境界を越えて。
自販機の側に設置された空容器の回収ボックスは大体が分別されていない。
入り口こそ空き缶・ビンとペットボトルで分けられているが、その中身はごちゃ混ぜである。
そもそも分別って空き缶とビンが一緒の時点でだいぶざっくりしている。
あのボックスの、何の意味も無い分別が好きだ。
意味のなさが好きだ。
意味が無さすぎて、一周して深い意味があるのではないか。そんな事をふと考える。
どうだ!この回収ボックスの中には自由があるぞ!と主張しているのではないか。
つい境界線を引きたがる我々人間への警告なのでは?
「物事は白黒つく方が少なくないか?世界はだいたいが灰色でできている。それでいいのでは?」
回収ボックスは私に言う。
「認めよう。君の中には確かに自由がある。」
私はノリノリで応える。
「だが、回収ボックスのその自由を作り出したのもまた我々人間だ! 」
私は力強く回収ボックスに主張した。
「ならば見せてみよ!!人間よ!!」
回収ボックスはその2つの入り口の瞳を見開き、ガタガタとその身を奮わせながら私を圧倒する。
「我輩は見ているぞ!!」
「全国の自販機の片隅で!!我輩は見届けてやろう!!」
「人の行く末を!!!!!」
あぁ…!!見ていてくれ回収ボックス…!!
人の可能性を見せてやろう…!!
私はこの決意を胸に秘めて、それまでが嘘のように静まり返った回収ボックスの前で高らかに宣言する。
「この記事に意味なんてないぞ!!!」
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