天使と悪女/『ウルトラマンA』覚え書き(7)

南夕子のキャラが確立しないまま6話を消費した『ウルトラマンA』だったが、そのせいか視聴率も振るわず、第一話は28パーセントを超えたのに、第六話は17パーセントと、10パーセント以上も減らしてしまった。そこでテコ入れとなったのかどうかは分からないけれど、第七話と第八話は続きものの前後編として、超獣と怪獣と宇宙人と3種類の巨大な敵とウルトラマンAが戦うという、怪獣との格闘めあての子供たちにとっては大盤振舞の回となった。そのせいか視聴率も第七話が18パーセント、第八話が20パーセント近くと復活したのだった。

監督は筧正典だが、脚本は、第七話が市川森一、第八話は上原正三とクレジットされている。共同脚本で名前を回毎に分けたのか、そのあたりの役割分担は分からないが、ウルトラシリーズの初期から参加していた古参のエース2人に、視聴率復活の任務を託した、ということだろうか。

『ウルトラマンA』第7話/怪獣対超獣対宇宙人

脚本=市川森一/監督=筧正典

半径6300キロメートルの巨大な星ゴランが、太陽系に侵入、このままだと地球に衝突するという危機が訪れた(いうまでもなく、東宝特撮映画の傑作『妖精ゴラス』のリブートだ)。TACは、宇宙間弾道弾マリア1号を打ち上げ、迎撃しようとする。打ち上げ基地には、TACの山中一郎隊員(沖田駿一)の婚約者・高階マヤが勤務していた。

山中隊員は、隊員のなかの最年長で、いわば鬼軍曹だ。射撃の名手という設定で、言動も荒っぽい。そんな山中の婚約者を演じるのは関かおり。実は、最初に南夕子役にキャスティングされていた女優さんだ。古い言い方をすればバタくさい西洋風の風貌の星光子に比べると、清楚で純情そうな和風美人。真面目な優等生というより、お兄さん思いの妹といった雰囲気。東宝の若大将シリーズで加山雄三演じる主人公の妹を演じた中真千子(『ウルトラセブン』第二話にも出演)に似ている。ひょっとしたら企画段階では、北斗と南の関係性は兄妹に近いものだったのかな、と感じさせられた。妹キャラだったら兄貴にショッピングの荷物係をさせる一方、仕事に際しては兄貴の言いつけに従うのも当然だろうから。だが星光子の硬質な美貌は、妹キャラにするには大人びすぎていた。このあたりも、南夕子のキャラをなかなか確立できなかった一因かもしれない。星光子自身、後年、ブログでこう書いている。

この方が夕子さんになっていたら、夕子さんはまた違ったキャラクターになっていたのでしょうか。もう少しソフトな感じで素敵だったかも知れない。私、ほんとに固かったから。星司さんとの関係も微妙に違っていたのかも知れませんね。

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