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MINISFORUM Venus UM790Proの購入報告&選んだ理由をつらつらと…

完全な私事ではあるが、この度某人気オープンチャットの管理者を勤め上げた自分へのささやかなご褒美として、パソコンを新調した。
選んだのは、ミニパソコン業界最大手のMINISFORUMブランドから発売されている、業界最強クラスのCPU・iGPU性能の呼び声高いVenus UM790Pro。
新パソコンを手にしたハイテンションそのままに、これを選んだ理由なんかをつらつらと書いていく。
なお、堅苦しい印象を避けて、自分の正直な気持ちを表現しやすいよう、本記事から語句を常体に変更することにする。


ずっと気になっていたミニパソコンの世界

そもそもミニパソコンとは何か ―。
要は端的に言ってしまえば、“ボディーサイズを超超コンパクトにしたデスクトップパソコン”ってこと。
デスクトップパソコンのサイズはさまざまあったが、家電量販店などでも身近に取り扱われている一般的なデスクトップパソコンは、特定の場所への据え置きを想定した大きな箱型だ。
どんな省スペースタイプの製品でも、Wi-Fiルーターなんかと比較したらはるかに大きく、それこそヒョイと手に乗せるなんて芸当は不可能なサイズ感だ。

しかしながら、ここ数年の間に、ボディーサイズを極限まで小型化したデスクトップパソコンが、「キューブ型ミニパソコン」という新ジャンルとして確立され、ニッチな商品開発が得意な例の対岸の大国が本格的に開発に取り組んでいる。
世に産声を上げたばかりの頃のミニパソコンは、CPU負荷が掛かる作業をやろうものなら筐体 [きょうたい]はアツアツチンチン、ファンも全開、もはや“掃除機?”と言わんばかりの爆音を放つ代物で、ガジェットオタクが面白半分で買う需要がせいぜい、あれを普段使いで使い込んでいこうなどという気にはとてもなれなかった。

ミニパソコンの内部構造
UM790Proの宣伝文句

そこから時は流れ、CPUの低電力化・低発熱化が進み、ノートパソコンなどのモバイル端末の性能が急速に向上していく中で、自分としてはミニパソコンの性能向上にも大きな関心を寄せていた。
なんでも、最近のミニパソコンメーカーの宣伝によると、

・余裕で手に乗る超コンパクトサイズ
・4K60Hzディスプレイ3・4枚挿しのマルチモニター環境対応
・dGPUなしでEsportsタイトルが60fps越えでプレイ可能

などといった、黎明期 [れいめいき]のミニパソコンを知っている人間からしたら、にわかには信じ難いような文言が並ぶ。
しかも、YouTuberや某大手IT雑誌に本格的に取り上げられ、かなり高い評価を受けていた。
まあ、その手の情報源は無償で製品提供を受けている手前、あんまりマイナスなことは言えない事情はあるとは思うが、それでもパソコンとして重要な処理性能や使い勝手の評価は押し並べて良い

そんな下馬評を耳にしたら、そりゃあ自分でも触っておきたくなるのがIT技術者 (と言うと聞こえが良いが、正体はただのオタク)のサガ。
ただ、自分の周りには、まだミニパソコンを持っている人が誰もおらず、誰かのものを触らせてもらえる機会もなかったため、今回ちょうど良い機会だと考え、自ら私財で購入することにした。
まあ、自分は他にもパソコンを所有しているから、“万が一まともに使えなくても仕事などへの支障は出ない”という保険があるからこそ、興味半分でこんな変わり種パソコンを買う気になれたという側面も大きいことは一応断っておく。

UM790Pro
UM790Proの外観

どうしてUM790Proを選んだのか?

