星の重み(薪焼 銀座おのでら)
今年も無事発表された「ミシュランガイド東京 2022」。まずはこんな時代の中、こうして選ばれるお店をつくり、成長させ続けているすべての皆さまに、心から敬意を表します。
「やっぱり緊張しますよ。選んでもらえるお店を維持し続けるのって」
発表の数日前、とある用事で出会った「薪焼 銀座おのでら」の寺田 恵一シェフ。ふとミシュランのことを口にすると、本音らしき言葉がポロッと。
寺田さんは、何かとミシュランに縁のあるシェフです。腕を磨いたのは三つ星常連の「カンテサンス」。その後独立し、28歳で開いた「ティルプス」で一つ星。その後しばらく日本料理店「傳」や「ワカヌイ」で技術の幅を広げたのち、「薪焼 銀座おのでら」で再び一つ星。
「ティルプス」の料理長の座を去り、別分野で再び腕を磨いていた頃には、何かと心配もされたそうです(本人はあまり気にしていなかったようですが)。しかしその経験があったからこそ、今ではフレンチをベースにしながら日本料理的な繊細さもにじみ出る料理が数多く登場します。
彼のお店に通いたくなるもうひとつの理由が「にじみ出るローカル感」。
素朴で嘘のない(ときどき素直すぎてヒヤヒヤする)接客。野菜に対する豊富な知識と丁寧な処理。産地のストーリーに対するソムリエさんの情熱。そして最後に出てくる、あったかい狭山茶。もちろん、寺田シェフの出身地です。
格式高い正統なフレンチがお好きな方にとっては、「薪焼なんて邪道」とか「なれなれしい雰囲気」だとか、厳しい意見もあるのかもしれません。でも僕はそういうものをあえて振り捨てて、ただ「いまこの時をお客さんに楽しんでほしい」という寺田シェフのまっすぐな思いに、とても共感しています。
「薪焼 銀座おのでら」の皆さん、「フランス料理部門」でのミシュラン一つ星獲得、おめでとうございます。
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