アリアナ・グランデに会いたい!「WICKED」ロンドン・プレミアへの道
閲覧ありがとうございます🌻
今回は、少し最近の話。初めてレッドカーペットに参加した経験談です。
ロンドンのローカルルールということで、日本基準ではマナー違反だと感じる瞬間もあるかもしれませんが、寛大な心でお付き合いください🌸
【9月某日】アリアナに会いたい
私はアリアナ・グランデ(敬称略)のファンである。
夫の仕事の関係でロンドンで日々を過ごす中で、映画「WICKED」ロンドンプレミア開催と、アリアナ参加のニュースが目に飛び込んできた。
プレミアとは、日本で言うところのキャスト登壇試写会であるが、やはりハリウッド級、その規模もケタが違う。名だたるハリウッドスターたちが世界主要都市を宣伝して回るのである。
イベント開催決定とともに、関連サイトでプレミア上映参加の抽選キャンペーンが始まる。痛恨、参加締切後に気付いた私は応募が叶わなかった。もっとも、倍率から考えるとかなり厳しい戦いだったに違いない。
と言いつつも、未練を振り切れずにSNSを徘徊する日々。夫からも再三諦めなと注意されるほどに、SNSを頻繁にチェックしていた。そんなある日、知ってしまったのだ。
海外のプレミアでは、一般人が入場可能なファンゾーンがある
人気番組「世界の果てまでイッテQ」の、出川さんがレッドカーペットでハリウッドスターを待ち受ける企画がまさにそれ。こうして、アリアナに無料で会うための闘いの火蓋が、切っておろされたのである。
【~11/15(金)】情報収集が肝
いくら一般人にもオープンといえども、当日の混乱を避けるためにある程度の秩序が存在するはず。そこで、過去の日本の先人たちが蓄積した叡智をもとに、プレミアのお作法を学ぶことにした。平たく言えば、ネットサーフィンだ。
ロンドン・プレミアの基本
一般的なプレミアの流れは概ね以下の通り。もっとも、作品の注目度が低いほど簡略化される傾向にあるようだ。
もっとも、こうした配布タイミングも、主催者や開催場所によって多少の差異がある。
リストバンドには番号が割り当てられており、数字が若いほど前列に配置されやすい。すなわち、早くリストバンドを手に入れた方が、スターを間近で見れ、セルフィやサインのチャンスに恵まれやすいようだ。
配置された場所にスターが接近してきた際、スターの名前を呼び掛け、セルフィやサインを求めることができる。これに反応があるかどうかは、各スターのファンサービスの度合いや、配置の運が大きく左右する。
会場がシークレット
ところが、ここで大きな壁が立ち塞がる。会場が一向に発表されないのだ。警備上の理由なのか、会場未定なのかは不明だが、会場情報が全く出回らないのである。
SNS上でも、ファンゾーンを狙うアリアナファンが、会場情報を求めて阿鼻叫喚。英国系のニュースサイトは、会場を予想する記事を投稿するレベルである。プレミア2週間前に公表された記事によれば、会場候補は以下の2か所とのことだった。
レスタースクエア…ロンドンプレミアと言えばここ。名だたる映画のプレミアが開催されてきた。また、プレミア応募キャンペーンの主催がレスタースクエアに居を構える映画館だったことから有力視。
ロイヤルフェスティバルホール…秋頃に映画祭が実施される会場。ウィキッド公開記念キャンペーンの一環として、ちょうどプレミア当日から「エメラルドシティへと変貌する」と公式より発表。
もっとも、確定情報のアナウンスもされず、こうした情報も予想にすぎない。いずれ発表されるだろうという期待も、日が経つごとに焦りへと変わっていく。
【11/16(土):2日前】ひとまず会場候補へ行ってみる
依然、会場は全く発表されない。SNSでもファン同士が不確定情報が共有し、時に騙し合う、さながらライアーゲーム。
このタイミングでアメリカのNYプレミアが開催されたが、絶対的権力を握るマダムが主催したプライベートイベントであったために、ファンゾーンの設置も無かったとのことで、ロンドン在住のアリアナファンの間では諦めムードも漂い始めていた。
いずれにしても2日前。通常であれば、何かしらの整理券配布は始まるはずと信じ、まずは会場候補に行ってみることを決意。
