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作家KAIオリジナル直感小説|story6「RAY と 凛音」


これまでのあらすじ
━━━━━━━━━━
作家KAIオリジナル直感小説
をまとめた無料マガジン





                   6話は RAYと凛音のお話

能力を使うことになった経緯と
なぜふたりが一緒の時にしか
能力が使えないのか…。


本編
━━━


凛音は
店内のキッチンの片隅にある
大きな窓際の
椅子に身を任せるように
深く寄りかかる




RAYが
注いでくれたコーヒーを
丁寧に嗜(たしな)む





ふわりと漂(ただよ)う
ミルクの甘い香りと
小さな渦から
緩やかな湯気が
立ちのぼっては消える




ゆっくりと口元に運び
すこし空気をふくませて
ひと口すする




ミルクコーヒーに
コクのある甘さの
ハチミツが加わって
まろやかな口当たりになる




そこに
疲れがとれるように
身体がゆっくり温まるようにと
RAYの優しさで
ほんのわずかだが
生姜が入れられていた





じっくりと味わっていると
お店を閉め終えて
キッチンに戻ってきたRAYに気づく




RAY「やっと終わったよ〜〜
       あ、わたしもコーヒー飲もう〜。」



凛音「おつかれさま!
       RAYの淹(い)れてくれたコーヒー
       わたし好みの味!
       さすがRAY!
       ありがとう!
       お礼に今度は私が淹(い)れるよ。」




RAY「いいの?嬉しい〜
       なら、お願いするね。ありがとう。」




RAYは
凛音のそばの椅子に座りながら
浮かない表情をみせる




凛音は
RAYの一瞬みせた表情を
見逃さなかった





凛音「…これで良かったのか。
       そう考えてる?」





凛音のことばが耳に入ると
見抜かれたことにドキッとしたが

すこし間をあけた後
静かにうなずいた





気持ちを噛みしめながら
話しはじめる





RAY「実際に目の当たりにするとね、、複雑。
      …命を救えた事はね、
      凄いことだとおもうの。
      大切なひとの命なら
      どんなことをしても救いたいとおもうもの。

     でも
     人ひとりの人生をかえたって事は
     誰かの本来の人生も変えてしまった。
     あの子だって…暫くは辛いはずだから。」
     





コーヒーを注いだカップを
RAYのところまで運び

そっと手に渡して
傍の窓から
吹きこむ風に当たりながら
外を眺める





凛音は
どちらかというと

RAYとは真逆なタイプで
はっきり、淡々とした性格で

迷いや不安をつくる前に
自分や自分の周りを
こまめに整えて
自分だけを信じて言動をする





凛音「 …だから人生って
       わからないのかもね。

       予測できないからこそ
        ひとは " 人生を選ぶ "


       見えてしまう
      " ひとの悲しみ " はつらいけど


     
       悲しみもある人生だから
       ひとは 幸せに触れられたんじゃないかと
       私は思ってる…。」

             




相手が感じている感情や考えに
踏み込まず

さらに
自分の考えとして伝えることで
決して
押しつけることもしない




RAYは
凛音にそっと視線をうつし
まだどこか悲しげな顔をしながらも
言い聞かせるかのように
うなづいてみせた




明日からのsouと凛は
" 幼なじみ " としてではなく

記憶を消されて
" はじめての出会い " からはじまる




凛音は
能力が使えるようになった日のことを
思いだす





RAYが
このカフェを
オープンさせた日の夜だった





真夏の暑い夜


夜だというのに
ジリジリと照りつけられる感覚がする



仕事が終わり
お祝いに駆けつけた頃には
すでに
お店は閉まったていた



close と書かれたボードが
ドアにぶら下げられている

店内の明かりが
まだついていることに気づくと
ゆっくりとドアを押してみる




ドアに付けられた
リンの音が
カランカランと鳴り響くと
RAYがこちらに振り向いた




RAY「あ!凛音〜〜!
      来てくれたの??」




そう言って
嬉しそうに
駆け寄ってくる




凛音「ごめん!仕事で遅れた!
      閉めてる頃だとおもったけど
      ひとことお祝い言いたくて入っちゃった。
      RAY!おめでとう!」




話を聴きながら
凛音の額に滲(にじ)む汗に
気づく




RAY「嬉しいよ。ありがとう凛音。
       お店にも花束をたくさんありがとうだよ。

       もしかして走って来てくれた?
       暑かったでしょ?

