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大磯町議会議員選挙を漫遊 ー 駆け抜けた5日間の選挙戦

照りつける太陽の下

6月25日。大磯町議会議員選挙、投票日1日前。
照りつける眩しい太陽の下、私は大磯駅前でビラを配っていた。

立候補者の政策ビラではない。「選挙漫遊の道」と題した、私の手製ビラである。

定数14名に対し、立候補者24名

神奈川県大磯町で行われた大磯町議会議員選挙では、定数14名に対し、24名の候補者がその席を争い選挙を戦った。
ここ数年間では最も多い立候補者数で、激戦が予想されていた大磯町議会議員選挙。
私は静岡県在住なのだが、その選挙にお邪魔し、選挙期間中に立候補者全員に会うことを第一目標にして大磯町を巡った。
告示日入りして、20日、21日、22日の3日間で全24人の候補者と会うことができ、第一目標は達成。

「第一目標は達成」といったのは、候補者全員に会うという目標のほかにも、もう2つの目標があったからだ。

第一、第二、第三の目標

第一目標は、全候補者に会うこと
第二目標は、街頭演説などで候補者の方が話している様子を撮影し、それを投票日前にYouTubeに投稿すること
第三目標は、大磯にいる一般の方にも選挙漫遊を味わってもらうべく、候補者スタンプ帳を配ること

第二目標 ーYouTubeへの動画投稿

第二目標の、動画撮影とYouTubeへの投稿だが、これは20日に編集(といっても、撮影した動画は基本そのまま使い、一般の方々が映らないようにするだけの簡単な編集しかできないのだが)を始めて、24日の午前中には投稿をやり終えた。
投稿した動画は、候補者22人分。もう2人の候補者の動画は、私の力不足と知識不足で撮影できなかった。また、候補者1名の方の動画に関しては、タイトルとサムネイルで名前の漢字を間違えるという初歩的なミスを犯して、候補者の方にわざわざ教えていただく始末。大変ご迷惑をおかけしてしまって、本当に申し訳ない。
そんなことで、不手際さと未熟さを露呈しつつも、第二目標も一応達成。

第三目標 -スタンプ帳の配布

残すところは第三目標、候補者スタンプ帳を配ること。

そもそも、候補者スタンプ帳とは何か。
候補者スタンプ帳とは、候補者の方の街頭演説の予定を記載して、一覧できるようにした表。
畠山理仁さんという、20年以上選挙取材を続けているフリーランスライターの方が発案したもので、私は畠山さんのスタンプ帳を真似て、この表を作成した。

スタンプ帳 6月20日分

そのスタンプ帳を、投票日前日の24日(土)に大磯駅前で配ることを予定していた。
スタンプ帳を配り、たくさんの演説場所を訪れた方に賞状を渡すことにすれば、選挙に関心を持ってもらい、またその楽しさを知ってもらえると考えたからだ。

だが、3日間、私自身が選挙漫遊をして、候補者の方々には事前に演説場所を決めずに、その場その場で判断して演説を行う方が多いことがわかった。24日の予定を全候補者分集めて表にするのは、かなり難しいし現実的ではない。

そこで、前日の23日(金)に企画を変更し、「選挙漫遊の道」というビラを作成した。

ルール・概要説明
シール帳
候補者一覧表

これは、候補者の政策ビラをもらったり、候補者の写真などを撮影したりすると、その数に応じてシールが引けるというもの。たくさんのシールを集めて、シール帳を埋めていき、いちばんたくさんシールを集められた方を表彰するという企画だ。

急遽、予定を変更したため、この企画を行うことが果たして大丈夫なのかという不安もあり、自分の住む町の役場の行政課に問い合わせに行った。

公選法に抵触する恐れ

ここで、町役場の行政課にわざわざ問い合わせる理由がわからない方に、これまでの経緯を説明する。

実は私は、たくさんの候補者に会った方にプレゼントとして物品を渡すことが「利益の供与」にならないかという心配が少しあり、告示日の20日と21日に役場にいた選挙管理委員会の方にそのことを伺いに行っていたのだ。
そこで、選管職員の方が「表彰して賞状を渡すこと」が「寄付」にあたるかもしれないと教えてくださったのだ。

(特定の寄附の禁止)

第百九十九条 衆議院議員及び参議院議員の選挙に関しては国と、地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に関しては当該地方公共団体と、請負その他特別の利益を伴う契約の当事者である者は、当該選挙に関し、寄附をしてはならない。