同時期のオーストラリアプレミアでは、2日間キャンプをしたファンがいたという情報も流れていたが、さすがにそこまで賭ける気にはなれない。しかし、仮に何も得られなかった場合でも、どこで並ぶのか、どこからセレブが入場するか、それらの情報を手に入れられるはず…。
朝11時、候補②のロイヤルフェスティバルホールに到着。HP上では、プレミア当日になぜか休館(一般入場を受けつけない)のアナウンスがされており、会場の本命視がされていた。
入り組んだ建物を色々探検してみたものの、行列は形成されておらず。スタッフに情報を聞いてみようかとも思ったが、教えてくれるはずもないかな、と思い断念。
続いて、徒歩で候補①のレスタースクエアへと向かう。ここでも特段行列は形成されておらず。今日の動きは無さそうだと考え、帰路へ着くのだった。
【同日夕方】キャンプ勢が現れ始めた、らしい
帰宅後、SNSをチェックしていると、有力会場候補であったロイヤルフェスティバルホールでの列形成が始まったとの情報が。当初は十数人、瞬く間に人数は増え、最終的には50人前後まで増加。
【同日夜】配布が始まった、らしい…
21時頃。お風呂でSNSを徘徊していると、ロイヤルフェスティバルホールで整理番号の配布が始まったという投稿が…!
自発的に列を形成しだしたファンに向け、運営側が、「明朝のリストバンド配布のための整理番号を付与するので、今日はひとまず帰って休んでほしい」とアナウンス、整理番号の配布が始まったそうだ。曰く、200人分の配布を開始するというのだ。全裸の私、逡巡。行くべきか、行かぬべきか…。
まず、ロイヤルフェスティバルホールはテムズ川以南に位置することもあり、治安があまりよろしくない。この時間から一人で列に並ぶことは非常に憚られる。また、情報の真偽も正直不明。どれだけの時間並ぶことになるかも不確定で、行きたくない理由を挙げればキリがない。
煮え切らない私に対して、夫が一言。
「後悔するくらいなら行こう」
この夫、大学の講義があるためプレミア当日は参加できない。アリアナにも別に興味がない。にも関わらず、この深夜から私と一緒に並んでくれると言うのだ。随分と出来た男だ。
夜22時、最大限の防寒具を着込んだうえで現地に向かう。幸いなことに、ロンドンの公共交通機関は深夜まで走っている。どれだけ並ぶことになってもどうにか帰ってくることはできるだろう。
現場では既に100人を超える行列が形成されていた。アリアナ人気、恐るべし。ひとまず最後尾に並び始め、夫と交代で最前列の様子を窺う。件のSNSが投稿されてから既に2時間が経過しようかという時刻だったが、最前列の番号は19周辺。列の人数を数えてみると100人前後であったため、200人分にはギリギリ食い込めるだろうかという緊張感。
並び始めてみると、列の進みがとにかく遅い。スタッフが、ファン1人を捌くのに2~3分はかかっていた。通常のプレミアであればリストバンドの配布を行うだけなので一瞬のはずだが、なぜか個人情報の登録を行っていた。1人のスタッフが、1枚の紙に手書きで1人ずつ個人情報の記入しているのだった。時間がかかるのも納得だ。
しかも、前列の人々も友達を呼び寄せてどんどん合流していくので、スタッフが捌く人数と、合流して追加となった人数がほぼ釣り合っており、待てども待てども列が進まないという地獄絵図を演出していた。
ロンドンの冬は厳しい。しかも、プレミアにおいては、ただただ長時間待つ。最初の2時間はまだ良かったが、ただ行列の中立ちすくむだけなので、寒さに晒され、最終的には身体の芯から震えてくる。シバリングだ。体内のカロリーを消費し体温に変える。このように苦しんでいると、前に並んでいた姉ちゃんが、「順番とっておくからよかったら歩いてくれば?」と声をかけてくれた。優しい。この女性の話を聞いてみると、プレミア経験者であるということで、色々有力な情報を得ることができた。
・明日(プレミア前日)も、今日と同じくらいの時間待つかも。主催者の手際によるけど
・身分証の照会は、プレミア当日は無いと思う
他者の優しさに癒されながら寒さに耐え忍んでいると、気付けば先頭が目と鼻の先に。姉ちゃんに、「スタッフが見やすいように、スマホのメモ帳に個人情報を表示しておくといいよ」と教えてもらい、フルネーム、電話番号、住所、生年月日を打ち込んでおく。
そして、てっぺん超えて午前3時。苦節5時間、番号208を手にしたのであった!