       ひんやりするかもだけど
       凛音の好きな かき氷つくるから
       好きな席にすわって 待ってて。」



凛音「本当!?
       めちゃくちゃ暑かったから嬉しい!」




改めて
店内をぐるっと見渡すと
窓際の席で
ピタリと目がとまる




ほかの席とはちがう
不思議な灯りが
纏(まと)っているように感じて
その席に近づいていく




窓からの月灯りが
キラキラと輝くように
光がテーブルに射し込む



凛音「なんだ。
       月の光がこの席だけ当たってたのか。」



そこに
華やかな苺色に
まるで綿菓子のように
ふわっふわのかき氷を
RAYが運んできた



RAY「この席 特等席でしょ♪
      今夜はストロベリームーンらしいよ。
      満月の夜は
      とくに光が綺麗に射し込むの。」




そう言って
RAYは凛音の前にかき氷を置いて
前の席にすわった




その瞬間
強い光が弾けて
さっきまでは
なかったメニューが
突然浮かび上がるかのように
現れた




驚きを隠せない2人は
目をまん丸くして
お互いを見合わせた




凛音は
もう一度メニューに視線をうつして
おそるおそる
触れてみる




メニューに触れると
じわじわと
いろんな情景が浮かびあがる




今夜と同じ
満月の夜


このカフェで



長身で多彩な感覚をもつ男性の力を借りて




色んなオーラを纏(まと)う男の命を救ってほしい



ただし
笑顔がにあう可愛い女の子が
大切な何かを
一時的に失うことにはなる






自分の決断に迷わない凛音


ひとの心をだれより癒せるRAY




あなた達
ふたりの " 強み " があれば
この3人を救えるだろう




凛音「RAY…メニューに触れてみて?」




凛音の深刻な表情に
不安をおぼえながらも

そろ〜っと伸ばした手で
メニューの端っこを
ほんの少しだけ触れてみる




RAYにも
同じ情景が浮かびあがる



目の前で起きている
のみ込めない状況を
ただ静かに
過ぎ去ることを
待つしかできずにいた



ポタッ______。
ガラスの器から
とけた氷が一滴こぼれおちて
テーブルを赤く染めた




凛音「あ!溶けてきたじゃない。」



その声にビクッとして
RAYはメニューから手を離した





添えられたスプーンを
いそいで掴み
溶けだした部分を
たくさんすくって 口にほうばる


さっきまで
喉が渇くほどに
暑さを感じていた口の中も



ヒヤッとした氷が
すぐに舌に伝わって
冷たさが広がり
キンキンと鳴り響く




胸が凍りつくような感覚が
身体中に広がりわたる



半分ほど食べ終えたとき
RAYに一瞬視線をうつして
スプーンを置いた



凛音「私はやってみたい!
      RAYは?」




ただでさえのみ込めない
この状況を
すぐに判断できる凛音に
驚きを隠せないのか
あきらかに動揺するRAY





凛音「癒すことは、
      RAYにしかできないとおもう。」



RAY「そんなこと言われたら…。
       んー。まだよく状況読み込めてないけど
       やってみよう…か。」




やってみないと
わからないことだらけの人生だ




人を傷つけることなら
お断りだけど



そうとなれば
この3人をちゃんと知りたい




それぞれどんなひとなのか
接触してみるか



好奇心旺盛な凛音は
自分の中で 次にとる行動を
思い描いていた



まずは
命を救うことになる男が
どんなひとなのか…。



つづく


                              予告状

ついに4人目の出演者様が
動きだす…
場所はRadiotalk

                               ヒント

story1での
RAYの電話のセリフは
RAY本人の好きな曲の歌詞が
含まれています♪










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