公職選挙法

(特定人に対する寄附の勧誘、要求等の禁止)

第二百条 何人も、選挙に関し、第百九十九条に規定する者に対して寄附を勧誘し又は要求してはならない。

 何人も、選挙に関し、第百九十九条に規定する者から寄附を受けてはならない。

公職選挙法

たぶん、上記の公職選挙法 第199条と第200条の内容から、「賞状を渡す」という行為も寄付になってしまう恐れがあるということだと思う。(まだまだ不勉強で、公職選挙法に精通しているわけではないので、選管職員の方が教えてくださったことを正しく解釈できていないかもしれません。その点、ご承知の上で読んでいただけるとありがたいです。)

だが、選管職員の方曰く
「(法令に抵触しているか)最終的に判断をするのは、警察。だから、こちらから明確に、この行為は公選法に違反するというのはお伝え出来ない。」ということで、どうやら私がやろうとしていることはグレーゾーンにあるらしい。
申し訳なさそうに、そう言った選管職員の方に
「いろいろ変なこと伺ってすみません」と苦笑して、役場を後にした。

選管が判断できないなら…

選挙管理委員会が、判断できないのなら警察に聞くしかない。

「確か、駅前に交番があったな…」

ということで、街頭演説を回りながら駅に立ち寄ったタイミングで大磯駅前交番にお邪魔してみた。

女性職員の方が迎えてくださり、事情を話すと、なにやら大磯警察署の担当の方に電話を繋いでくれるという。
そうして待っていると電話がつながり、担当の方が話を聞いてくれた。

「私が企画していることが公選法に抵触するか選管は判断できず、警察が判断する」
と選管の方に言われた旨伝えると
「警察は立場上、その企画が公選法に抵触するかということは、お答えしない」
という。

警察も判断できないなら…

その方によると、警察は
「現象が起こってからでないと判断できない」。
だから、私の企画が公選法に違反するかと聞かれれば
「選管と同じ答えになってしまう。」
のだと。

…なんという盥回し。

警察の担当職員の方も、選管の方も、同じような困った声で私の反応を窺っている。
でも、私も困っているんです。

そうして私が
「うーん…なるほど…うーん…」
と途方に暮れて受話器を握っていると
「ちょっと、詳しいことを専務に確認するので、少々お待ちいただけますか」
と専務に問い合わせてくれるという。

一旦、電話を切ってしばらく待っていると、数分して電話がかかってきた。女性職員の方が電話に出て相手を確認してから、私に受話器を渡してくれる。

そうすると、「専務」の方が電話に出て、警察の立場を説明してくれた。

「警察はあくまで、取締機関。法解釈にはタッチしていない。(企画をやるということであれば)ご自分で目一杯調べていただいたうえで、判断していただくことになる。これは大磯警察署だけではなく全国の、どの警察でも同じ回答になる」

そう説明した後で、私の企画のことについて聞いてくださり
「地域貢献のために、やるということですよね」
と質問された。
はっきりした回答が得られず、正直やきもきしていた私は、つい
「いや、ただ自分が楽しみたいだけっていうか…(笑)」
と口を滑らせて本音を言ってしまった。
そんな私に失笑しながら、それでも真摯に対応してくださった警察職員の方には感謝している。ありがとうございました。

公選法のグレーゾーン

そんなこんなで長々書いたが、要は「スタンプ帳企画」は公選法の「グレーゾーン」にあたる。
その企画を変更して、賞状に加え、シールも渡すことになると、利益供与の度合いが大きくなって、公選法に抵触する可能性が高まると、私は考えたのだ。

そして、金曜日の午後。
「選挙漫遊の道」の資料を完成させ、役場へ急ぐ。行政課の窓口に行くと、すぐに職員の方が対応してくれた。

私の話を聞くと、「(企画が)どんなふうになるか、イメージをするために」といって、具体的な内容を質問してメモを取ってくれた。
そうして、考え込みながら
「もしかしたら、全候補者に確認が必要かもしれませんね…」
と気になる点を挙げていってくれる。

「…ちょっと、法律を確認しないと、お答えできないので…」
と言って、なんだかすっごく分厚い本を取り出して机に広げた職員さん。
『私もそれ、欲しい…』
と思いながら、職員の方の手元を見ていると
「ちょっと、確認する時間をもらってもよろしいでしょうか。後ほど連絡させていただくということで…。」
と言われ、私の連絡先を伝えて役場を後にした。

