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みんなの日本語2「介護編」第38課

授業の導入や会話練習の参考になれば幸いです。

・辞書形 + のは ・・・です  感情・感想・評価など
  ※辞書形 + のって
辞書形 + のが 好き/きらい/上手/下手 です
・普通形 + のを 忘れました / 知っています
・普通形 + のは ・・・です


1.「のは」を使う場面と会話

【補足】デイサービスやデイケアの入浴時間の1コマです。大きな施設では大きいお風呂と個浴用のサイズが設置されているところもありますが、入浴時はだいたい「気持ちいい」という皆さんのお声があります。どんなに入浴を嫌がっていた人でも、お湯につかっている時は気持ちがいいようです。
 「のは」や「のって」の後ろに「気持ちがいい」がよくつきます。声掛けの最初のフレーズとしてもよく使われます。「一番風呂に入る気持ちがいいですね」というように「気持ちがいい」も色々な場面で使いますが、いつもの状況と異なる場合はより限定の意味も含めて「のは」が使われているのかもしれません。無意識にそのように使い分けていることに現場ではいつも驚かされます。日々、日本語文法の気づきは尽きません。
 介:リハビリの先生がほめてましたよ。足のむくみが引いてきたね、
   リハビリ頑張ってるねって。
 利:うわ~。そりゃ嬉しい。ほめられるのは嬉しいね。

【補足】感情コントロールができず、よく大声で怒鳴る人がいます。私が勤務した先では男性がそんな感じでした。大きな声で当たり散らすというか、さっきまで穏やかに楽しく話していたのに「お前!名前何ていうんだ!」「お茶が遅い!」「この人トイレ行きたいって手をあげてるだろ!
早くしてやれよ!」「俺のところに一番にお茶持ってこい!」もう、色々大変です。
外国人スタッフ(全員ではないです)は結構強気で「うるさいよ!」「そんなこと言わないの」とかはっきり言っている光景を見ましたが、日本人スタッフ苦笑しながらも我慢していることが多いです。日本人スタッフ(全員ではないです)は「お客様」が念頭にあるのと高齢者を言語で敬うので、なかなか強くものを言うことはできません。だからこそ外国人スタッフといいバランスなんだと思いました。外国人スタッフは日本人スタッフにならなくていいんです。理解したり寄り添うことはあっても、同じでなくていいんだ、と改めて思いました
利用者様は「~するのは かんべんしてほしいよ」「大声だすのは やめてほしいよ。あの人、いつもはいい人だけどさ・・・」という声もよくききます。

【実際の会話】
介:体を動かすのは(って)楽しいですね。
利A:あたし体操大好きなのよ。
介:そうですか。体操は午前中に終わっちゃったけど、
  今から風船バレーやりましょうか。みんなで。
利A:やろうやろう。
介:〇〇さんもやりませんか?
利B:おれはいいや。テレビ(を)見るのが好きなんで。

【補足】傾聴の「繰り返し」で「~と言われるのは とても嬉しいですね」「~と言われるのは ちょっとショックですよね~」というように「~と言われるのは」「~と言われるのって」はよく使います。

2.「のが」を使う場面と会話

【補足】畑仕事は大変だった、というお話の時もありますが、「体を動かすのが好き」という流れになったり、田舎や畑の話はよく出ます。昔働いていて今も元気だというアピールなのかもしれませんが・・・。
「そうですか。」のところでは「体動かすのは気持ちいいですよね / 楽しいですよね。」という声掛けもあります。
 そのほか、「着替えるのが早いですね。」「魚を食べるのがお上手ですね。」「絵を描くの(が)上手ですね」「歌、上手ですね」「字、上手ですね。書道の先生みたい」など利用者様の気持ちが上がる声掛けで「のが」を使うこともあります。このあとたいてい利用者様との会話が続きます。
 ほめられるのは誰しも嬉しいことではありますが、あまり言いすぎると子ども扱いしているように受け取られてしまう場合があるので気をつけなければなりませんが・・・。

3.「のを」を使う場面と会話

脱衣所にて

【補足】デイサービスの入浴では、各自ご自宅からタオルや下着など全てご自分で使う物は持参しなければなりません。ところがたまにご家族が入れ忘れてしまうようで、バッグにタオルが入っていないことがあります。替えの下着や濡れ物を入れるバッグ、薬、歯ブラシ、連絡帳など忘れ物はさまざまです。「タオル、忘れちゃった」というように「持ってくるのを」を特に言わない人も多いです。
 デイサービスでのお迎え時、「エアコン、切るのを忘れちゃった」「カギ閉めるのを忘れちゃったかも。あなた(お迎えの介護士)、おねがい。」など毎日なにかしらの「忘れちゃった」は耳にします。「のを」の「を」は誰も言いません。無音で一拍おくひともいますが。。。「~するの(無音一拍) 忘れちゃった」という感じです。

4.介護職が「のを」を使う場面

【補足】「カギ、かけてくるの(を)忘れた」
 有料ホームでご利用者様から退室時にカギをかけるよう要望があると利用者様の目の前でカギをかけて一緒に移動します。ただ、それを忘れてしまって思い出したときに、ピッチで他の介護職に上記のフレーズで依頼したり、自分が利用者様から離れてもいい状況のときにカギをかけに行くこともあります。お部屋にお戻りになったときにもカギをかけてほしいという要望がある場合はおかけします。女性のご利用者様からの要望が多いように思います。夜中に徘徊してしまう男性が居室のドアをあけて中に入ってきてしまうので、それが怖いという訴えがあったケースですが、それ以外にも施錠のご要望の理由はさまざまです。
「部屋、閉めてくるの(を)忘れた」 もよく使われます。

有料ホームでの話
「(車いすのポケットに入っていない!)新しいパットを持ってくるの(を)忘れた。お部屋からとってくるね。」
デイサービスだと持参した手提げ(小さめの)カバンに入っていることがありますのでそれを使います。デイサービスの場合、ご家族が交換用パットを入れ忘れていたら施設側で用意し、後日新しいものを返却してもらっています。
有料ホームだと車椅子の後ろのポケットに交換用パットをいくつか入れておいて、談話室からトイレ介助の際、使います。

デイサービスでの話
「タオル、かえすの(を)忘れた / 間違えちゃった」
入浴介助、更衣介助が終わったらタオルなど全て利用者様のカバンに入れます。介護職によっては間違えて違う人のタオルを入れたり、施設のタオルを入れていたりして、利用者様のご家族からクレームがくることもあります。

「あっ!連絡帳入れるの(を)忘れちゃった」
最後に連絡帳を返しますが、ご利用者様の介護度によっては「入れておきますね」と一言いってから介護職がおカバンに連絡帳をお入れすることもあります。

5.普通形 + 「のは」 を使う場面と会話

【実際の会話】
介:〇〇さん、生まれはどこですか。
利:実はさ、生まれたのは 日本じゃないのよ。
介:そうでしたか~。
利:うん。満州ってわかる?

介⇒介
 ・今日、外出するのは〇〇さんと□□さんね。
   △△さん、〇〇さんをよろしくね。
 ・今日、ケアマネに相談するのは〇〇さんの件ね。
 ・研修に持っていくのは何だっけ。
 ・今日、入浴できないのは〇〇さんね。熱が38℃あるからね。
 ・オムツ、注文するのはどのタイプ?

介⇒利
 ・着るのは 何に / どの服に  する?
     ※「今日、何着ます?」もよく使います

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