ミニパソコンを製造しているメーカーはまだ少なく、一般人にも名の知れたメーカーは今のところ参入していない。
唯一、CPUメーカーの親玉 ―Intelが、自らのCPUを搭載したNext Unit of Computing (NUC)というミニパソコンの開発を手掛けていたが、厳しい経営状況を理由に今年7月、事業をASUSに投げてしまった。

しかしながら、ミニパソコンの変遷全体で見ると、参入メーカーはわずかながら確実に増加しており、各社こぞって新世代パーツで組み上げたミニパソコンを続々ラインナップしてきている。
そんな中で、自分がなぜMINISFORUM Venus UM790Proを選んだのか?
大きな理由は3つある
自作パソコンを手掛けるようなガチ系オタクに既製品パソコンを選ばせると、どんなところに着眼するのかを知っていただき、ぜひ失笑してもらいたい(笑)

UM790Proを選んだ理由1. “良い中華”の実力を確かめたい

まず大前提として、今一般人がよく知っているパソコンブランドの1/3は中国資本だ。
貧乏人御用達のLenovo (レノボ)は、本社が香港というバリバリの中国メーカー、最近密林でやたらゴリ押ししてくるHUAWEI (ファーウェイ)も、アメリカに目の敵にされてるスマホメーカーとしてすっかりおなじみの中国メーカーだ。
そして、ジャパニーズブランドとして多くの人が当たり前に日本メーカーだと思っているNECと富士通は、実はLenovoが株式の過半数を持つ中国資本に成り下がった

Lenovoの品質がゴミなのは、我々のような、この道のプロにとっては周知の事実で、機会があればnoteでも取り上げてこき下ろそうと思っているが、Lenovo以外の中国メーカーのパソコンは、果たして本当に悪いと言い切れるだろうか?
前述のHUAWEIだって、パソコンの分野でこそ、まだ経験値が浅くて設計が未成熟な故のマイナスな声も挙がっているが、スマートフォンの分野ではAppleと双璧だった。
自分は、ハイコスパでお馴染みの中国メーカー ―Xiaomiのスマホを使っていて、使い勝手も品質も非常に高く評価している。
スマートフォンは、発熱、電力、スペースにおいて、パソコンよりも格段に厳しい制約が課せられるIT機器だが、中国メーカーの品質レベルには確かに目を見張るものがあり、だからこそアメリカを警戒させているのだろう。

中国の国旗

中国メーカーが作った数々の精密機器を触ってきた自分からすると、「他国と同等以上のグローバルレベルの品質の製品を (他国よりも安く)作るメーカー」と、「国内の貧困層や発展途上国相手と割り切って粗悪な品質の製品をあえて作るメーカー」との2つが混在している国、それが中国だと考える。
中国製=粗悪と言ってはばからない人は、おそらく後者のモノを買ったうえでそういう結論に至ってるのだろう。
確かに、人口が多い中国では貧富の差も激しく、品質は二の次で、とにかく低価格を重視した製品の需要はかなりあるだろうし、発展途上国に自国製品を普及させて発言力を高めていく外交戦略でも重要な役割を担っているだけに、そういった“悪い中華”が中国メーカーの持つ一方の顔であることは否定しない。

だが、前者もきちんと存在していることは、決して忘れてはならない。
中国メーカーの製品は今や、精密機器の部品レベルにまで幅広く採用されており、日本をはじめとする多くの国の人命を救い、経済活動を支える屋台骨である。
そういった、中国メーカーの持つもう一方の“良い中華“という顔があることを認め、パソコンにおける良い中華の現在地を知りたいと思うのは自然のことだろう。

MINISFORUMは、深センがルーツの純然たる中国メーカー。
企画、開発、製造、販売の全てを一貫して担うこだわりを見せるミニパソコンメーカーであり、品質は国内外で高く評価されているらしい。
今回、UM790Proを買うことで、パソコンとしての純粋な品質から、海外メーカーなら誰しもが懸念するであろうサポート体制の質までを総合的に観察し、良い中華の実力を確かめたいと考えた。

UM790Proを選んだ理由2. Ryzen 9 7940HSを搭載している

パソコンの処理性能を決定するのはCPUだ。
エンジン車と同じ水冷でキンキンに冷やす冷却システムをわざわざ組み上げてまでCPU性能にこだわってきた自分からすれば、高性能なCPUを積んでいないパソコンには、興味なんて全くそそられない。
しかし、今回のUM790Proは、AMD Ryzenシリーズの最上位グレードであるRyzen 9の、しかも記事制作時点で最新の7000シリーズである「Ryzen 9 7940HS」を搭載しているという。

