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詩  散文

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#Poetry

立つ

立つ

私の小さな足元は
何を求めているのだろう
大きな渦の中で
その渦にまぎれて個の刃を抜く者は
かっての自分だ

小さな足元の小さな涙は知るべき痛み
外から聞こえるシュプレヒコール

個と全体と和
あるいは


私の小さな足元は大きな縁に繋がって
今の私が立っている

失くしたものはもういらない

きっぱりとした強さは必要だ
私の小さな足元はまだ少し震えているけれど
私はここでこうして立っている

のろのろと

のろのろと

詰め込み過ぎたリュックを下ろした
りんごがひとつ転がった
赤いりんごの痛みが伝わる
のろのろと
のろのろと
爪先にまとわる憂鬱

めくる季節
のろのろと
のろのろと
ページをめくる

あどけなさがぼんやりと
ひとつ
朧月夜のごとく

暗闇の訪れない街で
ろくでなしが闇を探す

街灯に群がる
いく頭の蛾の
落ちては 落ちては
死にゆく姿を確認し
のろのろと生きている