南夕子のお買い物/『ウルトラマンA』覚え書き(5)

第四話まで影の薄いままだった南夕子(星光子)に活躍の場を与えるべし、と指示が下ったわけでもないのだろうけれど、第五話は、彼女の出番がぐんと増えた。

『ウルトラマンA』第5話/大蟻超獣対ウルトラ兄弟!

脚本=上原正三/監督=真船禎

サブタイトルで想像されるとおり、第五話のクライマックスにウルトラマンが登場する。実をいうと、ウルトラシリーズの「超人」たちが兄弟だという設定は、この『ウルトラマンA』から始まる。それまでは、例えば『ウルトラマン』と『ウルトラセブン』との間に血縁関係は示唆されていなかった。『帰ってきたウルトラマン』のウルトラマンは、企画当初は初代ウルトラマンが文字通り帰ってくる設定だった。スポンサー側の事情で、別の存在とされ、デザインにも細かな変更がなされたが、見ていた僕らは、当然初代ウルトラマンが帰ってきたんだと思っていた。だが、『ウルトラマンA』で、正式に初代ウルトラマンと帰ってきたウルトラマンは別人で、兄弟であるという設定がなされ、帰ってきたウルトラマンはいつの間にか「ウルトラマン・ジャック」という番組では一度も使われてない名称が与えられた。子供ごころに、オトナのご都合主義を感じたものである。

そんな話は、この連載のテーマではないので、これ以上は深入りしない。

今回の見どころは、南夕子の私服姿だ。ヒロインの私服姿は『ウルトラセブン』から始まったような気がする。初代『ウルトラマン』の紅一点フジ・アキコ隊員は休日も、外出する際は科学特捜隊の制服であるブルーのジャケット姿だった。それに対して『ウルトラセブン』のアンヌ隊員は、お休みの度にさまざまな私服姿になり、「ノンマルトの使者」の回では水着姿まで披露した。後に『プレイガール』などでお色気満載な役柄を演じる事になる、ひし美ゆり子の雰囲気がスタッフにそんな設定を選ばせたのかもしれない。

第五話で南夕子は、私服姿で二度登場する。一度目は丸首のスプリングセーターに、こげ茶のミニスカート。二度目は白い長袖シャツにベージュのパンタロン。第四話での美川のり子隊員(西恵子)の鮮やかなライトグリーンのミニスカ・ワンピに比べると、かなり落ち着いた、というより地味な雰囲気。残念な事に、女優さんのファッションを変えれば、そこでキャラ造形が深まるというものでもない事を、またも立証する事になってしまった。

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