eSportsとゲームバランス

eSportsと呼ばれる競技群は、今までスポーツと呼ばれてきたそれらと、どのように違うのだろうか。ぼくは、特に違いはないと思う。

eSportsは肉体がぶつかり合うことは今のところないが、既存のスポーツ競技にもそれに該当するものはある。eSportsはその名の通り "electronics" のスポーツであるが、電子機器を実際の競技に使うスポーツもたくさんある。必要な体力が異なりはするが、それぞれのスポーツ競技に特化した肉体の鍛錬を積めば良いことに変わりはない。それよりも、eSportsによって新たに必要となる身体部分として「目」が挙げられると思う。画面を見て戦う競技なので、既存のスポーツのように何か物体を追う力よりも、目に様々な色の光線が当たり続ける中で集中力を途切れさせない力と精神力で目を含む肉体を支える必要がある。どんなスポーツも結局は共通点を多く持っているし、文明の中で生まれた仕組みを共有して競技を行うことに全く変わりはない。

コンピュータゲームは、企画会社、デベロッパー、スポンサーなど、様々な人たちの力が合わさって仕組みが作られる。仕組みとは、既存のスポーツに照らし合わせればルールである。ゲームの中の競技で使う装備は、言わばラケットやボールのような道具だ。既存のスポーツでもルールの見直しや、道具や栄養剤などの使用制限が設けられ、日々それを開発する人たちも改善を試みている。既存のスポーツ用品にも、素材や性能によって優劣がつけられ値段が異なるように、コンピュータゲームの中の装備にも優劣がある。弘法筆を選ばずとは言うが、道具によって人間のパフォーマンスの出方に差が出るのは明らかで、いかにバランスを保つかが議論され続けているはずだが、既存のスポーツは世界中の有識者と議論する場がある一方で、コンピュータゲームはそのソフトの開発に携わった人たちでしか議論することができない。

スプラトゥーンを例に挙げると、アマチュアでもプロフェッショナルでも全く同じ装備の中から選択できるにも関わらず、全ユーザーの中で上位層と下位層で完全に使われる装備の傾向が異なるのだ。それでも、プロやプロを目指して練習している人たちのランダムな組み合わせでの戦いには下位層のプレイヤーも紛れ込むし、下位層に使われやすくかつ上位層ではあまり通用しない装備が持ち込まれる場面も多々ある。プロとアマが全く同じ土俵で同じ条件で戦えるeSportsだが、上位層と下位層で傾向が異なると、公平な状況で競技ができるとは思えないのだ。そのバランスを調整できるのが開発陣だけという問題が、これからさらに発展していくeSportsにとって改善が必要な部分だと思う。

同じゲームソフトでも、プロとアマでそれぞれバランスの調整された仕組みと装備が用意されても良いと思う。プロ向けのものには、細かくバランス調整が加えられた、常にハイレベルな競技になる装備だけが用意され、アマ向けには、プロ仕様よりも若干簡単に扱えるものも用意したり。

これから発展していく新種目のようなものなので、まだまだ不満な点や改善すべき点は多々あるはずだが、個人的に気になる部分を紹介した。どんなスポーツ競技も最初は娯楽から始まり、やがてプレイヤー数がとてつもなく増えたために世界中で公認の競技として扱われるようになったのだと思うが、そこにコンピュータゲームが加わる瞬間、その時代に自分が存在していることには感謝したい。

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