唯一の変身する女性・南夕子はなぜ影が薄いのか/『ウルトラマンA』覚え書き(0)
『ウルトラマンA』(Aはエースと呼びます)について、書いていきたい。
『ウルトラマンA』は、いわゆるウルトラシリーズの5作目で(『ウルトラQ』『ウルトラマン』『ウルトラセブン』『帰ってきたウルトラマン』)、1972年4月から翌73年3月にかけてTBSで放送された。ぼくがちょうど、小学校2年生だった時期にあたる。
ぼくがウルトラシリーズをリアルに見た最初は、前年の『帰ってきたウルトラマン』だった。ちょうど小学校に入学したと同時に放送が開始された。それ以前の『ウルトラマン』(1966~67年)や『ウルトラセブン』(1967~68年)は、放映時のぼくは2~3歳だったから、当然本放送時の記憶はない。ただ、頻繁に再放送をしていたので、朧気ながら『帰ってきたウルトラマン』以前に『ウルトラマン』があったという程度のイメージは持っていた。
『ウルトラマンA』の放映開始直前、小学館の子供雑誌『小学校二年生』が、その第一回を漫画化して掲載した(画は内山まもる)。現在ならネタバレというところだが、当時はおおらかだった。いわゆるメディアミックスというやつか。四国の片田舎の小学校二年生だったぼくにも、何か新しいことが始まるというワクワク感があった。『ウルトラマンA』の売りは、それまでは怪獣を退治する部隊(『ウルトラマン』の科学特捜隊、『ウルトラセブン』のウルトラ警備隊等々)に所属する男性隊員が変身してウルトラマンになっていたのが、今回は、男女隊員のペアが「合体」して変身するという設定だった。そのことをぼくは、放送開始前に『小学校二年生』の漫画や、巻頭グラビアの特集で、事前に知らされた。
男女が「合体」するというと、今ならば当然、そこにセクシュアルな記号を読み取れるはずだが、小学校二年生のぼくに、そんな連想が働くはずもなかった。「合体」して変身するという設定は、同じ72年4月に放映が始まった『超人バロム・1』(さいとうたかを原作、日本テレビ)で、小学校五年生の白鳥健太郎(当時、特撮や少年ドラマシリーズで有名子役だった高野浩幸)とクラスメートの木戸猛(飯塚仁樹)が「合体」して変身し、怪人と戦うのと同じだったので(『超人バロム・1』のほうが4月2日開始で『ウルトラマンA』より5日早かった)、「合体変身」のバリエーションというふうに違和感なく捉えていた。
第一回の放送は、今でも少し覚えている。女性隊員の南夕子(星光子)の可愛らしさや、男性隊員の北斗星司(高峰圭二)が隊員になる前はパン屋で、パンを輸送中に怪獣に襲われた場面などが印象に残った。
ところがその後、恐らく最終回まで見ていたはずなのに、『ウルトラマンA』についての記憶は、ほとんど残らなかった。途中で南夕子が地球を去ってしまう回があり、白い天女のようなコスチュームの彼女の美しさは、なんとなく覚えているが、他はまったくと言っていいほど忘れてしまっていた。その後、『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』は幾度も再放送されたこともあって、多くのストーリー(『ウルトラセブン』のダンとアンヌの別れとか)や怪獣(ピグモン、レッドキング、ゼットン、エレキング、エビラ、キングジョー!)が印象に残ったのと対照的にだ。
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