その日、役場から連絡がくることはなかった。
(補足をしておくと、役場を訪れたのが16時少し前で、17時の閉庁時間近くだったので、全く職員の方に非はない。いきなり質問をしにきた私に、丁寧に対応してくださっただけで十分ありがたかった。)

おとなしくお縄にかかろう

そうして迎えた24日、投票日前日。

私の企画が公選法に抵触するのかは、明確にはわからないままであったが、せっかく準備をして「選挙漫遊の道」のビラを50枚刷ったので、自己責任で企画を実行に移すことにした。

「これで公選法違反と通報されたら、おとなしくお縄にかかろう」
半ば自棄になりながら、母に
「逮捕されたら、迎えに来て身元引受人になってね」
と言い残し、大磯駅に向かった。

ここまできたら、やるしかない

大磯駅に到着したのは、8時30分ごろ。

「スーーっ…フゥーーーーっ」
ここまできたら、やるしかない。

そうして私は大磯駅前で「選挙漫遊の道」と題したビラを配り始めた。


それから約3時間後

時刻は、12時02分。
「終わったぁーーーーー!」

ひっきりなし、手当たり次第に声をかけまくり49枚のビラを配り終えた。(印刷した50枚のうち、1枚は自分用にとっておいた。)

ホッチキスやハサミで、まだ完成していなかったビラを作成しながら、通りかかる人に話しかけていく。

自宅にて、ハサミで切る作業を再現
自宅にて、ホッチキスで留める作業を再現

「すみません、少しお時間ありますか?」

そうして私の話に足を止めてくれる人は、話しかけた人の5分の1、いや、10分の1もいなかったかもしれない。

ビラを片手に3時間

忙しそうに駅に向かう方、この後の予定があるため時間を割くことができない方。

それでも、男子小学生のグループが、私の話を聞いてくれ
「じゃあ…」
と駅前で配布されていたビラを取りにいってくれたり、

駅前の店に納品にきた農家の方が
「やっぱ、若い人が(政治に)参加しないとね」
と言いながら、ビラを受け取ってくれたり。

私が色んな方に話しかけている様子を見て
「へぇー、おもしろいね」
と声をかけてくださった女性の方

通りかかる人に「選挙漫遊の道」企画の説明をしていたのを聞いて
「なるほど」
とつぶやいていた、維新のビラ配りのスタッフさん

「今、少しお時間ありますか?」
と言う私に
「はい。時間あります。」
と言って立ち止まってくださった学生さん

「大磯出身の者ではないけど」
と言いつつも、ビラを受け取ってくださり、世間話をしてくださった方
(この後、「ここのコーヒーおいしかったですよ」と、私に話しかけてきてくださった。そのコーヒーは、お土産に買って帰った。おいしかった。)

「選挙やってたんだ」
と意外そうに言われ、ビラを受け取ってくださった家族連れの方

中には
「(立候補者の動画を)全部あげてる方?」
と、私のことを知っていてくださった方

「いろんな人のビラを集めてて…」
と言ってリュックサックの中から数枚のビラを取り出して見せてくださった方もいた。(その方は、私が持っていなかったビラも持っていて、私は思わずテンション爆上がりで「うわぁぁ!すごい!そのビラ私持ってないんです!どこで手に入れたんですかぁ⁉」と食い気味に聞いてしまった。驚かせてしまっていたら、申し訳ありませんでした。)

また、私の話に立ち止まってくれた男子学生で
「へぇー。」
と反応してくださり、
『これは、受け取ってもらえる!』
と、ビラを受け取っていただけるか聞いたら
「いらないです(キリッ」
と即答していった、おもしろい学生さんもいた。
『いや、いらないんかい!(笑)』
と心の中で突っ込みを入れて
『若いっていいなぁ。高校生っていいなぁ。』
と思ったりもした。
私は高校を中退しており、「学生生活を満喫した」とは言い難い10代後半を過ごした。だから、ユニフォームに身を包み、友達と一緒に笑い合う彼らのことがとても眩しくて、そんな彼らが話に耳を傾けてくれただけでも、とっても嬉しかった。
(前述の「おもしろい学生さん」の連れの方が、後で私に「すみません、すみません」とわざわざ謝ってくださった。やりとりが面白かったので、全く謝られる必要はないですよ。逆に、話のネタをくださり、感謝したいくらいです。)

