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美味しいサクラ/2023.03.10

この日の気温はすごく過ごしやすい気温だった。
出勤中、風が心地良くて、会社に行かないでどこかに出掛けたいと思った。

昼休みは会社から徒歩5分にあるコーヒーショップで過ごしている。
社内には休憩スペースがあるが、朝から夕方まで一歩も外に出ないなんて、気持ちがしんどくなってしまう。
だから休憩時間は外に出て、日光を浴びて、深呼吸をしている。

12時になると、あたしは席を立ち、会社の外に出た。
今日はコーヒーショップに行く前に、反対方向にある銀行に行かなければならなかった。

銀行で用事を済まして、今からコーヒーショップに行っても席は満席。
あと45分、どこで過ごそうか。

銀行を出て左に行けば、いつも行くコーヒーショップと本屋がある。
右に行けば……何があるんだ?
行ってみようかな。
小さな好奇心に従い、あたしは右に進んでみることにした。

10分くらい歩くと、お堀があった。
案内看板には、千鳥ヶ淵と書いてあった。
お堀のすぐそばにある歩道に入ると、右側に桜の木が並んで咲いていた。

まだ桜の開花宣言なんて出てないんじゃ?、と思い、桜の木の近くにある看板を見ると、「修善寺寒桜」と書いてあった。

修善寺寒桜

少し葉が生えていて、地面には花や花びらが落ちていた。
ベンチに落ちていた寒桜の花を拾って肘掛けに飾って座り、歩いている途中で寄ったコンビニで買ったご飯を食べた。

小さなお花屋さん

食べていると、目の前でひらひらと花びらが降ってきた。
すぐ近くで、外国人観光客が寒桜の花をスマホで写真を撮っていた。

ご飯を食べ終えて、あたしも寒桜の写真を撮った。
撮っていると、スズメが寒桜の木にとまっているのを見つけた。
そのスズメは寒桜の花を啄んでいた。
花の蜜を吸っているのだろうか。

お食事中のスズメ

寒桜の花はスズメに啄まれると、ポロッと地面に落ちていった。
ベンチの肘掛けに飾ったあの綺麗に落ちていた花たちは、スズメの食事の跡だったのかもしれない。

ある寒桜の木には、10匹くらいのスズメが群がっていた。
最初は寒桜を綺麗って思っていたが、今はスズメにとって美味なものに変換されそうだ。

スズメたちの食事を見ていたら、そろそろ会社に戻らないといけない時間になっていた。
あたしはスズメたちの食事を邪魔しないように小走りで、その場をあとにした。

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卯ノ花櫂
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