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なんのために生きるのか
憧れが止まなかった時期がある。
テレビやYouTubeなんかで、夢を叶えたような紹介をされている人を見ると、羨ましい氣持ちになったり、いたたまれない氣持ちになったりすることが多かった。
25歳までに漫画家デビューすると決めていた私は、
「自分も早く夢を叶えなければ」と、しきりに焦っていたような氣がする。
漫画家になりたかった。
漫画で何を描くかはさておき、兎に角漫画家になりたかった。
20代前半の頃の自分は、夢の外側に憧れが止まなかった。
前作『スポットライトを浴びたくて……』で描いたのは、何者かになりたい自分である。
まるでひと昔前の自分のように、兎に角音楽でなんとかなりたい主人公を描いた。
音楽をやりたいけれど一歩踏み出せない、そんな男の子のお話。
なりたいものについては描いたが、
やりたいことについては触れていない。
彼には本当にやりたい音楽があって、それに向かって突き進んだのか、はたまた、音楽で飯が食えればやる音楽はなんでもよかったのか、
その中身については触れていないのである。
まぁ、私の中には大体の答えがあるのだが。
当作、本編は無料公開だが、書籍版でだけ楽しめるもう一つのエピソードに、その答えの断片を記した。明確な描写はないが、汲み取ってくれる人にはきっと伝わることだろう。彼は何故涙を流したのか、と言ったところである。
「なんのためにそれをやるのか」
そこまで描くのが今作『いいねなんかがあるせいで、』
既に
ーなんのために生きるのかを問う漫画ー
と銘打ってしまっているから、隠すことでもない。
此度の主人公がもがく様は、私がもがいた様である。
『スポットライトを浴びたくて……』で描いた私よりも、少し先の私の話。
それももう、何年か前の私の話であるのだが。
人生を綴っていく。
私の人生を創作にして。
少しでも楽しんでいただけるように、
少しでも何かを感じていただけるように、
誰かの心に残るものを作りたい。
私が私を精一杯生きた証を、誰かの心の隅にでも、そっと置かせてもらいたいのである。
それだけで私は、私のこのどうしようもない人生を肯定することができるのだ。
誰かの心に残るよう、新作も遮二無二描いていく。
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【デビュー作】
『スポットライトを浴びたくて……』
https://kaichinomangablog.com/spot-light/
【新作漫画】
『いいねなんかがあるせいで、』
https://kaichinomangablog.com/badlikebutton/
【制作クラウドファンディングの詳細】
https://kaichinomangablog.com/crowdfunding-2/
【制作支援の受付先】
https://kaichiro-ishii.stores.jp/