第34話 『怪談短歌』(BJ・お題 『歌』)
大闇の降る日を待って放たれし妖し楽しの宴の詞
愛してるただ君の肌が冷たいだけ腐乱の臭いも気にはならない
一生に奪う命は同じだけと虫も殺さぬ医者が言ってる
僕は君を守ろうとしたか殺そうとしたかそれさえ忘れてもいて
毒を盛り娘殺せば火葬場で誰かがなぜか死んだとかいう
隣村に都市伝説を偽装する我らが静かに生きてくために
赤い靴履いていたよねいや履いていなかったんだ赤かったけど
藁人形たくさん作りすぎた日に国会通る例の法案
二百十二百十一二百十二二百十三その次はない
緑色の子らがこちらを向いていて耳打ちしあう「殺す」が聞こえる
娘五つ戯れの舎に群れおれば呪いの術の二三も覚え
迷い子なら名前をどうぞこの欄に 迷わず成仏させますからね
壊された家の跡地の黒シート草突き破る土地の一角
今は息をすることもなく鼓動もなく冷たくなった真実の塚
生きていればいいこともあるさと言った口で「死もいいかもねと」低く囁く
霊よりも人形よりも骸よりもこわいものってなああんだあ?
黒くなったモニターに浮かぶその顔が三十年後のあなただという