父と子:北斗の過去/『ウルトラマンA』覚え書き(6)

第五話で、二度も私服姿を披露しながら、キャラを確立できないまま終わってしまった南夕子(星光子)だったが、第六話では、ろくに台詞も与えられず、またしても影の薄い存在に逆戻りしてしまった。

『ウルトラマンA』第6話/変身超獣の謎を追え!

脚本=田口久光/監督=真船禎

TACが開発した、日本初の有人宇宙船が地球に帰還してきた。日本初の宇宙飛行士はなんと初代『ウルトラマン』のムラマツ・キャップじゃなかった小山隊員(小林昭二)。だが大気圏突入直前、宇宙船はヤプール星人に襲われ、小山隊員は超獣ブロッケンに乗っ取られる。なお、管制官として宇宙船を地上に誘導しているのは、TACでいちばん頼もしい美川のり子隊員(西恵子)。彼女が誘導しているというだけで見ていて安心できる信頼感がある。

で、超獣に乗り移られた小山隊員が、次のテスト飛行を任された新型宇宙船を破壊しようとし、TACやウルトラマンAの活躍でぶじ阻止されるというお話。ドラマの中心となるのは、父親が宇宙人に乗っ取られたと最初に気づいてしまった小学生の息子・敦(斎藤信也)。TACに報告しても取り合ってもらえず、同級生に訴えるが相手にされずに孤立する。ただ一人、彼を信じたのは北斗星司だった。9歳で父親が他界した彼は、息子思いの小山隊員の姿に心を打たれ、ヤプール星人のために父親を失いかねない敦少年を応援するのだ。

今回、南夕子の見せ場になりそうだったのは、北斗が幼いとき父親を失ったと告白する場面だ。しんみりと述懐する北斗を、南は無言で見つめる。ここで、南のまだ表に出ていないキャラクターをほのめかすようなリアクションがあってもよさそうなものだが、前回同様、そんなものはなかった。

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