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2025沖縄キャンプ(後編)

日曜朝10時、雨の糸満。15人くらいの仙台サポーターや地元住民の中に、青い顔をした私がひとり。

「どうして酒って、飲んでいる時は楽しいのに翌日こんなにつらいんだろう」とばかり考えていた。この分野にはもっとイノベーションが必要なのではないか。もし解決できたらノーベル賞ものである。いや、人類史に残る発明になるだろう。

しょうもないことばかり考えていたが、1時間くらい経つと液キャベが効いてきて、ようやくまともに練習を見られるようになってきた。ありがとう、人類の叡智よ。

詳しくは書けないけど、森山監督の練習は面白かった。サッカーは戦術・戦略の前に、「どう勝ちたいか」が先に立つべきである。その哲学が実直に感じられた。

仙台はこの日の午前中で一次キャンプを打ち上げ、午後は束の間のオフ。翌日から延岡で二次キャンプに入る。練習の最後、森山監督からは「羽目を外さないように。補導されないように」という熱い指導が入っていた。やっぱり面白い。

そして、奥山政幸との対面である。
何というか、とにかくたくさん話した。貴重なオフの前だからあまり引き留めたくないという思いもあったし、全然うまく伝わらなかったところもあった。でも、彼は長く話を聞いてくれた。それだけでうれしかった。

「必ずJ1上がって、またやりましょうね」
「僕もだし、荒木も蓮之もいるので。必ず行きます」

私は奥山にさよならを言いにきたつもりだった。極端な言い方をすれば、もう町田のことなんか忘れて、ひたすら仙台と自分の成功のために戦い続けてほしいと思っていた。それが彼のためなのであれば。今思うと、私はちょっとヒステリックになっていたのかもしれない。

でも、彼は町田のことを忘れるつもりなんて全くなかった。もちろん仙台のために、自分と自分の家族のために戦うのは大前提だ。でも、その自分を育ててくれた人たちを忘れようとするなんて、彼自身が許さないのだろう。同い年だけど、だからこそ、心から尊敬している。

「戻ってきたらブーイングで迎えますね(笑)」
100%冗談のつもりで言ったのだが、彼は小首をかしげて、「いや、それはちょっと」と言った。つくづく真面目な男である。するわけないので安心してください。あと今すぐ切腹させてください。

「これからも、よろしくお願いします」
別れ際、思わず口を突いて出た言葉だった。そう、これが本心だ。

「ありがとうございます、また」
奥山は、私が差し出した両手をガッチリ握ってくれた。こちらこそ。また。

どんな選手もスタッフもいつかは去る。でも人生は続くし、一度分かれた道と道がまた重なることもあるかもしれない。その日が来ることを密かに待ちながら、私も前を向いて2025年シーズンを迎えたいと思う。

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