ビギナー選挙漫遊師、静岡県知事選挙2024を行く
やばい…全員に会えない…。
あるところで、静岡県知事選挙が告示されましたが…
5月9日告示26日投開票の静岡県知事選
投票権のない自治体の選挙で選挙漫遊をしてきて早1年、やっときた漫遊出来て投票もできる選挙。
なのに、ちょっとピンチ…。
ビギナー選挙漫遊師は高を括ったので…
新規採用職員への訓示で、「毎日、毎日、野菜を売ったり、あるいは牛の世話をしたりとか、あるいはモノを作ったりとかということと違って、基本的に皆様方は頭脳・知性の高い方たちです。」と話し、職業差別発言だと問題視されたことがきっかけとなり辞職した川勝平太前静岡県知事。その辞職に伴って5月9日静岡県知事選挙が告示された。
その知事の職に、我こそはと名乗りを上げた立候補者は6名。
横山正文候補
もり大介候補
鈴木やすとも候補
大村しんいち候補
村上猛候補
はまなかさとみ候補
もり候補、鈴木候補、大村候補については各々SNSでその日の街頭演説の予定を発信していたので、その3人には会える。残りの3人についても、選管に問い合わせれば連絡先と事務所を教えてもらえる。それから街頭演説の予定を聞いて、その場所を訪ねれば全員に会えるはず。
と高を括った私に言いたい。
届け出会場へ行けっ‼
と。
私が選管に電話をしたのは告示日から4日後の13日。
連絡先を知りたいと伝えると、「もりさん、鈴木さん、大村さんの3人の連絡先はあるんですが、それでも大丈夫ですか…」とのこと。他の3人は事務所や連絡先の登録がなかったらしい。
選管の職員の方が把握している3人の候補者の連絡先は調べてわかっていたのだが、せっかく教えてくれるとのことなので連絡先をメモる。うん。調べたとおりだ。やばい。他の3人に連絡できない…。
告示日には8時30分から17時までの間に立候補の届け出に候補者や代理人が必ず来る。面倒くさがらずに、そこへ出向いて接触しておくべきだった。
だが、ここで諦める選挙漫遊師ではない。まだ手はある!…はず。
手を変え品を変え、候補者に会おうと試みます。
まずは、候補者ポスター。
ポスター掲示場に貼られている候補者ポスターを見ると下の方に小さく掲示責任者の名前と住所が書かれていることがある。だが、私の住んでいる場所の周辺には3候補(もり候補、鈴木候補、大村候補)のポスターが貼られた掲示場しかなかった。
掲示場の数は、例えば御殿場市では151、三島市では216と、ひとつの市町だけでも数百か所あるところも。35市町を抱える静岡県全域で、17日間の選挙期間内にすべての掲示場にポスターを貼るのはかなり大変。とくに後ろ盾がない独立候補たちにとっては。
とりあえず、横山候補はXで発信していたので、リプ欄にインタビューをお願いするメッセージを送る。はまなか候補にはWebサイトのお問い合わせフォームに。(だが、忙しい選挙期間中に候補者がひとつひとつに目を通して返信をしてくれるかというと、その保証はない。)
村上候補については、Webサイトや、なにかしらコンタクトが取れそうなものを探すのだが見つからない。SBSテレビのニュースで村上候補について「選挙活動は政見放送のみとしています」というナレーションを聞いたときは天を仰いだ。街頭に出ないとなると、駅などに狙いをつけて演説に出くわすのを待つということもできない。
なんとか居場所を突き止めるため、県やメディアが出している候補者情報をみていく。
まずは、プロフィール欄に「有限会社丸光代表取締約」の有限会社丸光をググってみる。
だが、代表名に村上候補の名前がある丸光はない。
いろいろ探していると、候補者一覧【記者提供・知事報告用】と題されたPDFに住所が書かれているのを発見。そこに候補者の住所が市区町村まで書かれている。その市区町村に場所を絞ってグーグルマップで会社名を検索してみる。…出てこない。
本当にそんな会社があるのか…。
そう思って「会社検索」と検索して出てきた国税庁法人番号公表サイトで「有限会社丸光」と検索すると、なんとヒット。場所もPDFのものと一致する。
即座にその住所の場所をストリートビューで確認。普通の一軒家に見える建物の表札に、ぼやけてだが「村上」と書かれているのが見える。
