桑山千雪『好き、っていうのはね』/「好き」と向き合うアルストロメリア
「好き」がテーマのアルストロメリア
アイドルマスターシャイニーカラーズの三人組ユニット・アルストロメリアは「好き」から生まれる色々な心の動き を見せてくれる。
「好き」が与える 苦しみも 喜びも 知った上で、それすら丸ごと好きだ と肯定する。そんな三人の集大成のようなカード 『好き、っていうのはね』を語りたい。(これが恒常SR?)
まずはWINGシナリオを振り返り、改めて彼女たちと「好き」の関係をまとめてみようと思う。
以下、3人のプロデュース シナリオ・シナリオ イベント 及び SRカード『好き、っていうのはね』のネタバレを含みます。
SSRカードには(直接は)触れないので、どれもすぐお読みになれるものばかりかと思います。もしまだ読まれていない方はこんな文より本編を楽しまれて下さい。めっちゃ良いので…。
長文です。自分なりにアルスト全体を語ってるので、(所々怪しがりながら)楽しんでいただけると幸いです。
大崎甜花 新しい「好き」との出会い
なーちゃんが好き・デビ太郎が好き・ゲームをするのが好き・ゴロゴロするのが好き と甜花には立派に好きなものがある。が、甘奈と比べてしまうのか自分は好きな物がない/頑張れていない と感じ、自分を好きになれない。
WINGオーディションを駆け上がっていく中で、他の誰でもない甜花のステージを待ってくれるファンの存在を知る。アイドルの仕事・事務所の仲間・ファン、いろんな新しい「好き」に出会う。
ちゃんと頑張れている自分に気付き、頑張る自分のことは勿論、自分そのもののことも「好き」になっていく。(WING〆)
甜花はWINGに限らず 、新しい「好き」との出会いを描いたエピソードが多い。
小さな出会いで成長していく姿を描きながら、ちょっとだらしない自分を愛することも”成長”として描く眼差しが…良い…。
大崎甘奈 「好き」から来る不安
甜花大好き、甜花を皆に知ってもらうために、とアイドルを始めた甘奈。持ち前の能力の高さでアイドル業をこなしていくが、甜花は上手くやれているのかな、と不安げ。
しかし、アイドルになって進んでいく甜花を見て、本当に不安だったのは自分が甜花に置いて行かれる気がするから だったのだ と気付く。
Pとの対話もあり、甜花・千雪との切磋琢磨を続け…
二人とも変わっていくけれど、それでも二人の間の「好き」は変わらないと知る。また自分自身、心の底からアイドルの仕事が好きだと自覚する。 大好きだけどライバル、いいね…。(WING〆)
ところで甘奈と言えば、Pへ寄せる思いが取り沙汰 されることが多い。Pの健康を気遣ったり、大好きなPとの離別を不安視する姿がよく描かれる。(凛世や結華も大概だけど、ちょっと不安の方向性が違うよね)
Morningコミュ⑪
(pSSR使っていいなら無数に 良質な心配シーン があるけど…)
これも「好き」から来る不安を描いたものだと言えるだろう。
「好き」って大変なんです。
Team Stellaとして初のソロ曲を出した甘奈 スタイルすげぇ…
甘奈のソロ曲『sweet memories』。当初Pラブソングだ!と話題になったが、ステラチームのリリースイベントで「どうやら甜花宛ての歌のようだ」と判明したらしく、さらにひと騒ぎ 生んでいた。
甜花宛てか~ と思って聞き直してみたが、この曲、誰宛てなのかが特定できないような歌詞になっている。恐らく意図的に。
甜花宛て でもあるのは間違いないが、特定の一人へ向けた歌でなく、出会ってきたチームメンバー・事務所の人・ファン・アイドル活動、全部ひっくるめた「好き」の気持ちを歌った曲 というのが一番まっすぐな解釈だろう。(勿論その中にはPへのでっかい気持ちも含まれているでしょう)
どの「好き」も真実の愛の形の一つとして描いてくれるのが、シャニマスのいいところですね。
桑山千雪 どの「好き」も諦めない
元々、大好きな雑貨屋勤務の合間を縫ってアイドル活動を始めた千雪。
