東京大学生
バイトが始まる前の時間を本屋で潰す
昔読んでいた漫画の新刊が出ている
もうどこまで読んだのかわからなくなっちゃったね
私がこの少女漫画を読み返すことなどきっとない
今思えばたいして面白いと思っていなかったような気もする
キラキラの恋
イケメンの幼馴染とか
この漫画の中みたいな
憧れの高校生活は送ってこなかった
大学生になった今
何を履き違えたかわからないけど
安い女の生活を送っています
拝啓、社会人一年目のわたし様
大学生の私のこの生活をどう思ってますか?
全部真面目に取り組んできたつもりだったけど
結局は自分に甘くなって
妥協してしまうのがわたしの悪い癖だと自覚しています
高校、大学の受験も
高いところを目指して結局中堅以下に落ち着いてしまって
私だけが悔しい思いをしていたね
周りの人は上出来だと慰めてくれたけど
本当はこんなもんじゃないんだと
若く足掻いていたことを覚えてる
こんなもんじゃないんだと言っていた割に
片道2時間半近くの通学に耐えられなくて
無理矢理お金を貯めて始めた一人暮らしを後悔していますか?
親元を離れて
学費と生活費の工面のために
血へどを吐きそうになりながらバイトを繰り返し
思い描いていた大学生にはなれず
それでもなんとなく楽しくて
大学生をやっています
ねえ
数々のヘイトを覚えながら過ごす学生生活の中で
多くの社会人や大人に
「学生はまだいい社会人はもっと大変なんだ」と一線を引かれたことを
決して忘れないでね
私だって精一杯のつもりだった
そりゃあ社会の構成員として活動する責任や仕事量は
学生なんかと比べるようなものじゃない
だけど
私は私なりに、学生を全うしようと尽力していたの
努力は足りなかったかもしれないけど
私は学生を馬鹿にするような社会人には
決してならないでください
お願いです
大手企業の男の人に連れられて
お洒落なディナーをしたり
憧れの会社の人に抱かれたり
将来なりたい人にとって都合のいい女として過ごす事は
決して楽しいことではなかったね
そもそも私は大人の男の人の都合のいい女でいられるほど大人の女ではなかったし
入りたい会社の人に抱かれたって
その会社に入れる訳ではなく
その人と同じようなスキルが身につく訳でもない事は
残念ながらわかっていました
それでいてもやめられず
全て振り切ることができなかったのは
どうしてだろう
きっとまた結局中堅以下に落ち着いて
なんとなく無難に働いて
大手に絶大なコンプレックスと憧れを抱きつつ
どんどん年をとって大人になるのが怖いからです
みんなよりも早く就活の情報を集め始めて
なるべく多くの社会人の知り合いと話をして
就活中の先輩にいろんな話を聞いて
準備にとりかかるのがいくら早くたって
抜かされちゃうんだから
私より要領がよくて頭のいい人たちに
軽々と抜かされてしまっちゃうんだと
私は知っています
どれだけ大手の男の人とご飯を重ねて
疑似恋愛みたいなことをしてみたりしても
たいしてコネクションにはならないことも
痛いほどわかったね
たまに虚しくなります
また私はパスできないのではないかと
高校も大学も、本当に望んでいたところの全然手前に落ち着いてしまった
小学校の時にやっていた水泳のスクールで
最後のバタフライのステージをやらずに辞めた
生徒会も書道部も全うせずにやめて
すぐに新しいことを始めてしまう私だから
順風満帆な就職活動とは行かないのでしょうね
拝啓社会人一年目のわたし様
ちゃんと存在しているのでしょうか
わたしは社会人になれているのでしょうか
目的の企業には入れたのでしょうか
「本当はここが良かったけど、まあこれくらいのところに受かったしいいや」
なんて
どうか口にしない未来でありますように
どれだけいびつで汚らわしかろうと
これが私でした
大学生の甘くて苦くて不味くて美味しいとこ
忘れないでください
大学生のあなたより