最初の数十人に関しては、手の甲にマジックペンで整理番号が記入されていたものの、途中からは面倒になったのだろう、口頭で「番号208ね!明日は11時30分に集合!」と言われ解放。
なお、我々が番号を取得した時点で、並び始めた当初とほぼ同量の人が行列に並んでいた。
ウォータールー駅に入った瞬間の暖かさに感動したことをよく覚えている。ロンドンの地下鉄の駅は、湿度が高く、ぬるい。
【11/17(日)昼】再行列!リストバンド引換
明朝、言い渡された11時30分より少しだけ早く到着するよう、11時にホールへ到着。ホールをエメラルドシティへと変貌させるための工事が始まっており、昨日とは反対方向に行列が伸びていた。てっきり前日の整理番号の順番で列が形成されていると思っていたが、到着順で列形成。
指定された11時30分より徐々に列が動きだし、昨日よりは順調であるように錯覚。結局この日も5時間並ぶことなるとは知る由も無い。
16時、遂にスタッフの元に到着。5人ごとに建物の中に呼び出され、番号を宣言、身分証を渡しスタッフが情報を照会し、リストバンドが手に巻かれる。昨日、丹精込めて手書き記入していたリストを、スタッフのおばちゃんが一人で照会しており、これは時間かかるね(2回目)。
ともあれ、遂に手に入れた!!
エメラルド色のリストバンドとともに、注意事項が印刷された紙が手渡される。飲食物の持込禁止、持込かばんはA4サイズまで、等が注意すべき点だろう。
なお、風呂入る時に外してもいい?とスタッフのおっちゃんに聞くと、外しちゃダメだよ、と念を押された。ここまで合計10時間、夫と共に行列に並んでいたものの、明日、夫はいない。孤独な闘いが幕を開ける。
【11/18(月)朝】イベント当日!いつから並べばいい…?
リストバンド配布時には、「明日は15時頃に来てね~」とのことだったが、もう少し早めに行きたい気持ちがあった。これは昨日のリストバンド引換において、番号が重視されなかったことに由来する。これにより、当日も早い者勝ちになりかねないことを懸念していた。
ひとまず朝10時を目標に現地に向かい、周りの人に合わせて行列に並んでみたりしたが、スタッフによって「15時にまた来てね~」と行列を蹴散らされた。
複数の心優しいアリアナファンに助けられつつ、行く当てもなく、ただひたすらにその時を待った。
【同日昼】ついに入場!襲い来る試練
列形成は突然に。13時30分頃、突然行列が出来上がった。50番ごとに呼ばれて行き入場待機列に並べるのだが、私が気が付いた時には250~300番が呼ばれており、208番の特権を失いちょっと残念。時間、アバウト過ぎないか?
近くにいるアリアナファン・ギャル集団が、お互いのコスチュームやメイクを褒め合っており、心強かった。かく言う私もアイシャドウのラメがステキね!と褒められた。照れる。
行列に沿って進んでいくと、IDチェックが実施されているではないか…!