「キターーーッ!」
でも、場所は静岡県中部で、私が住んでいる東部からはまぁまぁ距離がある。会えるかわからないのに、往復5千円弱かけていくのか…。でも、選挙期間中にどうせ行くんだし…。
ということで住所を割り出した翌日、静岡県静岡市へ。
静岡市へ行き、候補者の多忙さを知り…
その日は鈴木候補も静岡市内で演説をすることになっていたので、もし村上候補に会えなかったら鈴木候補の演説をお土産にして帰ろうと考えていた。
静岡駅から丸光があるという場所へ向かい。着いたところは、やはり普通の一軒家に見える建物。村上という表札を確認してチャイムを押すと、村上候補本人が出てきた。インタビューをしたい旨話すと、55分から政見放送が始まるのでそれまでならOKということだった。そういえば、この日は村上候補の演説がテレビで放映される最初の日だった。
インタビューにて政策として、
リニアは、統一教会と関係があった安倍元総理が発想者。太平洋側の輸送ルート集中を補助するためのリニアだが、非常に輸送効率が低く代行にはならない。また、山側にルートを確保するためトンネルを造る必要があるが、工法に欠陥があるため使えないと結論が出ている。自然を壊し、なおかつ原発をつくろうということは県民の理にはかなわない。
と話していた。
インタビュー動画撮影後、「街頭演説はやらないんですか」と聞くと、
「私自身しゃべりが下手で」
つい先ほどまで、インタビューの質問に対して考えや政策を理由付けながら話していた村上候補。「そうなんですか⁉」と意外に思って返すと
「届出をすると書類をたくさんもらって。本当は演説をやりたいけど、一人でやっているととても」と手を横に振った。
静岡新聞のアンケートやNHKのアンケートの村上候補の回答欄には「回答しなかった」「回答がありません」と書かれており、これを見た人の中には、候補者に対して不誠実だと思う人もいるかもしれない。かく言う私も、情報が全く出ておらず立候補表明会見の短いニュース映像をみただけだったので、無頼系独立候補だから忙しいのかもしれないと思いつつ、この人は一体どういう腹積もりだろうと訝っていた。
だが、「静岡新聞協会(日本新聞協会のことだろうか)や地方紙などいろんなところからアンケートがくる」と村上候補が言うように、回答期限があるアンケートに一人で全て目を通し答えていくのは素人目にもかなり大変なことのように思える。
実際に本人と会ってインタビューしたり話したりしてみると、そうやって印象がガラッと変わる。会いに来てよかったし、タイミングよく会えてよかった。
夜回り先生の演説に舌を巻きつつ…
政見放送が始まる前に村上候補のインタビューを終え、次に向かったのは鈴木やすとも候補の演説場所。時間に間に合うように小走りで会場に向かう。
演説場所である呉服町スクランブルに到着すると、青色のジャンパーや服を着てビラを配るスタッフ、カメラを構えた報道陣、スーツを着た会社員だと思われる人らが演説前の会場を賑わせていた。
演説には、夜回り先生として知られる水谷修さんが応援演説に来ていた。
実は、私が水谷さんの演説を聞くのはこれで4回目。去年9月の伊東市議選の選挙漫遊中に、公明党の候補者3人の演説の撮影に行った日、水谷さんがその3人全員の応援演説に入っていたのだ。非行や薬物を乱用している若者と関わる中で、政治の力が必要だと考えていた時に耳を傾けてくれたのが公明党だった―という話を3回聞いた。「水谷先生のファン…?」と演説場所でスタッフの人に聞かれたことがあったが、まさか偶然静岡に来た日にお目にかかるなんて。
てっきり、公明党だけを支持するのだと思っていたが、無所属で立憲民主党と国民民主党から推薦されており、国会議員を務めたときは民主党所属だった鈴木候補とはどういった繋がりがあるのだろうか。そんなことを思い聞いていると
「僕一人ではどうしようもない。政治の力を借りよう」
「自民党の総裁、民主党の代表、あるいは各党の代表の方々とたくさんお会いしました。」「そんな時耳を傾けてくれたのが公明党でした」
…公明党か!やっぱり公明党なんだ!
