”中国企業Eswin社が283million(2.83億ドル)資金調達” Made in China 2025との関係は?
Techcrunchによると、北京市に拠点を置くEswin Computing Technology社が2.83億ドル(約302億6,738万円)資金調達したとの事。
半導体の設計とソリューションを提供する中国北京の新興企業であるEswin Computing Technologyは、世界で最も人口の多い中国が半導体チップの設計において米国と英国への依存度を下げる為、新たな資金調達ラウンドで2億8300万ドルを調達した。
4年前に設立された同社発表によると、この新しいラウンド(シリーズB)は、Lenovoの投資部門であるLegend CapitalとIDG Capitalが主導したものだという。リバーヘッド・キャピタル・インベストメント・マネジメント、ライトハウス・キャピタル、国営の海寧市と浙江省がこのラウンドに参加した。
Eswin社は、ディスプレイやビデオ、AIデータ処理、ワイヤレス接続に特化した統合チップやソリューションを開発中。また、高度なパッケージングとテストソリューションも提供。同社は、テレビやスマートフォン用のディスプレイを製造し、HUAWEIを顧客に持つ中国の大手企業であるBOE Technology Groupの前会長を務めていたWang Dongsheng氏が率いる。
中国のニュースCaixinによると、BOEはEswinとビジネス関係を維持しているという。BOEはEswinのチップ関連事業の37.35%を保有している、と同紙は伝えている。
記者発表の中で、Eswinは、研究開発、製造、採用に新たな資本を投入すると述べている。これにより、現在は米国と英国企業に大きく依存している中国の国内チップ生産に拍車をかけることができると考えられている。昨年、米国は安全保障上の懸念と中国との貿易紛争の上にHuaweiをブラックリストに載せた。
私が今回のニュースで注目したいのは、この資金調達が中国の半導体製造体制延いては米中含めた世界経済にどの様なインパクトを与えるかです。
遡る事2015年、中国の李克強首相は、"Made in china 2025"という新たな国家戦略を発表しました。
中国はこれにより、低賃金とサプライチェーンによる安価で低品質な物を生産する所謂「世界の工場」から脱却し、2025年迄に中国企業の生産能力をより技術集約型にしようとしています。
特に中国がこのイニシアチブ ” Made in China 2025 ”で強化しようとしているのは、航空宇宙分野と半導体分野です。(注:これ以外にも8つの強化重点分野があります。)
今日、Appleが自社製品の生産をFoxconnに委託し、更にFoxconnが中国国内で生産している様に、多くの企業は生産を中国で行うか委託しております。これ自体は長年行われてきた事で、”Made in China”は珍しくなく、我々にとっては当たり前の経済事象であります。
一方で、米国にとっては中国との貿易摩擦、更にCOVID-19の影響下で弱体化している米国経済を横目に虎視淡々と政治経済での覇権を握ろうとしている中国への苛立ちから、中国を西側経済から締め出そうとしている動きもあり、対する中国は自国の市場と生産体制、所得水準、更には中国国家というブランドを向上させる為に、開発から生産迄を中国自国内で一環して行える様に強化を進めております。正に2020年の今日、米中双方で、デカップリング(離反)現象が起き始めているのです。
その様な中でのニュース。本件は、techcrunchが淡々と内容を伝えているのみですが、Yahooニュース内のJBpressでも別内容で以下の様な記事が出ております。
日本国内では、サムスンの元役員がヘッドハンティングされた後に辞任したという内容のみが注目されておりますが、一人が重用されるかされないかは、あまり問題ではなく、中国の一つのEarly Stage Ventureにこれだけの資金が投入された事に我々は注目すべきと私は考えております。
では、このEswin Computing Technologyは、どの様な会社なのでしょうか?
社名:Eswin Computing Tchnology
設立:2016年
本社:中華人民共和国 北京市
累計資金調達額:283million
社員数:251名〜500名(推計)
主な製品(Core Products)は以下の通りです。
①12インチ単結晶シリコン研磨ウェーハ
⇨NANDフラッシュメモリやDRAMメモリに使用
②12インチ単結晶シリコンエピタキシャルウェーハ
⇨CPU/GPUなどのロジックIC、MOSFETやIGBT等のトランジスタ、イメージセンサー等に幅広く使用
中国全体のスタートアップ投資がどれ位の規模なのか、未だ掘り下げておらず、他の比較対象が無い事は恐縮ですが、Silicon Valley界隈でも、ここまで大きな資金調達は中々無く、この資金投与に見られる中国市場の期待値の高さが伺えます。
COVID-19前迄は、アメリカと中国はそれぞれが依存し合う、同じエコシステムの中に居ましたが、2020年以降に予想されるデカップリング現象により、テクノロジーの開発と発展はparallelで進む可能性があります。
今回のニュースでは、その一端を垣間見れた”中国の離米の瞬間”でもあると私は考えております。
半導体分野において、日本は世界のシェアを奪われ、設計・開発・生産のどこにも属せない形になっておりますが、米中の離反による空いた隙間にどう潜り込めるかが、日本にとって重要なポイントでもあると考えます。