パン屋さん+看護婦さん=菩薩様/『ウルトラマンA』覚え書き(1)

今回より、『ウルトラマンA』を一話ごとに紹介しながら、考えを深めていきたい。

『ウルトラマンA』第1回/輝け!ウルトラ五兄弟

脚本=市川森一/監督=筧正典+満田かずほ(のぎへんに斉)

最初の回だからか、特に際立ったドラマはなく、設定や世界観の紹介に終始した回。

広島県福山市に、口や手先からミサイルを発射する超獣ベロクロンが出現する(なぜ福山市が選ばれたのかは分からない)。地球防衛軍が出動するが、従来の怪獣より進化した超獣相手に全滅。

地元のパン屋さんで、孤児院にパンを運んできた北斗星司(高峰圭二)は、子供たちの救助にあたっていた看護婦(当時の呼称)の南夕子(星光子)と出会い、互いに何かの運命を感じた様子。だが二人とも、超獣に破壊された建物の下敷きになり、絶命する。

そこに現れたのが、М37星雲からやってきたウルトラ五兄弟。その末っ子ウルトラマンAに命を与えられ、復活した北斗と南は、(特に説明もなく)全滅した地球防衛軍にかわって新設されたTAC(Terrible-monster Attacking Crew/超獣攻撃隊)に入隊するため福山市から出発、無事テストに合格する。

超獣ベロクロンが今度は東京に出現し、TACが出動。攻撃機に乗り込んだ北斗星司は、トイレにいっていた先輩隊員・今野(山本正明)を置き去りにしてさっさと出撃するなど、短気なお調子者ぶりを早くも発揮。それを聞いた竜五郎隊長(瑳川哲朗)は、苦笑いするだけ。チームの統制は? 『七人の侍』の勘兵衛だったら「抜け駆けの功名は手柄にならん」と叱り飛ばすところだが、この頃の子供向けドラマは、我儘な腕白坊主に妙に寛大で、宮崎駿監督がどこかのエッセイで批判していたような記憶がある。

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