と思ったら、続けて
「また、自由民主党、民主党の若手の方々でした」
そして、
「(多くの首長と話す中で)耳を傾けてくれたのが、まさに浜松の鈴木やすともさんでした」
と続く。なるほど結構応用が利く。
どうやら子供の貧困対策などをはじめとした政策に、鈴木候補が浜松市長時代に取り組んでいたということらしい。確かに、鈴木候補も演説で、子供の医療費助成などをはじめとした子育て・教育に関する浜松市長時代の実績をアピールし、そうした取り組みを県全体に広めていくと訴えていた。
余談だが、私の住んでいる町では18歳未満の医療費が無料になっており、数年前まで私は全国どこでも一律無料だと思っていた。成人してからは、出費に対する医療費の増大に目を瞬かせることが多い。( ゚Д゚)ハァ!?
井の中の蛙が大海を知りはじめたかんじ。
漫遊師はあっちへ向かって走り出します。
演説が終わり、選挙カーに乗り込んだ鈴木候補にインタビューの時間があるか聞くと、スケジュールがわかるスタッフの方を呼んでくれる。次の日の朝7時15分~8時まで、島田駅にてマイクを使わず活動をしているから、その時間帯なら対応できるということだ。
インタビューできる!と心を弾ませながら、お礼を言って一段落。と思った直後、気づく。
「あ…ちょっと待った…」
急いでスマホを開いて、自宅の最寄り駅から島田駅までの列車の運行状況を調べる。グーグルマップで行き先と到着時刻を指定すると
午後23時発、午前7時15分着。駅で夜を越せというルート。
午前6時に出て7時45分着。新幹線(高い。ビギナー選挙漫遊師に新幹線は高級すぎる。)を使うルート。
という2つが出てくる。この二つは使えない…。
乗換案内サイトで調べたら鈍行(安い)で8時前に到着するルートがあったのだが、私は向こう見ずに先走る嫌いがあるらしい。そんなものは確認しないで、日程変更をしてもらうべく先ほどの予定を教えてくれた方を探す。いない。近くにいたもう一人のスタッフの方に聞くと、次の演説場所である駒形通りに既に行ってしまったという。
「駒形通りは…」
「あっちの方ですね」
「あっち。ありがとうございます!」
そして私はあっちに向かって走り出す。「あっちってどっちだろう。こっちであってるのかな。」とキョロキョロしながら走る。
途中で流石に地図を確認した方が良いということに気づいたらしく、地図を見て歩き始める。駒形通らしい通りを進んでゆくが、街頭演説の音が聞こえない。
はたして、ここであっているのだろうか…と思い、向かいから自転車を押して歩いて来る女性に声をかける。
「すいません、今通ってきたところで、演説とかやっているの見たりしましたか」
「あぁ、あっちで鈴木さんがやってましたよ」
ビーンゴ!