当初はシャニP側が 無理を言ってスカウトしたから、アイドル卒業もやむ無しか…とあきらめムードだったが、千雪はアイドルに専念する と決断する。
雑貨の道は諦めるのかと思いきや―――アイドルとして雑貨店員の経験も活かす方針を取る。この道なら、これまで好きになってきたもの全てがお互いを輝かせ合ってくれる と確信する。(WING〆)
千雪は これまでの「好き」来歴 がいろいろ明かされている。
高校時代の美術部、専門生時代の服飾デザイン、雑貨、アプリコット。好きになってきたもの全てと向かい合って、時に大好きなものに傷つけられて、それでも好きを諦めない。
ゲーム開始当初は最年長。普通は「お姉さんキャラ」にしてしまいたくなる千雪を、一番「好き」に真っすぐな少女として描いてくれてありがとう。
千雪の「好き」が生む強い気持ち・衝突を描いた作品として「薄桃色にこんがらがって」がよく挙げられるが、GRADやLP、アンカーボルトソング、SSR『ハッピー・アイ・スクリーム』なども千雪の激情が見え隠れしていて大変良い。
薄桃色では甘奈と「好き」がぶつかってしまうが、GRADは自分自身との「好き」の衝突なので、見ようによってはこちらの方が酷なような…。
また、(懐疑派も一定数居るようですが)千雪も『Pラブ勢』に数えられる一人だ。今ここで感じる「好き」も大切にする姿が描かれていて、これまた大変良い。
「好き」に対して本当に丁寧なんです。多分僕の担当はずっと千雪です。
「好き、っていうのはね」
WING後も感謝祭、薄桃色、GRAD、LP、アンカーボルトソング…挙げればきりがない程、アルストロメリアは色んな「好き」に向き合い、苦しめられ、そして「好き」に救われてきたユニットだ。
そんな中、2021/3/22に追加された桑山千雪のsSRのタイトルが「好き、っていうのはね」だ。
桑山千雪sSR『好き、っていうのはね』(21/3/22)
もうアルストロメリアにとって最終回みたいなタイトル。こんなタイトルを恒常SRで出しちゃうのヤバスギ…。
(もっと言えばこんなレベルのタイトル出しまくって、ネタが枯れる気配がないのがヤバいですね)
短いコミュながら、タイトルから期待される以上の内容だった。
具体的には1クールのアニメ作るなら、これを最終話にして欲しいくらいの良さ。
2個目のコミュ、ラジオから『ハピリリ』が流れながら大崎姉妹が会話してるシーンで、画面下1/4に流れるクレジットタイトルを幻視した。
BGMと会話の音量比が 完全に「本編ラストにEDかぶせて流すやつ」だ。
カードの話始める前に無限に話しちゃいそうなので、そろそろコミュの内容に入ろう。
1つ目のコミュ:「そっと触れて、柔らかい熱」
冒頭シーン。シャニのライターはオタクの純情で遊ぶのが好き。
チンチラとかモルモットなんかの齧歯類とアルストロメリア三人の撮影シーンから始まる。千雪は動物たちを掴んだり抱えたりするのが苦手な様子。
子供あやすのとか上手で、何でも出来ちゃいそうな千雪さんも
こういう気持ちわかってくれるんだ…
その後撮影終わりの喫茶店での会話が始まり、好きだけど、触れ方の分からなかった小動物たちの話から、「好き」って難しいよね というものに話題が移る。
あるんです…
ワルいけど好き・怖いけど好き・嫌いなのに好き といろんな「好き」が登場するが、ここでいう「好き」は 自分の感じたいろんな気持ちをそのまま肯定してあげる ということだろう。
身近な「好き」から出発しているが、多分、生きることそのものの話をしている。
2つ目のコミュ:「空飛ぶ波は、今宵の揺りかご」
あ~…タイトルからしてもう千雪節(ちゆきぶし) が効いとるばい…
これは濃厚な千雪の「好き」論が聞けるだろう、と腹くくって見たんですが、それでも覚悟が足りてなかったみたい。凄い刺さった。
コミュは大崎姉妹の家での会話から始まり、千雪のソロラジオ「パジャマ・ジャム・ジャミング」の放送が開始すると、場面はラジオの撮影ブースに移る。
毎週千雪のソロラジオが流れる世界ズルすぎんだよー!
