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「差別」は日本にもあるよ。

「かほ、久しぶり」

高身長のハーフイケメンにそう呼ばれたのは、
マクドナルドで最も忙しい、日曜日の12:30だった。

「…えーと、…ご注文は?」
「ダブルチーズバーガーセット。
店内混んでるね。3時間後、来ても平気?」
「…え?いや…、え、ごめんなさい、どなたですか?」

「え!覚えてないの!アランだよ!」


その名前を言われた時に、一気に時間が巻き戻り、
頷いて、「4時間後だと、バイト上がってるからありがたい!」と伝えたら笑いながら手を振った。

小学校5年生の時に転校してきたアランは
当時、イジメのマトだった。
理由は本当に単純で「日本語が喋れないハーフ」だったからだ。

私はその頃、渋谷のゴスペルスクールに通っていたり、
日本語の通じない人ばかりの英会話教室(とゆうか、海外の子が日本語を学ぶスクール)に
通わされていた関係で、英語を覚えないといけなかったり、周りにハーフや外国籍が多かったので、
いじめるどころか、ものすごく仲良くしていた。
なんなら、日本語を教える代わりに英語を教えてもらったりしていた。
クラスの幼なじみの男子が、アランの鍵を隠した時に
私が代わりに怒って、個室に三人で呼び出されたこともある。

少なくとも当時のアランはイケメンではなかった。
むしろ、ずっと本を読んでる大人しくて暗い男の子で、
私は素直に話してて面白くて、仲良くしていた。
(アランはびっくりするくらい芸人を知っていた)

中学は地域の関係で別れて、
話しかけられたとき、私は18歳だった。
会うのは6年振りだった。


「ごめん、気付かなかった」
「かほ、ここでバイトしてたんだね。見つけるのに時間がかかった」

アランは本当に

リアルに王子様みたいになっていた。


「いや、うん…。もう三年間バイトしてて…。
今浪人してるけど…。
アランは?今何してるの?」
「横国通ってて。かほがココでバイトしてるって、悠太に聞いて、見にきた」
(悠太は小中からの私の幼なじみ)

周りの目が気になるレベルのイケメンと
マクドナルドで2人で食事している。

私は少し焦りながら、アランに笑いかけると
アランも笑いながら小声で言った。

「さまぁ〜ずの単独、当たったんだよ」

「ええええ?!?!?!」


大きな声を出してから、恥ずかしくなって
小さい声で「え?すご!」と言い直した。

「かほ、絶対さま〜ず好きだと思った。」
「好きだけど…。え、それ言うために今日きたの?」
「今日来たのはかほに会いたかったからなんだけど。
かほ誘うために当てたんだよ」


小学生の頃より更に流暢になった日本語と、
何度見ても端正な顔立ちに
私は驚きながら「変なこと言わないでよ」と
耳に髪をかけた。

アランは声を出して笑って「ごめん、かほのためではないんだけど」と言って、
バニラシェイクを飲んだ。


「当たったのは本当で、かほに会いたかったのも本当だよ。
あの頃は本当にありがとう」

今、ここにアランの話を書けるほど覚えているのは
この後のアランの話を聞いて私は衝撃を受けたからだ。

私が見えていないところで
アランは壮絶な差別をされていた。


私の認識できる範囲なんて、大したことなくて
学校以外の所でも、あらゆるところで
差別されていた話を聞いて、
比喩ではなく、私は悔しくて涙が出たのを覚えている。

どんな差別かは、アランの名誉のために書かない。

「え、ごめん。
私、当時何も知らなくて。」

「いや、良いんだよ。今はこの容姿で得することのが多いよ。イケメンに育って良かった」


それでも、バイトに採用されないことや、
ご両親の国籍について嘲笑されること、
無駄に職質に合う話をされた。

「かほは、いっつも俺と普通に話してくれてたでしょ。
さまぁ〜ずのチケットが余計に当たったのは本当だから、
2人でいかない?」


私は本当に
彼を特別視していなかったのかな。

英語が話せる、という理由で近づいたことや
好奇心で給食の感想を聞いたことは
差別ではなかったのかな。

あの時、幼馴染みと喧嘩になった時、
アランを守らなきゃ、と無意識で思っていたのは
遠回しにアランを見下していたわけじゃ
なかったのかな。


色んな感情が湧き上がって
その頃のアランが受けた仕打ちを思い出して
また泣きそうになってしまった。

そんな私にアランは

「大丈夫。
俺も、かほが女の子だから優しくしてるよ」

と笑いかけた。


アランのお陰で大好きな、さまぁ〜ずのライブに行けた。
アランとは恋愛には発展しなかったけれど
今も友人として仲良くしている。
(超一流企業に勤めている)

今は三児の父で、奥様は海外の方だ。
私は2人と普通に仲良くしている。


仲良くしている、と言うと
「何語で話すの?」と聞いてくる人がいる。

その裏に感じる感情は
差別なのか、興味なのか、好意なのか、狂気なのか。


ちゃんと胸に手を当てて
一緒に考えて行こうね。


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