「ありがとうございます!」
選挙漫遊をしていると、道行く人っていい人がいっぱいいるなぁと感じる。
急いで駆けて行くと、演説の声がきこえてくる。先ほどのスタッフの方を見つけて事情を話すと、日程が書かれたスケジュール表を持ってきて、電話をかけて候補者の日程を確認してくださる。そして、その日の15時過ぎに予定されている演説の後に時間を取ってもらうことに。
立ち寄ったおでん屋で、誘惑に駆られますが…
15時までまだ3時間ほど時間があったので、私は県庁に向かった。
目的はポスター掲示場。県庁前や県庁周辺なら、県庁で届け出を済ませた候補者がついでで近くの掲示場にポスターを貼っていて、全員のポスターがそろっているかもしれない。そしてポスターには候補者事務所の住所が書いてあるかもしれない。
そんなことを考えて、道すがらミカンスムージーのようなサッパリした静岡名物を探しながら県庁に向かった。
残念ながらミカンスムージーは見つけられないまま、県庁に到着し周辺をウロウロして掲示場を探す。だが、これまた見つからない。歩いていると、県庁裏に位置する駿府城公園に通りかかったので、漫遊がてら公園に立ち寄ることにした。
公園内には「静岡おでん」と書かれたのれんが掛けてある店があり、静岡土産や飲み物、おでんが売られていた。
「この暑い日におでんはないな。」と思いつつ店内を見る。
冷蔵ショーケースをのぞくと、やはりここにもミカンスムージーはない。その代わりに、静岡のクラフトビールや静岡麦酒が並んでいる。
思わず唾を飲む。その日の静岡市の最高気温は24.5度。太陽が眩しく差す中歩いてきて、のどはカラカラ。いや、駄目だ駄目だ。この後、鈴木さんにインタビューするのに酒気を帯びた状態で行くのはさすがに常識的に考えてあり得ない。それに、私が会えた候補はまだ6人中2人。祝杯を挙げるにはまだ早い。
何を考えているんだと、邪念を振り払いおでんに目を移す。
うん。熱そうだ。
聞くと、そのお店では年中おでんを販売していて、夏でもかき氷とセットで食べに来る人がいるらしい。
静岡おでんは、静岡の郷土料理。大根、卵以外に黒はんぺんなどの練り物が具材として使われ、青のりやだし粉をかけて食べる。
見ているうちに食べてみようという気になって、大根と黒はんぺん、しのだ巻きを注文。
外にあるベンチにかけて食べる。熱い。けどおいしい。大根はだしがきいているし、初めて食べるしのだ巻きはモチモチと弾力があって、めっちゃうまい。そして黒はんぺん。学校の給食に出てくることがあった黒はんぺん。冷めていたからなのか、あまりおいしくないイメージがあったのだが、今食べてみると普通においしい。
そうしてお昼ごはんを済ませ、駿府城公園を散策したあと、鈴木候補の街頭演説場所に向かうため静岡駅に戻った。
インタビューを成し遂げます。
駅に向かう途中で、横山候補のポスターを含む5枚のポスターが貼られた掲示場を発見。全体写真を撮り、それから横山候補のポスターを見ると、掲示責任者である横山候補の事務所と思われる場所の住所が記載されている。これで事務所に行ける!
駅から15時~の演説場所に着くと既にスタッフの方々が場所取りをしていたり、鈴木候補がテレビのインタビューに答えたりしていた。
15時まで近くの神社のベンチに腰掛けウトウトした後、演説、インタビューの撮影をした。
政策については
オール静岡でもう一度日本一の静岡を目指すことを掲げ、県民がどこに住んでいても幸福感を感じ豊かに安心して暮らせるように、半導体産業、バイオ産業、スタートアップ企業などの誘致、子育て世代のための経済支援、産後ケア支援づくりなど4期16年浜松市長として行ってきた施策を県全体に広げていきたいと訴えた。
演説では市長時代の実績をアピールし、それを拡大して県全体に普及させていきたいと訴えていた。市長や国会議員として選挙を経験してきたからか、どの言葉に力を入れて話すかなど演説慣れしているような印象を受けた。
候補者のタフさを目撃し…
村上候補と鈴木候補のインタビューをした2日後、17日は横山候補の事務所があるらしい菊川市へ行った。
到着した場所には「横山自転車」という看板。ガラス戸の中央に、「横山正文選挙事務所」という札が貼ってあり、扉を開いて中に入る。自転車が所狭しと並べられているかと思ったが、中はガランとしていて人の気配はない。
