男と男の約束/『ウルトラマンA』覚え書き(19)

芥川龍之介の短編「河童」(1927年)は冒頭のエピグラフ(題名に添える短い語句)に「どうかKAPPAと発音してください」とある。初めて読んだとき、「河童をKAPPAと発音するのは当然だろ?」と思った記憶がある。近世では河太郎(があたろ)とか、河童(かわわろ、かわっぱ)と様々に呼ばれたらしいが、近代になると、例えば1910年に刊行された『遠野物語』では、「河童」に「カッパ」とルビを振ってあるように「河童(かっぱ)」という呼称でほぼ統一されているようだ。なぜ、わざわざ芥川が、このようなエピグラフを掲げたのか、定説はないようだ。

それはともかく、河童は江戸時代以来、なじみの深い妖怪で、日本の特撮でもたびたび登場している。1967年には日活で映画『大巨獣ガッパ』が公開され、68-69年には水木しげる原作の『河童の三平 妖怪大作戦』がNET(テレビ朝日)で放映された。ウルトラシリーズでは『ウルトラセブン』の「水中からの挑戦」で、河童型の怪獣が登場した。

ところで、『ウルトラセブン』の「水中からの挑戦」には日本河童倶楽部という、全国の河童を探し求める、いい年をした大人たち(梅津栄、上田忠好、田浦正巳、宮川和子)が、河童が住むという湖で怪獣と遭遇する話であるが、『帰ってきたウルトラマン』以後、「子供目線」を重視するようになった事もあり、今回、『ウルトラマンA』の河童話も、子供たちが主役である。

『ウルトラマンA』第19話/河童屋敷の謎

脚本=斎藤正夫/監督=筧正典

母親が屋台のラーメン屋やってるのをからかわれ、「でっかい宙か料理店経営してるんだい」と言いはり、嘘つきやっちゃん、と呼ばれている安夫(野島千照)が今回の主人公。ひとりぼっちで木の上に登っていると、突然雷が鳴り、水を噴き上げながら巨大超獣キングカッパーが登場。すぐにプールつきの豪邸に変身して、地面におさまった。

安夫の通報で、現場に出動したTACの北斗星司(高峰圭二)と山中隊員(沖田駿一)。だが、屋敷が建っているだけで、超獣の気配もない。そこに「また、安夫が……」と姉(渡辺千鶴子)に手を引かれ、ラーメンの屋台を引く安夫の母親(福田トヨ)がやってきて、「おまえ、また嘘ついたんだね!」と叱りつける。「嘘じゃないんだよ、ほんとに超獣が現れたんだよ」と言い張る安夫に北斗が「超獣はどこに?」と問うと、「プールになっちゃったんだよ」「本当だよ、水がすごく噴き出してきて、超獣が水に沈んだように見えたよ。そしたら後はプールに」。野次馬はどっと笑い、母親は「ばかな事ばっかり言って」と安夫をこづき、山中隊員は「北斗、帰るぞ!」と背を向ける。

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