ラジオの再現企画って難しいんですかね
ライターが書き上げた台本30分くらいで
その夜千雪が読んだのは、サイダーの泡(17)さんから届いたお便り。
こんばんは、千雪さん
私は高校2年の女の子です
可愛い雑貨や絵本が大好きで、集めるのも大好きです
でも時々、私は可愛いものが好きな自分が
好きなだけ、なんじゃないかと思うんです
最初は家族に冗談半分に言われたことなんですけど、
とっさに言い返せなかったんです
こんな悩み、なかなか友達にも言えなくって……
千雪さんは、どう思いますか?
……私と同じこと、考えたりしませんでしたか?
このお便り対して、千雪はまず「おめでとう」 と返す。
好きになることって、まずは祝われるべきことなんだな。そうだよな…。
千雪はさらに、何かを好きになることの難しさ・何かを好きになれば、些細なことにショックを受けたりすること・想像以上のショックを受けた自分自身にも揺れてしまうこと…そんな「好き」に付随する苦しみ についての話をする。
そこまでひっくるめて「ほんとに可愛いものが、好きなんだと思う」から、好きになれるものを見つけられた自分をほめてあげて欲しい と続け、
次のお便りとの合間に『ハピリリ』が流される。
プレイヤー目線だと千雪の藻掻きを見れますが、
あっちの世界のファンには中々みられない姿ですからね。
「千雪さんもこの悩みを分かってくれるのか」って嬉しかっただろうな…。
その後、再びシーンが移って千雪の独白が始まる(Cパート)。
シャニPでも見れない逡巡見せて貰って良いの?何視点?
こっちの世界に生まれてよかったのかもしれない。
色んな「好き」を経由してアイドルにたどり着いた千雪だからこそ言える言葉。「好き」って その時は苦しかったりするんですけど
後から振り返ってこう思えるなら、悪くない。
「好き」に一番真っすぐで 誰よりも少女な千雪ですが、このシーンを見ると、やっぱりアルストロメリア3人組のお姉さんなんだな とも感じる。
新事実が判明する様な派手なコミュではないが、アルストロメリアが積み重ねてきたことを誠実に言葉にしたような、素敵なコミュだった。
このカードの後に実装されたアルストロメリアの新シナリオ「アンカーボルトソング」でも、「好き」と変化 に関する甘奈らしい・アルストロメリアらしい成長を見せてくれた三人。
真っすぐ「好き」と向き合うアルストロメリアに、いつも救われています。
シャニマスを好きになってよかった
「好き」の与えてくれる苦しみと幸せに向き合い続けてきたアルストロメリア・桑山千雪だからこそ、短いコミュでズシンと来るものになっているんだと思う。
どんなものであれ、趣味は何かを失いながら続けている感覚があるものだ。何かを好きになることは大変だし、何かを好きで居続けるためには意外と多くの努力が必要である。
何かを好きになることの不安。ちゃんと好きで居られているかの不安。「好き」の与える祝福とセットでついてくる呪い をどうにかする為に、布教してみたり、偉そうな文章を書いてみたり、考察を読んでみたり。
そうやって「好き」をメンテナンスし続け、自分の「好き」の気持ちを必死で肯定しようとする。
祈るように「好き」を続ける中、どんなに好きになろうとも あちら側から 微笑み掛けてくれるなんてことは、まず起こらない。
そんな諦めもお見通しの千雪さんに、醜い「好き」まで丸ごと肯定して貰えたように感じた。シャニマスを好きになってよかった。
SR一枚でどんだけ語るんだよ ってな文章量ですね。
(5000文字近くあります 我ながらドン引きです)
でも、どんなに言葉を尽くしても書ききれない位に、
アルストロメリアの大好きな所が詰まったエピソードです。
私心まみれの長文、最後までお付き合い頂きありがとうございました。
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