少し奥に進むと、別の家屋に繋がっているらしい扉がある。扉に向かって声をかけてみるが応答がない。扉をコンコンと叩いてみたがシーンとしたままで、どうやら留守にしているらしい。
諦めて帰ろうとしたその時、「はい」と声がして黒いジャージ姿の横山候補が出てきた。
「よかった!いた!」
と思い質問用紙を手にインタビューしたい旨話すと、準備するので少し待ってほしいとのこと。
店内で待っていると、数分して横山候補が顔を出し「最後の質問、えら〜い難しいね」「ちょっと考えるからね」と言い中に入っていく。
最後の質問「私たち人間にとって幸せとは何だと思うか」。ぱっと答える人もいるが、答えるのが難しいと頭を悩ませる候補者もいる。
数分後、横山候補がスーツ姿になって出てきて
「いや〜、(幸せとはの質問について)考えていたら暗くなってきちゃって」「でも端的に答えますね」
という。「暗くなった」と言った候補者は今までいなかったので、その理由が気になったのだが、とりあえずインタビューを開始する。
政策について
リニアに関し、県が示した課題についてJRは、議論すべき論点は残されておらず、予見可能な不測の事態が発生した時全て責任を持つとしていることから、知事就任当日に工事の許可を出すと訴える。また、県を日本のシリコンバレーにする「静岡県シリコンバレー計画」、大規模商業施設の誘致をする「静岡市浜松市ボールパークビレッジ計画」と合わせて静岡県の経済を引き上げていくとする。
インタビュー動画の撮影が終わると、「幸せとは何だと思うか」の質問について考えて暗くなった理由を教えてくれた。
撮影時には「私にとっては社会貢献ができること」と答えていた横山候補だが、自身の父親は寝込んでおり、「自分は体が動くから社会貢献できるけど、父親や認知症、植物状態の人にとっては幸せとは何だろう」と考えて暗くなっていたそう。
「でも、人生それぞれ違うから」「自己実現、これをやるんだということを見つけていく。寝込んでいても、新聞読んだり本読んだり」
と話し最後には
「話しているうちに明るくなってきた」
と見事にリフレーミングをしていた。
横山候補は毎朝4時に起きてジョギングを約2時間、筋トレもするという。私が来たときは、ちょうどジョギングから帰ってきて休んでいたところだったらしい。
これから静岡市で5時間ぶっ通しで演説をすると言う横山候補。
「「今日ユーチューバーの方から幸せとは何かという質問をされました。皆さんはどう思いますか」って話そうと思います。」
昨日の浜松での演説では、野次が酷かったと話していたが、前を向いて明るく臨んでいる様子には驚嘆する。候補者の人たちには選挙の妖精か神様か、そういった類の何かが宿っているのではないかと思うくらい、強い思いと行動力があって毎回息を呑む。
横山候補のインタビューを終えて、夕方には、その日東部を遊説していた大村候補の演説場所に向かった。
支える人々の力強さを目に焼き付けながら…
演説場所であるJAに着くと、職員らがズラッと並び、それに一般の聴衆を加えると目算で60〜70人以上が演説を聞いていた。
演説後にインタビューができるか聞くと時間がとれるかわからないらしく、スタッフの方が「スケジュールがわからないから、事務所に連絡して聞けばわかると思う」と対応してくださった。
早速事務所に連絡して時間があるか聞くと、遊説に毎日回っていて予定をつくるのは難しい、事務所にいることもないとのことだった。
肩を落としていたが、そういえば大村候補の写真撮影とビラをもらうことを忘れていたなと気づき、もう一か所の演説場所に向かうことにする。
その演説場所もJAの支店。演説の30分前から、職員らしき人も含む20人ほどが駐車場におり、演説開始時には先程よりも多い100人以上の聴衆が演説を聞きにきていた。
演説前に大村候補が挨拶、握手に回っているところで写真をお願いすると笑顔のガッツポーズの1枚を無事撮影。大村さんの後についていたスタッフの方からビラをもらい任務完了。
演説では、川勝知事の突然の辞任により対立が残る県政を立て直したいと訴える。リニアに関してJRと信頼関係を築いた上で水環境などをはじめとした問題に対処していきたいとする。また、地域の産業を結集して日本・世界中から多くの人に来てもらうためにも防災の必要があり、36年間の国との人脈を使い静岡県の防災を守っていきたいとする。
