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この仕事をする為に東京から此処へ移り住んで34年が過ぎた。未だに地元の事はよくわからない。知ろうとしていないせいだろう。自分の仕事以外の畑の事も知らなければ、と参考資料の為もありこれまで様々な本は読んできた。元々読むことが嫌いではないので、若い頃は一部屋に一冊づつ読んでいる本があった。今はそれ程ではないが.....。
何年ぶりだろう?ある「漫画」を今読み終えた。コミックと言っても良いのだが、やはり私のような年代からすると「漫画」と言った方が心にしっくりくる。
「岳」という作品で著者は石塚真一。単行本で18冊。ほぼ一気に読了。たまたま身近な話題で登山の話になり、あぁそういえば昔新田次郎の山岳小説を読み漁ったなぁと思い出し、色々と情報を探っていたらこの漫画に出会ったというのが始まりだ。
この作品が発表されたのはかれこれ10年ちょっと前になるのだろうか。コミック雑誌連載がスタートだ。主人公島崎三歩と彼を取り巻く人間群像のストーリー。「山人」特有の見方考え方が他人に対して影響を及ぼしてゆく。常に前向きで後ろを振り返らない、自己のスタンスを守り他人にそれを強制しない、という点に共感の様なものを感じた。
笑顔を絶やさず、苦しさ不安を乗り越えてゆく。彼と接した人々はやがて彼にいかなる形にせよ感化されてゆく。ネタバレになるが、終盤彼は山で死んでゆく。出来過ぎのストーリーと言えばそれまでなのだが、この作品を読みながら思い出した人物がいる。「男はつらいよ」の車寅次郎だ。一般世間からちょっとハズレタところに位置する。他人を良きにせよ悪しきにせよ巻き込む。さいごは一人死んでゆく。
車寅次郎も島崎三歩も実在の人物であれば、相当に周囲は気疲れする対象ではないかと思う。実生活において、という事だが。あくまでもフィクションであるがゆえに許せるのだが。
これら主人公たちが活躍していた時代と今のコロナ禍の日々かつどう見ても普通じゃないヒト?が多くなった現代。どちらの方が人間にとってより生活が潤っていたのだろうかと考えてしまった。
いずれにせよ楽しませてもらった「岳」だった。いつまたこの様な作品と巡り合えるだろう。
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