身分証なんて、スリを警戒してそんなに持ち歩かないよ~。先に言っといて欲しい…。焦って財布やかばんを漁っていると、急に進みが遅くなる。どうやら偽造リストバンドの使用を試みた人がいたらしい。それほどまでにアリアナに会いたい人がいる証左だろう。スタッフの兄ちゃんによるとリストバンド1個が1000ポンドを超える値段で売買されているらしい。恐ろしい。運よくIDを発見し、3人のスタッフの確認を受ける。おなじみの手書きリストと、身分証を見比べる一人目。身分証と本人を見比べる二人目。なんか全体を総括する三人目。こりゃ時間かかるね(1日ぶり3回目)。
続いての関門は、荷物検査。飲食物持込禁止のため、暖かい水筒の中身(お湯)とはここでお別れ。シバリングで消費するカロリー補給のために持参したお菓子は、食い意地で途中まで食べ進めたものの、さすがに食べきることは叶わず。ジップロックに入ったグミと頭痛薬を掲げられ、「これあると入れないけどどうする?」と警備員に言われたが、ここまで来て諦められるわけない!とそれらを見捨てた。
かばんの中身チェックを終えると、続いては探知犬に荷物の匂いを嗅がせるように指示。犬に合格をもらうと、最後に棒状金属探知機で、金属を身体に仕込んでいないかチェックされる。さながら空港並みの検査体制だ。
最後に、再度リストバンドの真贋チェックが実施され、徐々にカーペットゾーンへと近づいていく。
【同日夜】イベント開始!アリアナは…?
しばらく待機後に、10人ずつ付いてこいと言われファンゾーンへと案内される。
ウィキッドのテーマに合わせ、レッドカーペットならぬグリーンカーペットが敷かれた会場へ。配置された場所は…
運よく一列目!明らかにキャストが記念撮影しそうなスポットだ。
キャストの登壇を待つ間、司会が本番に向けて会場を温める。一番大きな声を出した人に、グッズをプレゼントしてくれるようだ。イベント当日は冷たい雨。にも関わらず、ドレスやアリアナイメージの衣装を着たファンも多く、そうした寒そうなファンにTシャツはプレゼントされていた。声を張り上げればもらえるが、インスタライブなどの企画も兼ねているようでインタビューがセット。英語が不出来な私には憚られた。
17時になると、インフルエンサーをはじめ招待客が入場し、各々が記念撮影やらライブ配信をしている。どうやらイギリスでは有名なインフルエンサーもいるらしく、周りの英国系の人々は反応しているが、私にはさっぱりわからない。
17時45分。ついにイベントが開始。とは言っても、誰が入場したのかなどは、騒がしい会場にいると全く分からない。
アリアナ以外のキャストのことが頭から抜け落ちていたが、豪華な面々が私の前を通りすがる。
そしてついに…!
残念ながら、期待していた撮影スポットは、インフルエンサーに埋め尽くされてしまった。
アリアナを見れた時間はわずか3秒。しかし、確かにそこにいた。
今回は警備上の理由からか、主演の二人はサインやセルフィに応じている様子は無かった。
一方で、その他の出演キャストはカーペットの前半でかなり手厚いファンサービスを行っていた。私のエリアはカーペットの最終到達地点。キャスト陣は前半地点でファンサを行うので、後半では手を振り返してくれるくらいが限界だった。
19時、プレミアのYouTube中継が終了し、19時半にようやく会場を脱出し、帰路につくことができた。
総括
アリアナ人気の影響で、かなり厳重な警備とリストバンド管理が実施されていた。3日間、各5時間ずつの待機、スタッフによる手書きの情報記入と、手書きノートをもとにした情報照会など、非効率さが目立つオペレーションではあった。
一方で、この形式だからこそ、私のような庶民がアリアナを見ることができた。事前抽選制では間違いなく当たらない。長時間の待機を代償に、イベント参加権を確実に入手することができ、さらに転売もある程度防ぐ点、この手法は庶民に優しかったと感じる。
かなりの非効率と言えども、スタッフの方々は3日間ぶっ通しでリストバンドを配布し続けており、当初は200と噂されていたバンドも最終的には1000近い数が配布されたらしい。本当にお疲れ様です。
残念ながらアリアナは一目しか見ることができなかったが、他のキャストは存分に堪能することができた。やはり呼びかけないことには、ファンサービスにも応じてもらえない。事前に参加キャストの愛称や顔写真を頭に叩き込んでおく必要があると感じた。また、監督からサインをもらえそうな瞬間があったが、一瞬の逡巡でチャンスを逃してしまったので、瞬間的に恥を捨てる覚悟も必要だ。
日本でただ日常を過ごすだけでは、アリアナを一目見ることも叶わなかったはず。アリアナがこの世に生きていることを、間近で直接確認できただけで儲けものだ。