きらきらじいさんと まほうのつえ
ある町の、すみっこに まほうつかいの おじいさんが すんでいる。
ちいさな まっ白い家だ。 その町の人たちは みんな、このおじいさんを知っていて、「きらきらじいさん」と呼んでいる。
きらきらじいさんは 今日も まほうのけんきゅうで おおいそがしだ。まっ白い 家の中で、なべを ぐつぐつさせていたかと 思うと、 こんどは まくらのような 大きく ぶあつい本を ひらいて うんうん うなっている。
お昼ごはんを食べて、 歯みがきをすませた きらきらじいさん、 こんどは まほうのつえをもって にわに出てきた。 しんけんに つえを見る きらきらじいさん、 「ここをもう少し けずってみよう」といって、 家の中にもどると ナイフをもって またでてくる。 つえをおさえながら ナイフで 少しずつ しんちょうにけずっていく きらきらじいさん。 通りかかった 近じょのおばさんが 声をかけた。 「あら、きらきらじいさん 何をなさってるの?」。 きらきらじいさんは、 目もむけず 手も止めずに、 「つえを もっとよくするのじゃ。 つよいまほうを つかえるようにするのじゃよ」といった。
ナイフをおいて、 つえをたいようにかざす きらきらじいさん。 「よし、ためしにひとふり、 そーれ!」と、つえをふると あたりがきらきらと ダイヤモンドのように ひかった。 ……とそのとき、 ぴゅーん ぴゅーんと空から たくさんのつえがとんできた! 「わわわ!」と きらきらじいさん あわてて もうひとふり。 こんどは きらきらじいさんの 家のやねが きらきら。すると、よっこらしょ といったふうに もちあがる。 「わー!まちがえてしもうた!」と きらきらじいさんがいったとたん、 やねは きらきらじいさんの あたまのうえに どしーんと おりてきてしまった。
ひろいにわで よかった。 いえは やねがなくなったけれど、ほかは なにもこわれていない。 にわに、 ほんの少しちゅうにういたやね。 その下を のぞいてみると きらきらじいさんが つえでやねをささえて かさのようにもっている。 きらきらじいさん、 うでをぷるぷる ふるわせながら、 「しっぱいじゃ! つえを 新しくしなくてはならん!」といっている。
やっとのこと やねの下からでてきた きらきらじいさんは、 空からふってきたつえを あつめはじめた。 そして、 そのうちの いちばんよさそうなつえを 1本を手ににぎり、 ゆっくりと さっきよりもうんと しんちょうにふる。 にわにおちた家のやね、 きらっ とひかってうきあがると そのまま家の上にもどっていく。
きらきらじいさんは オレンジの夕やけ空を見て ふうっと ひといきつくと、 家の中に かえっていった。
次の日、 きらきらじいさんが つえをふらせて 家のやねを かさにしていた話が 町中にひろまったのは いうまでもない。 この町では いつもいつも きらきらじいさんの おかしな話で いっぱいなのだ。
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