ポオ、谷崎、乱歩、三島。人工楽園を巡る文学の系譜。
朝、何気なく青空文庫を眺めていたところ、谷崎潤一郎の「黄金の死」が収録されていたの読み返してみました。
谷崎のほかの『春琴抄』だとか『痴人の愛』だとか『細雪』といった有名な作品と比べるとあまり名を知られた小説とはいえないかもしれませんが、個人的にとても好きな短編です。大正期の谷崎の代表作ですね。
ちなみにぼくが偏愛する「天鵞絨の夢」なども大正期谷崎の作品です。これは異様に妖しくも倒錯した世界を活写した大傑作(ぼく評価)なのですが――あたりまえのように未完に終わっています。
全十作の妖美な短編を数珠繋ぎにした壮麗な小説になるはずだったのだけれど、企画倒れに終わっていて、完成したのはわずか三篇、で、特に面白いのは初めの二編という始末。
どうも谷崎という人はその天才的な文章力と比較して、物語作家としての構成力にはそれほど恵まれていなかったと思しく、そのせいなのか、どうか、この手のテクニカルな小説を書かせるともうひとつ完成度に欠けるところがあるような気がします。
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