自作erみたいなCPU性能にこだわる界隈の人ほど、あまりなじみがないCPUだと思うので解説しておきたいのだが、7940HSはノートパソコンなどのモバイル機器に使われるGPU統合CPU、いわゆる「AMD APU」(Accelerated Processing Unit)のひとつだ。
Ryzen 7000シリーズは、シリーズ名の序列と設計世代の新旧とが完全にリンクしない難解なラインナップ展開で、何とか理解しようとAMDのプレスリリースを何度も読み返していたら、いつの間にか日が昇っていた… (ガチの話です)

Ryzen 9 7940HS

7940HSには色々な特徴があるのだが、全部書いたらキリがないので、とにかく押さえておきたいのは、

  1. 7000シリーズのAPUのうち、記事制作時点で最新世代のCPUアーキテクチャであるZen 4で設計されているのは、「7○45」または「7○40」の型番を持つCPUのみである。
    ※ ○にはグレードを示す数字が入る

  2. 7○45は、7000シリーズの「デスクトップパソコン用」の (同列グレードの)CPUを、ヒートスプレッダをただ外してメインボードに直付けしたようなCPUであり、完全な新設計は7○40のみである。

  3. 7○40は7000シリーズの中で唯一、記事制作時点で最新のGPUアーキテクチャである「RDNA 3」で設計されたiGPUを搭載している。

の3点。
まとめると、“Zen 4設計且つRDNA 3のiGPUを搭載した、7000シリーズ唯一の新設計の最強CPU”ということになる。

自分としては、CPU性能はさることながら、RDNA 3のiGPU性能がいかほどなのかが最大の関心事だ。
AMDの発表を見ると、RDNA 3は前世代のRDNA 2と比較して、1度の命令で複数コアで同じ処理を同時に並列処理する仕組みが強化されると共に、レイトレーシングアクセラレータも進化した演算ユニットを贅沢に12基もてんこ盛りにしたことで、なんとディスクリートのNVIDIA GeForce GTX 1650 Laptopに肉薄する性能を手にしたという
もしそれが本当なら、ミドルクラスのゲームならdGPUなしでもそこそこプレイができてしまう時代が到来したことを意味しており、多く一般ユーザーにとっても無関係ではない革新と言えるだろう。

とはいえ、7940HSのようなハイエンドCPUはだいたい、高価格帯のゲーミングノートのみに搭載され、それらは高性能なdGPUとセットなのが常。
しかし、UM790ProはdGPUが搭載されていないので、RDNA 3のiGPUが持つ性能の真価を純粋に確かめることができる貴重な存在だ。
ゲーム用のハンドヘルドのWindowsマシンの市場が着実に拡大している近況を見る限り、iGPUの性能向上はメーカーが垂れる絵空事では片づけられなそうだけに、今後のGPU分野の趨勢 [すうせい]を占うAPUに心が躍る。

ゲームのFPS値
メーカーはNVIDIA GeForce GTX 1650 Laptopに肉薄するというが…

UM790Proを選んだ理由3. 冷却性能をアピールしている

ミニパソコンは筐体が極めて小さく、コンパクトだ。
これは、冷却の面でマイナス要素なのは言うまでもない。
ATXサイズやmicroATXサイズの、いわゆる巷でよく見かけるデスクトップパソコンは、パーツ間の隙間が大きく、内部は比較的空間の余裕がある設計になっており、これによって熱がこもることを防いでいる

一方、ミニパソコンはサイズ的な制約から、狭い内部スペースに創意工夫でなんとか必要パーツを詰めこんでいるため、熱がこもりやすいのは想像に難くない。
見た目は、いかにも“詰まってる”って感じのギチギチ感が個人的には非常に好きなのだが、冷却力の面で見ればマイナスなのは明白。
しかも最近の高性能なパーツ、例えばDDR5メモリやPCIe Gen4のM.2 SSDなどは、前世代のものよりも発熱がすごいんだから、ミニパソコンなんかに使ったら、たとえ掃除機並みの爆音ファンを忍んでもサーマルスロットリングを発動してしまわないのか、自分の中で非常に謎だった。

しかしながら、MINISFORUMの公式サイトにあるUM790Proの商品紹介を見ると、あの冷却力最強の液体金属グリスを封入して冷却性能を高めているという。
液体金属グリスと言えば、圧倒的な冷却性能を持つもののコストが高く、Intel CPUでは第3世代Core iシリーズから、コストダウンのために採用が終了した幻のCPUグリスである。