とにかく、たくさんの人が私の話を聞いてくださった。

ビラを受け取っておられない方も、私の声掛けに応じてくださって、頭を下げていかれたり、「すいません、忙しいんで」「役に立てなくてごめんなさいね」と返事をしてくださった方が、とてもたくさんいた。
(なんか、こうやって書いてたら、目から汗が出そうになってくる。)

天使が舞い降りた

そんな中で、小学生ぐらいの方で
「暇だから!」
といって、ビラ集めに繰り出していってくれた方がいた。
私が候補者の事務所の場所を教えると
「じゃあ、行ってくるね!」
と言って国道1号線に駆けていって、しばらくすると
「もらってきた!」
と言ってビラを差し出し、シールを集めてくれた。

『天使だ。天使が舞い降りたんだ。』

若干、熱中症気味でボーっとしていた頭で、そんなことを思う。

最終的には、その方は11枚のシールを集めて、「選挙漫遊見習い」になってくれた。

夕方に、その方の保護者様にお会いすることができ、既に帰宅しているという天使、もとい、選挙漫遊見習いの方に、私の代わりに賞状をわたしてもらうことになった。

そうして、第三目標達成。

候補者に会うことを妄想して、興奮

告示日の6月20日から24日まで、5日間の選挙漫遊。
私の合計睡眠時間は11時間。
1日平均2時間少ししか寝ていなかった。

当然疲れたし、最終日まで体力が持つか不安もあった。

でも、それ以上に楽しかった。
寝る前は、翌日(というか、当日?)候補者に会うことを妄想して、興奮して上手く入眠できなかったり、家で動画を編集している間も「はやく大磯に行きたい…‼」とあくせくしていた。


とにかく、立候補者の方々は十人十色。
当たり前だけど、誰一人として同じ人はおらず、それぞれがとっても魅力的。
そんな候補者の方々を思い浮かべると、

「もっと会いたい!」「話を聞きたい!」「できれば、あと1週間だけでも選挙期間を延長してほしい‼」

という思いで、もうニヤケと興奮が止まらない。
(お願いだから、引かないでください。)

政、祭りごと

選挙や政治は、確かにとっつきにくい。
難しい法律や、政策論争。
誰かの命、人権にかかわることが議論される場所でもある。

でも、そんな政治も、人間がやるもの。

汗水たらして自転車を漕ぎ、地域を回る。
初めての演説に、少し右往左往しながらも言葉を紡ぎだしていく。
涙ながらに、自分の主張を伝える。

そして、そんな候補者を陰から支えるスタッフ・支援者の方たち。

ビラを配っていて「私、(そのスタッフが支援している政党が)嫌いなのよね」と通りかかる方に言われても、笑顔を崩さず見送っていくスタッフ。
候補者のために演説場所をセッティングする方。
演説する候補者に「ヨッ!」「頑張れぇ!」と声をかけるサポーターたち。

挙げていけば、切りがない。

そんな、選挙という「まつりごと」をただ傍観する、無関心になるなんて、もったいない!すっごぉく、もったいない‼ マジもったいない‼

でも、お仕事や日々の生活で、いっぱいいっぱいで、政治に目を向ける時間や余裕がない方だって、きっと多くいらっしゃる。

だから、そうした方たちに、私の動画や活動が少しでも役に立っていればいいと願う。

活動が私の自己満足になってしまったり、たくさんご迷惑をかけたりもした。
それでも、私に向き合ってくれた候補者、スタッフの方々には感謝しかない。

そして、(今回もやっぱり)道に迷った私が場所を尋ねると親切に教えてくださった方々、飲み物やお土産を買うときに対応してくださった店員さんたち、取材中にも関わらず、私の活動に興味を持ってくださったり、選挙取材で心掛けていることを教えてくださったりした記者の方たち、SNS上で私の投稿に反応してくださった方々、大磯町民の皆様、そういった全ての方に感謝を伝えたい。

鬱で引きこもっていた私が、こうやって、楽しく大磯町議会議員選挙を駆け抜けられたのは、そういった方々のおかげだ。本当にありがとうございました。

私の活動が少しでも、誰かの、何かの役に立てたなら、これほど嬉しいことはありません。

それでは、またどこかの選挙で。

(追記:私が住む町の役場の職員の方は、閉庁日の土曜日にも関わらず、15時頃に私に留守電を残してくれ、公選法の解釈について説明をしてくださった。後日お礼を言いに伺ったが、席を外しており直接お礼は言えなかった。これを読んでくださる可能性は低いのだが、この場をお借りして感謝を申し上げます。休日にも関わらず、本当にありがとうございました。)








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