民子が立った!orクララの正しい立たせ方/『ウルトラマンA』覚え書き(17)
さあ困った。
影が薄いの、キャラがぶれてるの、さんざん書いてきた南夕子(星光子)が今回の主役。しかも、車椅子の少女との心の交流だ。
当初の企画案によれば、『ウルトラマンA』は「男のもつ勇気と、女のもつ平和を願う心の合体によってなる人類の守護的存在」と「定義づけ」られていたという(『懐かしのヒーロー ウルトラマン99の謎』2006年、二見書房)。まさに、元看護婦(当時の呼称)でもある南夕子に相応しいエピソードになるはず、だったのだが……。
『ウルトラマンA』第17話/怪談・ほたるヶ原の鬼女
脚本=上原正三/監督=真船禎
TAC本部と兵器工場を結ぶ「ほたるヶ原」バイパスで、午前2時になると鬼女が現れ、驚いた車が崖下に転落、乗っていた人が白骨化するという事故が連続発生する。極秘に開発中の新型ミサイルV7の配備計画を妨害使用とするヤプールの仕業ではないかと睨んだ竜隊長(瑳川哲朗)は、TAC隊員たちに、事故現場の聞き込み調査を命じる。
調査の途中、南夕子は、事故現場を見下ろす崖の上で、車椅子の傍らで倒れている少女を助ける。少女は民子(野島ちかえ)と名乗り、早く歩けるよう、独りで歩行訓練をしていたのだと明かす(民子は当時としても古めかしいネーミングで、おそらく『野菊の墓』のヒロインが由来)。民子を家まで送っていった南は、父親(林昭夫)から、彼女は5年前の交通事故で母親を失い、そのショックから立ち直れず、車椅子に頼っているのだと聞かされる。
さて、新型ミサイルV7が完成。問題は、工場からTAC基地まで運搬するには、交通事故が多発する「ほたるヶ原」バイパスを通らなければならない事だ。深夜、南夕子は北斗星司(高峰圭二)は、乗用車タックパンサーで、「ほたるヶ原」をパトロールする。午前2時が近づくまで、事故現場付近で車を停めて待つ2人。「ほたるヶ原」はその名のとおり、青白い光りを放つ蛍の群れでいっぱいだ。ふと南は、いつも民子が歩行訓練している崖の上の草原で、白い着物姿の女の後ろ姿を見る。追い掛けてみたが、見付からない。目の錯覚だろうか。そして午前2時。タックパンサーに戻り、車を発進させようとした時、車の前に、鬼の面をかぶった白い着物姿の女が現れる。
鬼女の後を追った南夕子は、いつしか民子の家の前に。そこには、蛍を一匹入れた虫かごを抱え、わらべ歌をうたう浴衣姿の民子が車椅子に座っていた。「どうしたの、こんな夜中に」と問う南に、民子は「ホタルンガに、甘いお水をあげているの」と答える。父親は不在で、独りきりだという民子に、南は「危険だわ。今夜はお姉ちゃんが一緒に寝てあげる」。「うれしい!」初めて子供らしい笑顔を弾けさせる民子。二人は、蒲団を並べて寝る。だが、眠れぬまま南が隣を見やると、民子がいない。追い掛けると、縁側に鬼女の姿が。夕子が銃を構えると、鬼女は姿を消す。部屋に戻ると民子は寝ていた。ずっと寝ていたという民子だが、なぜか、亡き母親の着物を、いつの間にか身につけている。
基地に戻って報告する南。竜隊長は、引き続き、民子を保護するよう命じる。基地を出ようとする南に、美川のり子隊員(西恵子)が「これを付けておくといいわ」と、アクセサリーのようなカプセルを渡す。「強力なガスが詰めてあるの」。美川隊員はなぜか、手づくりの小型新兵器を装身具として常に身につけており(第三話、第五話)、何度も味方の危機を救っているのだけれど、よほど手回しがいい人なのか、単なる兵器マニアの変な人なのか、よく分からない。
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