました。次の日は学校ですから。
横になって女性の方を見ると、まだ正座して座っておられます。顔を天井の方に戻し目を瞑っていると、今横にいる女性が道を歩いているのが見えてきました。たんぼの横にある少し太い畦道のような道です。道の横には田んぼに水を引く為の水路があり、何とも長閑な風景でした。ふと、見覚えがある景色だなと気付きました。僕がまだ小学生くらいの頃の、家の近くの川へ続く道でした。この時には溝はもうU字溝に変わっていて、田んぼも耕地整理され長方形の田んぼになっていましたが、浮かんできた風景は、まだ耕地整理もU字溝にもなっていない風景でした。その中をゆっくりと歩いておられるのです。
どことなく精気がないような、ボーッとしているような感じでした。
 古い神社(祠だけの神社です)が有るところを抜け、ウチの家の方に向かって歩いてこられました。誰かを探しているのかもしれないなと感じました。そうこうしているうちに寝てしまったようで、気付くと朝でした。
 昨日浮かんできた風景の神社が妙に気になり、学校で部活が終わって、帰宅する途中にその神社の前を通ることにしました、家の300mほど手前を左に曲がり、神社の方へ、軽トラしか通れないような道を通り、少し右に道なりに曲りながら走ると、その神社が左手に見えてきます。昨日浮かんだ風景とは少し違うような気もしましたが、少し丘のように盛り上がったところといい、ウチの家の方に続く道といい、やっぱりこの道をウチの方へ歩いていたんだと確信しました。神社には少しだけ坂道を上がらないといけないので、自転車を降りて、神社の方に歩いて行こうとした時でした。神社の方から小さな女の子(5歳くらい)が走って下りてきたのです。そうです、もちろん幽霊です。何か遊んでいるような感じでした。この子を探していたのかな?と思いましたが、分かるはずも無く、ここまで来たら神社にお参りしておこうとそのまま神社に向かいました。祠は2つ有りますが、大きな方から参拝し、小さな方へ、その時でした、小さな祠の後ろからさっきの女の子が覗いていました。僕のことを見ているのでは無く、誰かに見つかるのを怖がっているような仕草です、やっぱり隠れんぼして遊んでいるんだなと思いました。
自転車の方へ坂道を下って行きながら、昨日と一昨日出てきた女性はこの子の母親なのかな?と考えていました。
真相は分かりませんが、女の子は隠れんぼ中、女性はボーッと彷徨っている。何か悲しい感じで暗い気持ちになりました。
それ以降女性が部屋に現れることはありませんでした。

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