CPU性能の高みを目指すオーバークロッカー達は、わざわざ保証が利かなくなるリスクを負って、ピンを折らないか心臓をバクバクさせながら殻割り行為に及んでまで、液体金属グリスにこだわってきた。
自分もかつてそのアタオカのひとりだった(笑)
もし、液体金属グリスの使用が本当なら、CPU性能を限界の限界まで引き出せることは間違いなく、やってる人の寿命が縮まるような殻割り行為はもはや過去の笑い話となるだろう。

ミニパソコンの内部構造
「液体金属」というワードには反応せずにいられない

さらに、メモリには独自開発のヒートシンクを採用し、M.2 SSDにもデフォルトで放熱シートを当てがっているそうだ。
現時点では、その辺の安物BTOパソコンではまず採用していない、メーカーが見て見ぬふりをしがちな熱対策なだけに、冷却に対するメーカーの本気度がうかがえる。
さらに、内部にたまった熱は、ファン付きの専用設計の冷却ユニットで効率的に外に逃がすエアーフローという、まさに「熱を出すこと」に対する熱の入れようだ←ややこしい

ミニパソコンだけでなく、ノートパソコンなどでもそうだが、コンパクトな筐体のパソコンにとって、冷却に関する話は性能評価のアキレス腱であり、たいていパーツ単位の性能は自慢しても、肝心の冷却の話には全く触れないことが多い。
どんなに高性能なCPU・GPU・メモリ・ストレージを載せても、冷却力が不足していれば高負荷時にサーマルスロットリングを引き起こし、本来の性能は発揮できない
実際、例えばノートパソコンの中でも特に高性能パーツが採用され、ゲームという高負荷な用途がメインとなるゲーミングノートパソコンは、ベンチマークテストを行うと、たいていは冷却性能の問題からパフォーマンスが制限され、パーツ本来のカタログスペックが100%発揮できていないことが多い。

確かに、コンパクトサイズの筐体のパソコンは、電気ガンガン入れてガンガンぶん回して限界性能をたたき出す世界ではなく、少ない電力で最大限効率的に性能を出す、いわゆる「ワットパフォーマンス」が重要な世界なのは重々承知しているし、APUはもともとそういう設計思想だ。
それでも、ハードな用途で使う人間にとって限界性能が高いことは安心感につながるし、ミニパソコンはバッテリー駆動の必要性もないから、それだったらやっぱりパーツの限界性能で動かせる冷却力は担保して欲しいというのが個人的な願いだ。
そういう中にあって、現状考え得るあらゆる熱対策を施して堂々とアピールしているUM790Proは、実際に自分の目で実力を確かめるに値すると思う。

1ヵ月使ってみた感想&気になった点をご紹介! [続編に続く]

ここまでメーカーの能書きと持論とを長々と垂れたが、果たして本当に前評判通りの品なのかどうかは、やはり実際に使ってみないと分からない。
パソコンそのものを作っているMINISFORUMはともかく、CPUメーカーであるAMDは特に、性能面で大本営発表をしがちなメーカーなだけに、前世代の性能とあまりにも乖離 [かいり]してた話が出た場合は、話半分で聞いておくべきということを過去の経験で学んでいる。

UM790Proは先々週の木曜日に無事届いた
今までのパソコンライフでは、NVIDIA GeForce系のGPUシステムを触れる機会が圧倒的に多く、AMD Radeon系の、しかも安定性と性能とが向上した新世代のGPUシステムを触るのが初めてで、オリジナリティーあふれるファームウェアにも悪戦苦闘しながら、何とかセットアップを終えて本格稼働にこぎ着けた。
自費で買っておいてこんなこと言うのもおかしいが、動かしてみてなんかおかしいことが起きれば、それはそれでnoteで取り上げるネタにもなるし面白かった気もするが、結論から言うと動作自体は何の問題もなく、ベンチマークソフトによるストレステストでも変な挙動はなかった

ただ、使い込んでいくうちに、独特の特徴や問題点が見えてきたのも事実。
もちろん、良いところもたくさん見つけたし、個人的には「買って良かった!」と非常に満足している。
以下の記事で細かすぎるほど詳しくレビューしているので、ぜひチェックして欲しい。

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