ホラー映画で、後ろ振り向くやつはだいだい死ぬ。
私はもともと夜型で、朝が弱い。
朝よりも夜の方が元気だし、世の中は朝型の人間で回りすぎていると思う。
当時、中学生の私は朝起きられなくて悩んでいた。
その日も、明日の起床時間に母親に怒られないように
心を無にして、布団の中で寝ようとしていた。
それでも、なかなか寝られない。
少しでも寝やすいように、横向きの体勢で寝ることにした。
目を閉じて、睡魔を待つことにした。
「Aちゃん、Aちゃん、、、」
後ろから名前を呼ばれた。
明るく、遊びに誘うような声だった。
小学生時代の友人、Hちゃんの声だった。
驚いて振り返れなかった。
Hちゃんが、深夜に私の家にいるはずが無い。
Hちゃんは生きているし、同じ中学校に通っている。
話はするが、仲良いとも言えないそんな関係の友達だ。
なんで、Hちゃんの声で?多分聞き間違えだ。
居るはずがない。無視することに決めた。
「Aちゃん、Aちゃん、、、」
後ろから、K君の声がした。
明るい声とは正反対に、空気が凍った。
私は、固まったまま動けなくなった。
何となく、振り返ってはいけない気がした。
K君も私と同じ小学校出身で同じ中学校に通っている。
もちろん生きている。
そんなに仲も良くない、話もあんまりしない。
なぜ、微妙な関係の2人の声で名前を呼ばれたのか?
Hちゃんでダメだったから、声をK君に変えたのか?
体の中が、恐怖と疑問でいっぱいになった。
1時間ほど横向きのままで固まっていたが、そのあとは何も起こらなかった。
時計は深夜2時を指していた。