みんなの日本語1「介護編」第1課
・わたしは 〇〇です。
・あなたは 〇〇さんですか。
・〇〇じゃ ありません。
・何歳ですか。
はじめに
「みんなの日本語 初級Ⅰ」をお持ちの方でも介護の日本語を教えることができるよう、練習Cを介護の実際の場面に置き換えたようなものだと思っていただけたら使いやすいかと思います。
現場勤務の際にやりとりした実際の会話を盛り込んでいます。
日頃、課題達成型のテキストをメインで使っておりますが、介護現場では初級文型が多く使われており、利用者様にはやさしく伝わりやすい日本語で話し、スタッフ間では手短に指示が伝わるような日本語を使うことがわかりました。
ぜひリアルな現場の会話を練習の際に取り入れてみてください。会話で必要な介護知識も補足しています。
外国人用と日本人講師用に作成した資料からピックアップしているので、ルビ付き漢字や全部ひらがなのスライドもあり見づらいかもしれませんが、ご容赦いただけましたら幸いです。
場面1 利用者様への自己紹介
A:わたしは _____です。よろしく おねがいします。
B:よろしくね。_____さんは どこの人ですか?
A:____。
B:そうですか。____の どこ?
A:____。
B:そうですか。また いろいろ おしえてね。
A:はーい。よろしくおねがいします。
【補足】
本当にこのとおりのやりとりで、ご利用者様のほうが「です・ます」を多く使っていました。外国人スタッフには国名を、日本人には出身地を質問していました。
いつも聞かれるわけではありませんが、初対面やカラオケなどで地域の映像が出ると出身の話になったりします。
人によっては「どこだっけ?」「どこなの?」とくだけた表現も使われます。「____って どこ(にあるの)?」という質問もありました。何度聞いてもお忘れになることを承知の上でお答えしています。
介護施設ではご利用者様との自己紹介場面は何度もあります。同じ利用者様でも毎日「あなた初めての人?」ときかれて自己紹介したり、「顔は覚えているけど名前は?」と聞かれることもあります。
初対面のスタッフに対しては「です・ます」で話されることも多いですが、年配の男性ですと横柄な態度や言動もあります。
【実際のイラスト場面】
私の場合「大阪です」「大阪のどこなの?」「堺です」「堺ってどこ?」「大阪の真ん中よりちょっと南かな」「大阪弁出ないね」というパターンが多かったです。
場面2 服薬介助
【補足】
配膳時も食札とご本人を確認します。異なる食形態は誤嚥の事故につながるので危険です。
薬は一括管理していて、看護師さんが専用ボックスに朝・昼・夜と分けて準備してくれています。ご本人の前で薬に記載の名前を確認します。誤薬防止です。
「~さんですか。(薬を見て)~さん、同じですね。」
服薬の人は1日3回程度あります。塗り薬は特養も有料ホームも各部屋にあることが多いです。利用者様の手の届かないところや触らないであろう場所に保管されています。
場面3 ご家族への挨拶(初対面)
場面4 利用者様の質問にやさしく否定で答える「~じゃありません」
【補足】利用者様は何も話すことがないと寂しい気持ちや不穏になり、よく質問なさいます。親切にしてくれた、という感謝の気持ちの時にも「あなた看護婦さん?」とか体操のアドバイスをしていると「あなたどこの先生?」とか。
時間がタイトなときには「介護士だよ!」「ちがうよ!」と即否定したり、そのままにしている職員をよく見かけますが、ほんの少しでも余裕があれば優しく否定している人が多いです。何度も同じ質問を繰り返してくることが多いので、時間帯に限らずイライラして態度や言動に出てしまう人もいます。
笑いながら否定すると場が明るくなり、利用者様も「あら?そうなの?ごめんなさいね。間違えちゃった」と笑って受け入れてくれます。
【実際のイラスト場面】
「残念~。看護師じゃありません。何に見えます?」「体操の先生?」「ありがとうございます。実は介護士です」というと「そう。なんだっていいわよ」といって去っていきました。何度も同じ質問なので、時間帯によっては「そうだよ」と言ってしまい罪悪感もありましたが、ご本人は忘れていますし、寂しさの解消でもあるのかなと思いました。
【補足】「新しい人?」と問われ、「はい。」といって自己紹介を何度もしているうちに、見慣れてくると安心した表情で接してくれるようになります。「名前も顔も初めてだけど、なんだかこの人は優しいと思う。トイレについていってもらおうかしら」そんな感じの変化があるのか、トイレ誘導や介助などの際、何かと協力してもらえ、スムーズに介助を行えたりします。
【実際のイラスト場面】「そうですよ。先月からここで働いています。」というと「あらそう。がんばってね」「ここではいろんな人がいるから大変よ」など激励の言葉もいただきました。『あなたが一番大変だったりしますが・・・』と思ったり・・・。
場面5 利用者様同士やスタッフから質問。「何歳ですか?」
【補足】年齢のように毎年数字がかわるようなものは正しく言えない人が多く(中核症状の見当識障害)、数字が変わらない「何年生まれ?」なら「大正14年」「昭和5年」と答えられる人もいます。「西暦でいうと何年?」ときいてもしっかりと答えてくれる人が多いです。デイサービスではこのような会話は頻繁にありました。私より年下?年上?とか「見えな~い!」といった会話も多かったです。
【実際のイラスト場面】
「何年生まれですか?」ときくと和暦でかえってくることが多いので、その都度「西暦何年?」「西暦で言って」と質問していました。
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