大村候補の両翼には市議を始め県議や国会議員がずらっと並び、演説の際に拍手や合いの手をいれていく。
遊説に出発する際は、細野豪志衆議院議員が同行していたのだが、車が混んで車道に出られないときに「ここいつも混んでいるんですよね」とはじめ聴衆の笑いを誘ってから道路政策に話を展開していき、大村候補に県知事になった時の支援を呼びかける。さすが国会議員の話術というかんじ。
大村候補は、議員や組織力で「押し上げられている」という印象を受けた。
一人一人が考えて投票する大切さに思いを馳せます。
翌日、自宅から自転車で行ける距離のショッピングモールで予定されている森候補の街頭演説へ。
演説場所には、演説を聞きに人が集まっている感じはしなかったが、私が撮影していた場所の後ろの方で演説を聞いている方が数人いた。
演説後に聴衆と握手をし、話に応える森候補。テレビカメラも来ており、そのインタビューを受けた後、私のインタビューにも応じてくれた。
政策として、コロナ禍を経てリモート化が進み、また大井川の水量減少問題もある中、大量の電力を使い三大都市圏を移動するリニア建設を止めるべきだとする。原発については、南海トラフ地震を考えると、廃炉にし再生可能エネルギーに移行すべきとする。福祉増進が地方自治の本旨だとし、医療費、保険料の削減、給食費無償化などの子育て支援、介護保険の負担軽減などを掲げる。若者の流出に対しては賃金の改正、雇用確保のためには企業誘致ではなく中小企業への補助の必要性を訴えた。
インタビュー後に
「投票率を上げようってことでやっているんですか」と聞かれ「はい」と答えると、「組織票ではなくて一人ひとりが考えて投票すれば政治も変わると思う」と思いを話してくれた。
目論見が画餅に帰すこともありましたが…
そして残すは、あと一人。はまなか候補。
選管には住所や連絡先が登録されていない、メールは送ったが忙しい選挙期間中に返信があるかはわからない。ポスターにも、事務所の場所などについての情報なし。
はまなか候補は、選挙ドットコムのブログに「私の家(浜松市中央区)の近くに「元町カフェ」というとても居心地がいいカフェがあります。」と書いている。
元町カフェと調べると、確かに中央区に元町珈琲という店がある。さらに近くにははまなか候補が通っていたという中学校もある。
この近くで、虱潰しに住宅街を回っていき、はまなか候補の事務所の看板か表札をみつけるしか…。
だが、流石にそれはドブ板選挙ならぬドブ板漫遊すぎる。
そこで私は、個人名から住所を割り出せるという魔法の本、そう3年ほど前に個人情報保護の観点から廃刊になったハローページを使うことにした。
浜松市中央区の榎土さん(はまなか候補の今の姓。選挙では旧姓であるはまなかを使っていた。)、濱中さんを探し、そこを虱潰しに回っていく―
という計画。
私の家には企業版のハローページしかなかったので、図書館にあるか調べると静岡県立中央図書館に在庫があるとわかった。そこで、まず静岡市にある県立図書館に行き住所をリストアップ、その後浜松市で歩いて探すことにした。
早朝、目をこすりながら電車に乗り、開館時間までに図書館に到着。2018年版と2012年版のタウンページから住所をメモし、浜松市内へ移動。メモをした榎土さん宅を何件か訪ね、近所にいる方にも、はまなか候補のことを知っているか聞いて回った結果……
見つからなかった。
……。
見つからなかったんですよ。これが。
てか、すごく疲れた。バスの便があまりなく移動はすべて徒歩だし、候補の「榎田さん宅」は10件もないから、すぐ終わるだろうと思って甘く見ていた。歩くのきつい。ていうか、なんで地図見ているのに違う場所にたどり着くのだろう。勘弁してほしい。帰りにはしっかり腰まで痛くなっていたし。
今更だが、電話番号も控えたのだから、実際に探す前に電話をかけたほうが良かったのではないか。
ま、後悔先に立たず。クヨクヨしたって足腰の痛みが消えるわけでもない。
とにかく疲れ果てて、帰りの電車に乗り座席に沈む。
にしても随分遠くまで来た。浜松って、私の住む東部からだと距離にして約140キロ。なんなら隣の隣の東京都のほうが近いくらい、静岡は横に長い。
浜松から帰ってきてから、はまなか候補のブログを見たら日記が更新されていた。
読んでみると、選挙ビラに証紙を貼ってもらうため伊豆にある福祉施設を訪れたとのこと。
もしかしたら、ここに問い合わせれば、はまなか候補の連絡先を教えてもらえるのではないか…。
そう思って翌日問い合わせてみると、確認を取っていただいた後、はまなか候補のスタッフの方につないでもらい、インタビューの予定を取り付けることができた。
やったー!でも、こんなことなら私が浜松を歩き回った時間は……いや、もうそんなことは気にするまい。気にしたら負けだ。選挙漫遊にコスパとタイパなんか求めてはならない。
ビギナー立候補者の苦悩を知ることもでき…
待ち合わせは浜松市だったが、当日袴田巌さん(58年前の殺人事件で死刑判決を出されたが、無罪を訴え再審が行われている。)の裁判の傍聴に行くということで、静岡市の地方裁判所に変更。
裁判所前に行くと、はまなかさんが支持者の方だと思われる女性と話していた。なにやら政策について、熱く思いを語っているよう。
話が終わってから声をかけると、インタビュー前に選挙活動について話してくれた。
はまなかさん曰く、選挙期間中は予定も流動的で寝ている時間がないくらいだという。ポスターの数も掲示場の総数7550に対してはまなか候補が刷った数は3000。その3000枚もまだ貼りきれていないのでこれから貼りに行くという。支持してくれる人から「ポスター貼ってないですよ」と言われるが、後援会もなく人がいない、一人でポスターを貼りきるのはとても無理。「供託金以外にこんなにお金がかかるなんて思わなかった」と選挙の経験がない一般人が選挙活動をする過酷さを教えてくれた。
今回の知事選は川勝前知事の突然の辞職によって告示されたので選挙期間まで準備をする時間の少なさは指摘されていたと思うが、元々の支援者や、地盤がない独立候補にとっては、その準備時間の短さの影響はより大きいのだろう。
それでも、ポスター貼りに協力している人らと繋がりながら活動をし、国や党に取り込まれず自由に発言できる立場でないと意味がないと話していた。
政策として、年齢や国籍を問わず誰でも政治へ訴えができる請願権の普及・拡充、一人ひとりの要望に応えられる県政にしていきたいと訴える。権利保護をし、より良い暮らしができるような環境をつくり、自分たちが法整備をする必要性があるとする。冤罪被害者に対して関心がない県政や市政を担っていた候補者が再び県政に携れば、生活者に対しての権利の侵害は当たり前のように起こってしまうと説く。
「自分自身が今この場にいるってこと自体、本当に幸せだったらいない」「(逮捕され、裁判沙汰になり)本当に終わってしまったなと思ったんですけど、だから私は新聞報道された『はまなかさとみ』で出ています」
文書偽造の疑いで逮捕され、「和解契約書偽造 民事訴訟で提出 浜松、容疑の女逮捕」という見出しで新聞に実名報道された、はまなか候補がインタビューで言ったその言葉には独特の重みと強い意志が感じられた。
全員取材完了。
よかった。よかったけど、疲れた。
投票日には食べて歌って開票速報を見ることができたのです。
選挙漫遊を終えて迎えた投票日。
国会議事堂Tシャツを着て投票所に行き投票をして、投票済み証明書をもらって、センキョ割を使うためカラオケ店に行って、ビビンバを食べて、オオイシマサヨシさんの「君じゃなきゃダメみたい」を「これって選挙の候補者について書かれた歌なのでは…」と思いながら歌って、開票速報を見た。
紙面やポスター、テレビの報道だけではわからない候補者の持つエネルギーや人柄。実際に会ってそれらを知ると、投票するときの選択肢が広がる。全員に会ったからと言って全く迷わず一票をいれたかというと、そんなこともなく結構悩んだのだけれど、全員に会って自分の目で確かめて入れた票は、会わずに入れた票よりも納得感があった。
静岡県知事選挙2024 結果
【当選】鈴木やすとも候補 728,500票
大村しんいち候補 651,013票
もり大介候補 107,979票
はまなかさとみ候補 24,315票
村上猛候補 15,106票
横山正文候補 9,263票
投票率 52.47%
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